リーグを連覇も、日本一奪回に向けて戦力を補強。そんな巨人に桑田真澄新コーチが誕生した。村田真一氏はジャイアンツ投手陣の変化に期待する。 取材・構成=坂本 匠 写真=BBM 
15年ぶりに巨人に復帰した桑田真澄新コーチ。会見でも自らの考えを力説した[読売巨人軍提供]
“最先端”と古き良き“先発完投”と――
桑田真澄のジャイアンツコーチ就任の一報には、驚きよりも先に「良かった!」という感情が湧いてきました。真澄とはともに長くプレーしてきましたが、あらためて彼のキャリアを振り返ってみると実績も力も申し分なし。今回、13年ぶりのユニフォーム(※ジャイアンツには15年ぶりの復帰)ということですが、この間、早大大学院、東大大学院で学び、メジャー(現役最後)からアマチュアの指導まで広く野球を見てきています。グラウンドに立って、プロを本格指導するのは今回が初めてとはいえ、自らも現役時代に173勝(141敗14セーブ)という成績を残し、そしてその後にさまざまに勉強したことを現場でどう生かすのか。正直、楽しみでなりません。
真澄は現役時代、とにかく走り込んでいました。われわれの時代は試合数が少ないのですが(※80年代後半から90年代初めは130試合制)、2年目の87年にリーグトップの207回2/3を投げています。翌年は200回を切ったとはいえ、198回1/3。そして89年、21歳の年には249回です。今の日本球界にこれだけタフに投げられる先発投手がいますか? ジャイアンツで唯一、完投能力のある
菅野智之でも2018年に1度、200回(10完投)を超えただけ。そのタフさの源はどこにあったのか。やはり、ベースにあるのはランニングではないでしょうか。
真澄は科学的なトレーニングを取り入れるべきだとして、「たくさん走って、たくさん投げる時代じゃない」と話していますが、その真意はただやみくもに時間だけをかけて走るのではなくて、目的を持った効果的なランニングをしよう、ということなのだと思います。このキャンプで真澄が選手たちに課すランニングは、逆にキツイかもしれません。量と質の伴ったメニューでしょうから、非情に興味深いですし、考え方が行動を変えることになると思います。
もちろん、技術面でも引き出しが多いし、守備も打撃も一流です。智之はもちろん、
戸郷翔征にとっては、とても良い勉強になるでしょう。戸郷は昨年高卒2年目で9勝を挙げました。立派です。しかし、真澄は同じ歳に前述のとおりに200回を投げて、15勝(防御率2.17)しています。若手投手たちがタフに育つことを期待したいと思います。
さて、巨人の捕手陣についても触れさせてください。昨年は
小林誠司が骨折で
大城卓三がメーンにマスクをかぶり、ベストナインも受賞しました。智之とも多く組み、たくさん学んだでしょう。今年も頭一歩、抜け出た位置にいます。ただ、誠司も黙っていないし、入団から指導してきた身としては、「誠司、これで終わり違うやろ?」と。ここに
炭谷銀仁朗も、
岸田行倫もいます。レベルの高い捕手がこれだけそろうのは12球団でも巨人だけ。ハイレベルな定位置争いにも注目してください。
私の二重丸 注目プレーヤー
山瀬慎之助[捕手/巨人] 近未来の候補 今すぐに一軍レベルでどうこうというわけではありません。でも、昨年、彼を見て驚きました。何て肩が強いのか、と。このオフ、自主トレをともにした
ソフトバンクの
甲斐拓也選手も絶賛したそうですが、その甲斐選手と双璧をなす小林誠司ともこの1点においては遜色ありません。打撃面も捕手としての総合力もまだまだですが、昨年は二軍でも先発機会を与えられたように、
阿部慎之助二軍監督も楽しみにしているのでしょう。下積みをし、3年後、一軍の捕手陣を脅かす存在となる可能性も十分にあります。
PROFILE むらた・しんいち◎1963年12月5日生まれ。兵庫県出身。右投右打。捕手。滝川高から1982年ドラフト5位で巨人入団。9年目の90年に正捕手の座をつかみ、ベストナインを受賞。以降、90年代は正捕手としてチームを下支えした。2001年限りで現役を引退。02~03年、06~18年と巨人コーチを務めた。