新型コロナ禍、外国人選手の来日遅れもあって、各球団とも開幕前の青写真どおりの戦いはできていないはずだ。その中で起こった頭を悩ます大誤算と、逆に、うれしい誤算、さらに5月決戦のキーマンを球団別に挙げてみた。下位チームに誤算が多いのは確かだが、順調なチームにも誤算がないわけではない。 ※成績は4月29日現在 阪神のうれしい誤算 まさかの貯金「4」のガンケル
【セ1位 19勝9敗0分 打率.258 防御率2.77】 終わりよければすべてよし。
日曜日の試合に勝って、火曜日からすっきりと6連戦をスタートする。シーズンを戦う上で、ある種理想的な形だ。
阪神は3、4月の日曜日5試合すべてに勝利したことが、開幕ダッシュの一因になっている。
その日曜日に先発のマウンドに上がっているのが来日2年目のガンケルだ。昨季は先発失格で中継ぎに回った。今季は実績のある
チェン・ウェインと韓国リーグ最多勝の
アルカンタラという先発を争うライバルがいた。その中で、球速を上げオープン戦で結果を残し、開幕先発ローテ3番手に入った。150キロ近い力のあるツーシームとカットボールを両サイドに投げ分け、スライダー、チェンジアップで球速に変化をつけながら、5試合に登板し5イニング以上を投げ、負けなしの4勝。防御率1.78と抜群の安定感を見せる。当初はチェン、アルカンタラの3番手と見られていただけに、まさしくうれしい誤算だ。
5月決戦のKEY PLAYER 近本光司 
外野手
開幕から打率1割台と不振に陥った。しかし4月後半打線に勢いがなくなってきた一方で近本の調子が上がってきた。2年連続の盗塁王が一番打者としてヒット&盗塁を増産してチームをけん引すれば、打線も勢いを取り戻すはずだ。
巨人のうれしい誤算 先発6番手男が5戦5勝

ハーラートップ5勝の高橋
【セ2位 16勝9敗4分 打率.261 防御率3.25】 開幕前は先発6番手を争う候補の1人にすぎず、直前まで合格点に届かずに二軍戦で“追試”を受けたことがウソのようだ。
高橋優貴はシーズンの幕が開けると、5戦5勝(QS率100%)で、ハーラートップ。与四球16の荒れ模様はもはや左腕の武器の1つで、
原辰徳監督も渋い表情ながら「彼の特徴でもありますしね。粘り強く慎重にというものが、昨年から加わったこと」とその力を認めている。実際、防御率を見ると1.80の安定感(リーグ4位)だ。5勝目を挙げた4月28日の
ヤクルト戦(神宮)でも、5つの四球を与えたが、7回3失点でまとめ、先発の責任を果たしている。
なお、5勝は1年目に自身が記録したキャリアタイ記録。球団の左腕では開幕5戦全勝は07年の
高橋尚成以来で、6戦まで伸ばせば
沢村栄治(36年秋)、
ゴンザレス(09年)の球団記録に並ぶ。昨季は故障で出遅れた19年のドラ1が、左腕エースへの道を着実に歩んでいる。
5月決戦のKEY PLAYER Z.ウィーラー 
外野手
E.
テームズが4月27日のデビュー戦(対ヤクルト、神宮)でアキレス腱断裂は大誤算。ただ、ウィーラーの存在が救い。テームズに代わった27日から7打席連続安打。ついに打率は5割超え。六番でにらみを利かせる。
ヤクルトのちょっとうれしい誤算 日替わりヒーロー登場

チームの雰囲気は明るい
【セ3位 13勝10敗4分 打率.246 防御率3.92】 開幕前、大方の予想は「最下位」だったが、下馬評を覆す奮闘を見せてAクラス争いを演じている。開幕直後、新型コロナの影響で
青木宣親ら主力の大量離脱を余儀なくされたが、その危機感がチームをより一つにした。
山崎晃大朗やルーキーの
元山飛優ら日替わりヒーローが出現。ポジションをつかむためのアピール合戦がチームに活気をもたらし、勝利に直結している。
中継ぎ陣も踏ん張る。特に
楽天から移籍の
近藤弘樹は、走者ありのイニング途中でも圧巻のピッチングで窮地をしのいでいる。盤石の
清水昇、
マクガフ、
石山泰稚の“勝利の方程式”は、連投となった4月27日の
巨人戦(神宮)でこそ崩れたが、
高津臣吾監督の信頼は揺らがない。
味方の適時打一つで飛び跳ねて喜ぶ
村上宗隆の姿からも分かるように、ベンチの雰囲気は明るい。どれだけ劣勢でも、あきらめる者は一人もおらず、最後まで食らいついていく姿勢が快進撃につながっている。
5月決戦のKEY PLAYER 山田哲人 
内野手
昨季は打率.254と不本意な結果に終わった山田だが、村上と本塁打王争いを演じるなど、復活の兆しを見せている。ただ、まだ下半身のコンディションは万全ではなさそう。主将の完全復活で、さらに勢いに乗りたい。
広島の大誤算 大瀬良の離脱と田中広らの不調

田中広[写真]の不振でタナキクは機能せず
【セ4位 13勝14敗2分 打率.261 防御率3.38】 新人クローザーの
栗林良吏が開幕から無失点投球を続け、
菊池涼介はリーグ打率トップ(.355)と、「うれしい誤算」もいくつかあるが、開幕前の構想から考えると、やはりうれしくない、本来の意味の誤算のほうが多い状態だと言えるだろう。
投手陣ではエース・
大瀬良大地の故障による戦列離脱だ。開幕直後は
九里亜蓮、
森下暢仁と三本柱を形成していたが、柱が2本に減り、以来、先発陣のやりくりが苦しくなって、カード2戦目、3戦目となる水曜日、木曜日はほとんど勝てなくなっている。
野手陣では、一番打者でスタートした
田中広輔と、昨季「11年目の覚醒」を見せた
堂林翔太の不振だ。ともにまさかの打率1割台に沈み、田中広は
小園海斗に定位置を取って代わられた。堂林も先発メンバーから外れることが多く、安部友裕の好調でカバーされているとはいえ、少なくとも相手が左投手の先発時にはスタメンで行ける形が多くならないと、チームとしては厳しいだろう。
5月決戦のKEY PLAYER 西川龍馬 
外野手
打線のつながりを考え、主砲・
鈴木誠也の打順を三番に繰り上げた
広島では、新四番の西川がカギになる。4月24日からは5試合連続打点。意外に四番が合っている!?
中日の大誤算 貧打線で投手に重圧大

打線が湿るとチームの雰囲気まで……
【セ5位 10勝15敗4分 打率.226 防御率2.81】 打てないのは最初から分かっていたが、期待していた打者がことごとく不振を極め、深刻な得点力不足に陥っている。二遊間を守る
阿部寿樹、
京田陽太は規定打席到達者の打率ワースト3に入り、パワーアップした
高橋周平もいまだ本塁打ゼロ。開幕五番に座った
平田良介は二軍降格となり、これをチャンスにしたい代役たちも結果を残しきれていない。3年目の
根尾昂も出たり出なかったりの不完全燃焼。打率は.161だ。
泣きたいのは投手陣だろう。防御率2.81は12球団2位。毎試合のようにロースコアの展開が続く。序盤からたたみかける攻撃ができないから、耐えしのいでの連続で1点もやれない状態だ。今年のテーマでもある足を使う攻撃を積極的に取り入れ、
高松渡、
滝野要などの新戦力が活躍しているのはプラス材料だが、うれしい誤算が思い浮かばないことが現状をよく示している。投高打低は持ち味だが、もう少し打の比重を上げなければ浮上は望めない。
5月決戦のKEY PLAYER ビシエド 
内野手
4月はいきなりの登録抹消で9試合に欠場したが、チームで四番を張れる男はこの助っ人以外に見当たらない。深刻な貧打線において一発が期待できる貴重な存在。快音を連発して眠っている打線を勢いづけてほしい。
DeNAの超大誤算 先発ローテが大崩壊!

先発でまだ2勝がいないのはツラい
【セ6位 6勝20敗4分 打率.228 防御率4.88】 開幕6連敗、さらに10連敗(引き分けを挟む)。球団史上初となる4月中の借金16、両リーグ最速20敗到達……。開幕前、チームの戦力を考えればある程度の苦戦は予想されたが、これほどまで勝てないとは、悪い意味で“ビッグサプライズ”だった。
外国人の合流の遅れが誤算であることに違いないが、それは
DeNAに限らず大なり小なり、どこの球団も抱えていた問題だ。むしろベイスターズ打線は、
ネフタリ・ソトと
オースティンが加わる前のほうがつながりがあり、得点力は高かった。
最大の誤算は先発投手だ。
平良拳太郎は右ヒジの張りで、
上茶谷大河、
京山将弥、
入江大生は不調により、開幕ローテ6人のうち4人が登録抹消された(京山はその後、再昇格)。開幕投手の
濱口遥大、昨季2ケタ勝利の
大貫晋一もピリッとせず、チームを勝利に導けていない。早期の先発陣の立て直し、ローテの再構築で5月以降、うれしいサプライズを期待したい。
5月決戦のKEY PLAYER 今永昇太 
投手
左肩の手術から復活を目指す今永が4月28日のイースタン・
西武戦(横須賀)で、復帰後最長となる7回、9奪三振4安打2失点と好投。5月中の一軍復帰も見えてきた。復活の左腕エースがチームの順位を押し上げる。