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2025ドラフトワイド

【2025ドラフト】佐々木麟太郎(スタンフォード大)の指名はあるのか!? 「1枠」の“無駄”を覚悟の上 迫られた交渉権獲得の最終判断

 

「プロ野球ドラフト会議supported by リポビタンD」は10月23日、東京都内のホテルで行われる。有力候補選手が名を連ねる中、見逃せない左の強打者がいる。今年7月のプロ野球実行委員会で佐々木麟太郎の指名が可能であることが、12球団に通知された。ところが、そこには“危険”が伴う。来年7月には、MLBドラフトが控えているからだ。見送るのか、指名に踏み切るのか──。仮に交渉権を獲得しても、契約の可否は長期戦になるのは間違いない。
写真=Getty Images

花巻東高では高校通算140本塁打。2027年からセ・リーグでもDH制が導入される。長打力のある打者への需要は、高まっていると言われる


異文化の中で文武両道


 左のスラッガー・スタンフォード大の佐々木麟太郎を指名する球団は、果たしてあるのか──。あるとすれば、何位で指名するのか──。

 それは10月23日に行われるプロ野球ドラフト会議において、野球ファンやメディア関係者にとってはある意味、最大の関心事と言っていいだろう。佐々木クラスの「超大物スラッガー」はそう毎年、出現するものではない。運命の一日を前に、現場のスカウトたちの中でも「リスクを覚悟で、指名する球団があっても決して不思議ではない」との声が挙がっている。

 事の発端は7月に行われたプロ野球実行委員会だった。秋のドラフト会議で、佐々木が指名可能であることが、NPB(日本野球機構)から12球団に通知されたのだ。NPBとMLBとの間で、「MLBドラフトの指名対象となる選手は、MLBドラフトからさかのぼって約10カ月前のNPBドラフトで指名対象となる」というルールが確認された。

 NPBの中村勝彦事務局長は「NPBドラフトで指名対象となることはMLB側とも確認をしています。ドラフトについては各球団から問い合わせがございますので『この選手はこうですよ』『ルールはこうですよ』というものをお示ししている」と説明した。

 佐々木は来年の4月18日に21歳となるため、来年7月のMLBドラフトの指名対象条件を満たすことになる。ルールに則り、この秋のNPBドラフトでの指名が可能になったわけだ。本人にとっては、将来的な選択肢が広がったことを意味する。

 NPB各球団にとって、佐々木が魅力的な逸材であることは言うまでもない。花巻東高では高校生で史上最多とされる通算140本塁打を放った強打者。父・洋氏は同校の監督としてエンゼルス・菊池雄星やドジャース・大谷翔平を育成した名指導者として知られている。

 2023年ドラフトでは規格外の打棒が注目され、1位指名が確実視されていたが、プロ志望届を提出せず、昨年9月に名門・スタンフォード大に進学した経緯がある。全米大学体育協会(NCAA)の一部に所属するハイレベルな環境の中、異文化にも適応し、52試合に出場して打率.269、7本塁打、41打点と及第点の成績を残した。学業にも必死に取り組み、異文化の中で文武両道を貫く姿は、野球ファンの心に残るものだった。

野球だけでなく、学業にも必死に取り組んできた。文武両道でチームメートとのコミュニケーションを取る中で、語学力もアップさせてきた


DH制導入による需要


 その間、NPBを取り巻く環境も変化した。8月4日のセ・リーグ理事会では2027年シーズンから「DH制」の導入を決めた。「投高打低」がプロ野球界のトレンドとなる中、打撃面で突出した才能を持つ佐々木の価値はこれまで以上に高くなった。

 佐々木のアメリカでのプレーをNPB球団の編成幹部がわざわざ海を渡り、視察に行っているのもそのような背景によるものだ。かつて、主に一塁を守るアマチュア選手はセ・リーグスカウトから評価が低くなる傾向もあった。「一塁は強打の助っ人外国人選手に守らせればいい」がセ・リーグの定説だったからだ。だが、それがDH制導入で崩れた。今年の高校、大学、社会人、独立リーグのドラフト候補と比較してみても、佐々木の打棒はトップクラスに位置する。確実にその需要は高まっている。

NCAAの一部に所属するハイレベルな環境の中、52試合に出場して打率.269、7本塁打、41打点と及第点の数字を残した


やはり、本命はMLB?


 とはいえ、NPB各球団が「佐々木指名」をすんなりと決断しにくい背景もある。佐々木を指名した場合、交渉権は翌年の7月末まで有効だ。しかし交渉や契約が解禁となるのは、「所属するリーグ戦の終了後」との規約があるため、5月のシーズン後になる。MLBドラフトを待たずして、NPB各球団と契約することが可能である一方、7月のMLBドラフトで指名されれば、メジャー行きを決断する可能性がある。

 すなわち、NPB球団は入団を拒否され、指名枠が無駄になることも覚悟した上で、佐々木に行かねばならない。1位はもちろん2位や3位であったとしても、戦力補強において大切なドラフト指名枠が無意味になってしまうことは避けたい。逆に言えば、“無駄”になるのを承知の上で、現有戦力にある程度の余裕がある球団のみが、佐々木の指名を検討することができるだろう。

 さらには、NPB球団が佐々木の交渉権を獲得した場合でも、公式戦出場は早くてもシーズン中盤からになる。もちろん、「プロ野球の正月」とされる2月のキャンプインから合流することはできない。こういったリスクも考慮した上で、それでも絶対に獲得したいか、あるいは見送るか、ドラフト会議を前に最終的な判断が必要とされる。

 広島は9月末に開いたスカウト会議後、報道陣に対し、佐々木が今秋のドラフト対象選手リストに入っていないことを明かした。その理由について編成幹部は、佐々木がアメリカ球界でプレーする意思を尊重してのことと説明した。確かに佐々木の本命が、メジャー球団であることは間違いない。それでもNPB球団の中で、その破壊力あふれる打棒を絶対に欲しい球団が出てくるかもしれない。

 その場合、NPBスカウトは佐々木サイドのMLB志向がどれほど強いのか、NPB入りの可能性があるのかをしっかりと調査した上で、ドラフトに臨むことが求められる。

 唯一無二の魅力を有する強打者をめぐり、NPB各球団はどんなファイナルアンサーを下すのか。10月23日、運命の一日に注目が集まる。

PROFILE
ささき・りんたろう●2005年4月18日生まれ。岩手県出身。184cm113kg。右投左打。江釣子小1年冬から江釣子ジュニアスポーツ少年団で野球を始め、県大会出場。江釣子中ではドジャース・大谷翔平の父・徹さんが監督を務める金ケ崎シニアでプレー。2年時に東日本選抜大会優勝、2年秋に北東北大会優勝。花巻東高では1年春からベンチ入りし、同夏は県大会準優勝。同秋は県大会、東北大会を制し、明治神宮大会4強。2年春のセンバツは1回戦敗退。同夏は県大会4強。主将を務めた同秋は県大会優勝で、東北大会初戦(2回戦)敗退。3年春は県大会優勝で東北大会8強。3年夏は岩手大会優勝で、甲子園は1回戦から3勝を挙げ、準々決勝進出。高校通算140本塁打。父は花巻東高・佐々木洋監督。24年9月にスタンフォード大に入学。1年時はNCAA一部で打率.269、7本塁打、41打点。

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