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日本シリーズ、広島はベテラン捕手・石原がカギを握っていると思うわ【岡田彰布のそらそうよ】

 

オレは今年の日本シリーズのキーパーソンはベテラン捕手の石原[写真中央]やと思っているし、その力を出してほしいな/写真=BBM


3度の日本シリーズで喜びもショックも味わった


 プロ野球は各球団の新監督も決まり、2019年に向けて、新たなスタート。目の前にはドラフト会議が迫っている。というか、このコラムを皆さんが読まれているころには、ドラフトの結果が出ているし、これを論じるには無理がある。そう、締め切りというヤツです。この時間的制約には逆らうことはできない。生じるタイム・ラグ。分かった上でコラムを書くしかない。

 オレも大昔、ドラフトを待った身。待つ身の心情は分かる……。自分ではどうしようもできない立場よ。祈るしかないわね。「そういう経験を踏まえ、今年のドラフト、誰を1位指名しますか?」と編集担当のS君からの問い。そらチーム事情が絡むし、難しいことだが、オレならやっぱり即戦力かな。ということは高校生ではなく、大学生。今年なら東洋大の3投手のうちのひとり。こういうことになる。

 さてドラフトの結果を楽しみに、球界最大のイベント、日本シリーズに話題を移す。これも1、2戦の結果が出ていると思うけど、現段階での日本一予想……。これもなかなか難しいわな。

 日本シリーズはやっぱり特別よ。オレは過去3度、日本シリーズを経験している。選手、コーチ、監督とすべて立場を変えての経験よ。こんなケース、ホンマ珍しいんやないかな。1985年、阪神は打って、打って、打ちまくってリーグ優勝を果たした。シーズン最終戦を終えた直後、たった2日間やったと記憶しているけど、間をおかずに日本シリーズに突入したんよ。これがよかった。あれこれ考えることもなく、流れのままになだれ込んだって感じ。だから気負うことなくスペシャルな舞台に立てたと思う。

 相手は西武。力があったよ。でも相手本拠地の西武球場で連勝し、結局、6戦目で決着。日本一になったんやけど、勝因は「投手陣のがんばり」やったと振り返ることができる。池田(池田親興)、ゲイル(リック・ゲイル)が相手が思う以上のピッチングで、西武を「アレッ?」と驚かせたんやなかったかな。やっぱり短期決戦は、スタートと投手力。これを再確認したわ。

 2003年はダイエー(現ソフトバンク)とのシリーズでオレはコーチよ。内弁慶シリーズと呼ばれ、ともに本拠地で全勝。3勝3敗で7戦目。博多でやられたわけ。あのころのダイエーはホンマ、強かったよ。若い力が伸びていて、松中(松中信彦)、城島(城島健司)、井口(井口資仁。現ロッテ監督)といった力のあるバッターが多くいた。阪神もメンバーがそろっていて、いい戦いができて、それだけに日本一を逃した悔しさはハンパなかった。

 悔しいといえば05年やね。オレは監督として臨んだんやけど、相手のロッテの勢いのスゴさ、これは驚くべきもんやった。オレはかなりの自信を持っていた。しかし第1戦、コテンパンにやられ、挙句に終盤、濃霧が出て、コールド負け。これでロッテはさらに勢いを増し、阪神はどん底。やられっ放しで、なんと4連敗……。そんなアホな、と思ったけど、まさに完敗。特に若いロッテの今江(今江敏晃。現年晶・楽天)に打ち込まれ、ロッテはいいところばかりで、阪神は力の半分も出し切れなかった。さすがに4連敗はこたえた。ショックやったわ。そらそうよ。日本一と考えていたのに、1勝もできんかったんやで。短期決戦の恐ろしさを、まざまざと見せつけられたわ。

短期決戦のキーマンはベテランの経験力やろね


 そんな日本シリーズ、今年は広島とソフトバンクの激突。制度が変わり、CS制度によってソフトバンクが勝ち上がってきた。やっぱりリーグ優勝のチーム同士がぶつかるのがいい……とオレは思うけど、制度は制度。ソフトバンクは、当然日本一を取りにくるやろうし、それだけの力と勢いがある。

 パ・リーグのCSファイナルステージで西武を圧倒したように、最高の状態で日本シリーズに入れたはず。これは大きい。短期勝負は先に流れをつかんだほうが優位に立つ。これは鉄則。となれば、この部分ではソフトバンクに分がある……というのがオレの見立てなんよ。

 先に結論を書く。どちらが日本一になるのか? わずかな差ではあるが、オレはソフトバンクと見ている。試合の中身は、多分、打ち合いになると思うけど、現状ではソフトバンクを上位と考えたのである。

 打撃戦になるとの予想やけど、そうなるとポイントはバッテリーです。広島がいかにソフトバンク打線に対策を講じるか。広島の日本一のカギはここ。それだけにポイントになるのが捕手と見ている。シリーズ前、多くのデータが集められ、対応を決めていくんやけど、1、2戦でデータどおりにいかなかった場合、バッテリーはホンマ、パニック状態に陥る。こうなれば、修正は難しくなり、流れを変えることができない。ということは捕手の重要性が問われる……ということ。

 広島は會澤(會澤翼)、石原(石原慶幸)がいる。どちらが先発で起用されるのか。オレはあえてベテラン・石原がキーパーソンと考えている。大舞台で、短期決戦。ここはベテランの力よ。相手ペースを崩し、投手陣をうまく引っ張る。この冷静さというのか、これを引き出しに持っているのがベテランのキャリア。石原にはこれを期待したいし、ここがシリーズの勝負の分岐点になるような気がするのである。

 日本シリーズで喜び、悔やみ、そしてショックを味わったオレだけど、やっぱり日本シリーズで戦えるのは最高よ。さあ、そんな喜びを感じながら、両チーム、どう戦うか。主導権をどちらが握るか。いずれにしても紙一重の戦いになるやろうし、熱いシリーズになるのは間違いないやろね。(デイリースポーツ評論家)

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