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エースが初戦で鮮明にした相手主砲への攻め方【伊東勤のプロフェッショナル配球考】

 

4回二死一塁で広島バッテリーは柳田に対して内角攻めを徹底し[写真]、最後は見逃し三振に仕留めた


 プロ野球のポストシーズンは、いよいよ最高峰の舞台、広島とソフトバンクとの日本シリーズに突入しました。今回は第1戦(マツダ広島)、広島バッテリー(大瀬良大地投手─會澤翼捕手)が2点リードした4回二死一塁で、この日2度目となる柳田悠岐外野手との対戦で見せた配球にスポットを当てていきます。

 広島は今シリーズ、この四番打者を抑えない限り、1984年以来、34年ぶりの頂点はないと言っても過言ではありません。バッテリーは厳しい配球で組み立てていきました。

 初球は内角低めにスライダー(判定はボール)、2球目も内角、球種はカットボールでファウルに。徹底的に内角を攻めていきました。

 2回のシリーズ初対戦の打席も同様でした。6球中、実に5球が内角に食い込むカットボールかスライダー。1球だけあった直球も内角でした。最終的には内角のカットボールで二ゴロに打ち取っていました。

 柳田外野手はこの1打席目を経て、またも2球連続で内角を攻められたのです。ほかの味方打者にはここまでの厳しさはなかったことを見ていたでしょうから、広島が躍起になって自分を封じ込めにきていることは理解できていたと思います。対抗しようと、力を込めて打ちに出ていた姿にそれが表れていました。

 3球目の低めの直球(判定はボール)の後も内角低めのカットボールでした。大瀬良投手はこれで空振りを奪い、2ボール2ストライクと追い込みました。

 4球目、これだけ内角に食い込む球で攻められていたのですから、柳田外野手はここでも同様の球種が来るという構えだったと思います。しかし、広島バッテリーが選択したのは直球。柳田外野手は裏をかかれたような見送り方で、見逃し三振を喫しました。

 この直球もコースは内角でした。バッテリーは厳しく攻めるというスタンスを変えることなく、ヤマを張られている中でそれをかわすという冷静さも光った組み立てでした。

 しかも大瀬良投手はこの柳田外野手との対戦の直前、ジュリスベル・グラシアル内野手に四球を与え、この日初めて走者を許していました。嫌な形でパーフェクト投球が途切れた後、このような投球で無失点としたことはさすがだと思いましたね。

 大瀬良投手と柳田外野手との対戦は、この日はこれで終わりました。ただ、2番手以降の味方投手が続いていけるような状況を整えるには十分な内容でした。広島のリリーフ陣は、対柳田外野手では3打席目に死球を与え、4打席目は空振り三振、そして最後の5打席目は敬遠と安打を許すことなく、2戦目を迎えられるようにしました。今季、相性がいい本拠地で1回に幸先よく2点を先制しながらも、その後は追加点を奪えずに引き分けに終わった試合は、ややもったいない感がありますが、シリーズの今後を見据えると、柳田外野手に何もさせなかったことは収穫大でした。

 私は選手、監督として何度も日本シリーズを経験しました。初戦で相手主砲への攻め方を鮮明にしておくことが非常に重要であることはよく分かっています。広島はエースがいきなり率先垂範したことに、意味があったと思いました。

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