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広島のV4はあるんかな!? 30%の確率はあると思うね【岡田彰布のそらそうよ】

 

着実に四番の力をつけてきている鈴木。彼がV4へと導くキーマンになる/写真=BBM


この時代での3連覇は本当にスゴイよ


 開幕本番に向けて試走である。オープン戦が今後、連日のように行われる。試走……いわゆる“試す”ときがきた。そういうことだ。監督の立場になって考える。オープン戦の前半、それは新戦力、ルーキーの力量判断、そして若手の伸びの確認。ここに力を注ぐ。そして中盤からは中堅、ベテランを起用しチーム力の把握。さらに残り1週間となって、いよいよ臨戦態勢。本番をニラんだチームとしての戦いに入っていく。

 となれば、今のこの時期、若手にとっては生きるか死ぬかの重要な期間。まさに「ふるい」にかけられるわけだから、結果が大きく左右する。ここで目立てば、その後も帯同となり、結果が出なければ開幕アウト。非情な通告が待っていることになる。

「これで1年を戦っていく」。監督としてチームの形を作る。いろいろ悩み、そしてつらい決断をしなければならぬ時が迫っている。それでも心を鬼にして判断するしかない。1年のうち、悩む最初の時間なのだ。

 すべてのチームがやることをやって、シーズンに臨むが、結果がすべての世界。1位があれば最下位もある。その繰り返しが続くこのプロ野球で、セ・リーグでいえばV3の広島はホンマ、立派よね。やはり安定した強さ、安定したチームづくりの結果なんやろな。

 振り返ってみれば1985年、阪神は日本一になったけど、正直、これで連覇できるとは考えていなかった。それは圧倒的な打撃のチームだったからで、やっぱり安定した戦いを続けるためにはディフェンス力。投手力を含めた守りの強さがないと、何年も続けて勝つのは困難とオレは思っていた。そのとおり、優勝後はまるで坂道を転げ落ちるように転落したわ。そして阪神は暗黒時代に突入した。

 逆に「これは連覇できる」と手応えがあったのは2005年のリーグ優勝時やった。監督2年目に優勝したんやけど、ここからは常勝チームになる……と感じたもんよ。それは守りがよかったからよ。JFKに代表されるように、ディフェンス面で勝てるパターンを持っていたから。だが思惑はズレた。理由はひとつよ。巨人中日というライバル2チームがホンマ強かったからよ。野球は自チームの評価ではなく、比較評価で結果が出る。あの時代、巨人も中日も強かった。結局は比較して負けたということなんやろね。常に3チームがシノギを削り、阪神は05年の優勝後は、V争いをするものの、最後には力尽きた。やっぱり連覇は難しいのよ。オレはホンマ、それを痛感したわ。

 そういう意味でV3の広島は見事。これしかない。特別なスーパースターが存在するわけでもないし、絶対エースがいるわけでもない。それでもV3やで。これはひと言で表現するなら“バランス”。広島ほどバランスのいいチームはない。打ち合いになっても、投げ合いになっても、すべて戦い抜けるバランスのよさ。オールラウンダーというのか。欠点らしきものが見当たらないのが広島の強み。オレはここ数年、そういう風に見てきた。

広島V4の確率は去年より低いと見ている


 そしてV4に挑む今シーズン。ここ数年でも最も試練が待ち受けているのでは……と予測する。それはまず丸(丸佳浩)が抜けたこと。FAで巨人に移籍したんやけど、彼の広島での存在感はホンマ、デカかった。そらそうよ。2年連続のMVPよ。いかにシーズンを通して働いていたかが分かるし、抜けてマイナス1では終わらない選手なんよね。

 三番・丸がいたから一番・田中(田中広輔)、二番・菊池(菊池涼介)が機能したわけだし、四番・鈴木(鈴木誠也)が生きた。それだけに、この穴を埋めるのは相当苦労すると見る。もちろん選手層の厚い広島のことやから、準備に怠りはないと思うけど、やっぱり戦力ダウンになるのは否めない。

 さらに、先に書いた戦力比較よ。ほかのチームは打倒・広島へ、大きく戦力を整えた。その筆頭が巨人で、丸を獲得したあとも外国人、FA補強、ベテラン加入と、強化を続けた。先を見るのではなく、とにかくこの1年、V奪回を目指した補強よ。これが広島にとっては怖いし、ヤクルトDeNAも着実にチーム力を上げている。

 V3は果たしたけど、その3年は力量比較で広島はほかのチームを上回っていた。いわば独走に近い形でリーグをリードしてきたのだが、今年は様相が違う。力量差が縮まり、ラクなシーズンには決してならない。それほど力は肉薄したといっていいだろう。

 でも先に書いたように広島ではバランスの強みが維持されている。外国人も四番ではなく下位打線に組み入れるバランスのいい打線やし、控えの層も実に高い。四番・鈴木は着実に本物に近づき、どんなゲーム展開でもOKという特性を維持できる。だから大きく崩れることはないし、V争いは必至と予想できるのだ。

 ズバリ、今シーズンの広島V確率はというと「30%」とする。これまでのシーズンのようにいかなくてもこれくらいはある。残り70%を巨人、ヤクルト、DeNAが争うということ。残念ながら阪神、そして中日のV確率は低いとしたわけだが、例年以上に混戦に拍車がかかることだけは間違いない。

 これからオープン戦で広島の今シーズンを分析していくが、かつてのV9巨人は別格として、V4に挑む広島が、どんなチームに仕上げていくのか。ここでリーグ優勝すれば、ホンマ、広島時代が長期化を示すことになる。V4なるか……リハーサルでその可能性を探ることにする。(デイリースポーツ評論家)

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