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オープン戦を甘く見てはいけない。阪神はまずは勝ちグセを、やな【岡田彰布のそらそうよ】

 

オープン戦で7試合勝ち星なしから2連勝した阪神。矢野監督もホッとしたはずや。ここから勝ちグセをつけたいな/写真=BBM


球界にある負けグセ。オープン戦でつくとやっかい


 人間、誰しもクセがある。例えば“口グセ”でオレの場合、コラムのタイトルになっている「そらそうよ」。自分では意識していないし、気がついてはいないのだが、よく「そらそうよ」と発しているようなのだ。

 球界には重要なクセがある。それは「勝ちグセ」「負けグセ」よ。このクセはホンマ、気にする。特に「負けグセ」がついてしまうと、ズルズルと落ちていく。逆に「勝ちグセ」がつくと、何でもかんでも好転して、上へ上へと進んでいく。何とかして手に入れたい勝ちグセ……。それはオープン戦でも当てはまる。

 たかがオープン戦、されどオープン戦なわけよね。よくリハーサルやから、負けのことは気にすることはない、と言われるけど、違う。結果は大事なわけで、負けが続くと、自然とチームに負けグセがついてしまう。これが怖いのである。

 もちろん勝ち負けを気にしなくていいチームもある。例えばソフトバンクだったり、広島だったり、力があることは分かっているし、オープン戦で負けが続いても、ジタバタする必要はない、要は中身を重要視すればいいだけのことで、負けグセがつくことはない。でも結果にとらわれるべきチームはある。阪神なんかは、その典型といってもいい。とにかく、昨年は最下位やったわけやし、監督も代わった。心機一転、巻き返しのシーズンを迎え、まずは最下位のイメージを払しょくすることが大事。そのためにはオープン戦で、勝ちグセを作っていくことが大切になってくると、オレは感じている。

 オレが監督だったころ、オープン戦の勝敗は気にならんかった。それはある程度、チーム力が把握できたからで、こうなれば勝てる、こうなったら負ける……という展開が読めていた、だから、日々の勝ち負けより選手の状態であったり、チームとしての戦い方に重きを置いて、采配を考えていた。

 どこのチームも同じで、オープン戦の序盤は新戦力、若手を積極的に起用し、勝ち負けを度外視した戦いになるけど、そこで戦力の見極めを行い、3月中旬からは主力組を起用し、ようやく本番ニラみになっていく。そこからは、勝敗が戦う上で、大事な要素になってくるし、負けグセがつかないように……と監督としては考えるわけよね。

 実戦スタートから阪神は、なかなか勝てなかった。1分けを挟んで6連敗。この時期、それほど気にすることもない結果やけど、チームの置かれた状況、立場を考えると、矢野(矢野燿大)監督は内心、焦ったんやないかと思ってしまう。結果を求めるのはまだ先、と分かっていても、ひとつも勝てなかったら、そら焦るもんよ。

 ということで3月12、13日の中日戦(ナゴヤドーム)。ここで阪神は連勝。ようやく未勝利を脱出した。これでひとまず落ち着いたやろうね。勝敗にこだわらないといけないチームやし、ここから、どうチーム力を強めていくか。実にタイミングのいい勝ちだったと思うよ。開幕に向けて、上昇カーブを描ける材料がそろってきたのでは……と期待を抱かせるよね。

オープン戦というリハーサルで勝てないと本番では無理やろ


 監督の立場でいうと、やっぱりチームとしては、ピークを開幕に合わせるというのが理想的なわけ。ただし、打線でいえば、バッターの好調の波は長くて1カ月。長く調子を維持できるってことは難しいわけ。となればオープン戦の終盤から臨戦態勢に入り、打線全体が上り調子で開幕を迎える、というのがベストの形になる。そこに持っていけるように首脳陣が工夫し、メンバーを選んでいく。とにかく不安を消し、自信を持ってオープニングに入ることが、この時期、監督が考えることになる。

 開幕まで残り2週間を切った。オープン戦も残りわずか。となれば試す期間が終了し、結果を求めた本番態勢に入るということだ。オレはそうやった。残り5試合になったときから切り替えた。リハーサルではなく、あくまで本番想定の考え方よ。ベテランを組み入れて、本番同様のオーダー、そして投手起用を行い、それによってチームとしてムードを高めていったもんよ。

 もちろん本番をニラみつつということで、戦術的に試しておかなければならぬことがある。パ・リーグとのオープン戦ではオープン戦中盤までDH制を使っていたが、終盤になれば、投手を打線に入れるという方策を取っていたわ。投手を打席に立たせたい。セ・リーグでは、投手の打席というのは大事な要素で、送りバントができるかどうかとか、パ・リーグから来た投手には、打席を経験させておくことが必要なんや。そういったことを最後に確認し、すべてをやり尽くして、さあ開幕!! こうなれば、いいスタートを切れるんじゃないだろうか。

 実際に監督をやってきた身として言えるのは、オープン戦を甘く見てはいけない……ってこと。そらそうよ(また口グセが出た)、リハーサルで勝てないチームが、本番に入って勝てるってほど、野球は甘くない。それを感じた監督時代やった。どのチームも残りのオープン戦、最後の仕上げをこなし、ベストの状態で開幕を迎えてほしいものやね。

 ここから先、開幕メンバーの選定など、シビアな判断が下される中、選手には絶対にケガ、故障だけはないようにしてもらいたい。チームにとってもそうだが、選手にとっては悔いが残ることになる。みんなが万全の状態で開幕を迎えること……。仕上げの段階で、オレはホンマ、それを願っている。(デイリースポーツ評論家)

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