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原巨人が長けた危機管理能力【川口和久のスクリューボール】

 

突然、折れたバットが飛んでくることもある。危機管理は大事だね。ちなみに、本文と写真は、ほぼ関係ありません/写真=湯浅芳昭


阿部離脱の影響は


 巨人阿部慎之助が左足ふくらはぎの張りで離脱した。ふくらはぎは野球選手にとって下半身のパワーを生み出す第2の心臓であり、エンジン。年齢もあるし、まずはじっくり治してほしい。そのとき俺が思い出したのが、2011年の開幕前、阪神との練習試合で右足のふくらはぎを痛め、慎之助が離脱となったこと。

 11年は投手コーチ1年目だったけど、原辰徳監督がすぐ「左投手はカトケン、右は實松(實松一成)でどうかな」と言ってきた。確かに加藤健は前年捕手の出場は1試合だけだったけど、左投手のリードがうまかったのは確か。これがうまくはまり、阿部の復帰までをしのぎ、優勝もした。原監督は、阿部という大黒柱を失っても、二の手、三の手を考えていたんだ。いわゆる「危機管理」だね。びっくりするような思い切った手を打ちながらも、必ず、その先も考えている人だった。

 このオフ、まだ捕手を獲るのか、と言われながら炭谷銀仁朗を獲得したけど、慎之助の離脱で収まるところに収まった。炭谷加入で刺激を受けた小林誠司も、菅野智之とのバッテリーでいい仕事をしている。誠司は強肩があるから、走者をそれほど気にしなくていい。菅野のような完成した投手にとっては、リードはそれほど大きな問題にはならないしね(誠司、お前のリードがダメという意味じゃないよ!)。

 逆に炭谷は、若い投手や外国人投手の力を熟練の技で引き出せばいいし、大城卓三にもチャンスを与えやすくなった。阿部離脱は打撃面では痛いが、キャッチャーの役割分担と戦い方が見えたことは確かだ。

 もちろん、野球は計算どおりに行かない。小林、炭谷がうまくフィットしなければ、そこに万全に体を戻した阿部が上がってくればいいわけだしね。

最後の悩みは外国人


 投手陣は先発で菅野、山口俊ヤングマンの右もそうだが、メルセデス今村信貴田口麗斗の左3枚も他チームの脅威になるはず。この間、点は取られたが、新人左腕・高橋優貴もよかった。彼が使えたら左4枚だからね。

 中継ぎ陣も左の吉川光夫がはまり、桜井俊貴のほか若手が出てきて、上原浩治も下で地味に投げている。まず頭数はそろってきた。スリムになって来日したマシソンもそのうち戻ってくるし、意外と整ってきたね。

 原監督の最後の悩みは新外国人のビヤヌエバクック、そしてゲレーロだろう。野手2人は、ともにオープン戦でさっぱり。助っ人の役割は果たしていないな。せいぜい代打要員だろう。

 抑え候補のクックも3月14日のソフトバンク戦(ヤフオク)で先頭打者に四球の後、走られ、一発を食らった。特に四球、盗塁はいただけない。先頭打者に二塁打を浴びたようものだからね。おそらく日本球界をなめていたと思うよ。「自分には力がある。本番になれば」って。日本の野球は、アメリカのベースボールのような力比べじゃない。セットで止まる、クイック、ここぞのときの制球力。本当ならオープン戦序盤で克服しておいてほしかった課題がいまだ山積みだ。今のままなら相手打者を料理する前に、自分が、ごちそう扱いされちゃうぞ。それでいいのか、コックさん、いやクック!

 ただ、俺はここで原監督に二の手、三の手がないはずはないと思っている。クックがこけたときの秘密兵器もたぶん用意しているはず。それが和食か洋食かは知らんけどね。

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