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【インタビュー】ソフトバンク・生海 “気持ちいい”につながるスイングを「一軍でも四番を打てるようになりたい」

 

ウエスタン・リーグでは69試合に出場し、リーグ6位タイの8本塁打。6月13日の阪神戦[タマスタ筑後]ではサヨナラアーチを架けた


四番じゃないと嫌


ウエスタン・リーグ初出場ながらも託された四番。その後も、打線の中心として、リーグ優勝、ファーム日本選手権では日本一に導く4安打。未来の主砲候補が感じさせる大きな可能性が『ビッグホープ賞』受賞者としてピタリと来た。
取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、高原由佳、BBM

 4年ぶりにファーム日本一となったチームの中で主に四番を担ったドラフト3位ルーキーが、初めてのプロの世界で見せたのは勝負強さだった。一軍でも13試合を経験(4安打)。要所で光る鋭いスイングが、生海に対する期待感をふくらませる。ファームから一軍の主力へ――。この受賞もきっかけの一つに、来季以降、駆け上がっていく。

――ルーキーイヤーを振り返ってみて、どんな1年でしたか。

生海 ウエスタン・リーグでやってきたことをこうやって評価していただき、このような賞をいただけたことは、すごく光栄です。ただ、正直なところでは、あまり思うようにはできなかったなと思っています。

――想像していたプロの世界、1年目とは、やはり違いましたか。

生海 全然違ったというわけではないんですけど、なんて言うんですかね。もっとできるかなとは思っていたんです(苦笑)。自分の課題が見えた1年でした。

――具体的には、どんなところが課題でしたか。

生海 バッティングにしても、動きにちょっとムダがある。それで(打球が)詰まったりすることが多かったです。甘い球が来ても、とらえられなかった感じです。アマチュア時代なら打てていたんですけど、やっぱりプロのピッチャーは(ボールの)キレが違うので。ホームランも8本打ちましたが、足らんですね。甘い球をミスショットすることがすごく多かったので、もっといけたかなと思います。

――それでも、ウエスタン・リーグで勝負強さを見せ、一軍の舞台も経験しました。自分なりに良かった点、プロでも通用するなと思ったところは?

生海 調子がいいときのバッティングは、すごくいいなと。その状態が維持できれば、バッティングはイケます。ただ、いいときの状態ってずっとは続かないので、すごく難しいことではあるんですけど(苦笑)。今、ムダな動きを省く練習をしているので、それができたら、たぶん全然違う成績になると思います。

――調子がいいときとそうでないときというのは、何が違うのでしょうか。

生海 なんて言うんですかね、“間”をつくれるというのか。だから、打席の中で余裕を持っていられる。ボールもゆっくり見られる。いいときはそんな感じです。

――それが悪くなると?

生海 焦っちゃって体が……。やっぱり打てないときは、打とう、打とう、ってなるので、前のめりになったり。結果を欲しがってしまうんですよね。でも、いいときは、変にヒットを打とうとか思わないんです。無意識に、普段どおりに自分のスイングができているから、結果もついてくる。意識的なところというのは、やっぱり難しいですね。

明るいキャラクターも生海の魅力。11月28日に行われたNPB AWARDS、表彰式後の記念撮影では、いつもの“生海スマイル”


――春季キャンプでA組(一軍)抜てきも、右肩関節炎で途中離脱。ウエスタン・リーグのデビュー戦は4月18日のオリックス戦(タマスタ筑後)でした。そのときから四番を任され、最終的に59試合で四番を務めましたが、自身、四番への意識というのは?

生海 最初は正直、なかったんですよね。試合に出られたらいいな、ぐらいだったので。でも、小久保さん(小久保裕紀、当時二軍監督、現一軍監督)にずっと使っていただいて、それで「四番っていいな」と。今では「四番じゃないと嫌やな」と思っています。

――四番が果たすべき役割というところは、どうとらえていますか。

生海 味方が打てないときに決めるのが四番。それは、リチャードさんとかとも話をしていて。苦しいときに打つ。打てなかったら負ける、みたいな。

――小久保監督からは四番を任されるにあたって何か声掛けなどはあったのでしょうか。

生海 いや、ないですね。そもそも二軍戦に出るとも思っていなくて、そしたらいきなり四番だった。ビックリしました。小久保さんが言った(指名)らしいですね。なんでだったんですかね(笑)。

――それだけ期待されているということかと。それは感じていますか。

生海 感じてはいます。一軍でも四番を打てるようになりたいですね。

――それは二軍で四番を任されるようになって、出てきた思い?

生海 まず、プロの世界で四番を打つとは思ってなかったので。

――プロの四番打者というのは、どんなイメージですか。

生海 ホームランバッター。だから、僕自身、長打力を上げるために、今、いろいろと考えてやっているところです。

――秋季キャンプで打撃フォームを試行錯誤していましたが、それも……。

生海 そうですね。長打力を上げるために、タイミングの取り方だったり。やっぱり、タイミングが一番大事なので。タイミングの取り方と、先ほどお話ししたムダな動きを省くというところと。あとは、秋季キャンプ中に行った『ドライブライン・ベースボール』(アメリカのトレーニング施設)の測定で自分の悪いところとかも見つかったので、そこに対するアプローチも。

――ドライブラインの測定では、どんな発見がありましたか。

生海 自分は(バットとの)距離をつくってしまう。手が体から離れていって(突っ張った感じになって)、それで打球が飛ばない。だから、しっかり振り切ることをやったほうがいいと。

――練習での成果としては?

生海 センター方向にも打球が伸びるようになりました。軽く振っても飛んでいく。実は、これまでも意識してみたことはあるんです。ただ、自信を持ってやれていたわけではなかったので。方向性が見えた、それだけでもすごく大きなことだと思っています。

大一番で感じた楽しさ


 10月7日に行われたファーム日本選手権に、シーズン終盤の一軍戦。そして、クライマックスシリーズ(CS)。ウエスタン・リーグはもちろん、プラスアルファの経験も、生海を頼もしい打者へと成長させる。来季、待たれるのは一軍でのホームラン。それは未来の主砲への第一歩だ。

――ファーム日本選手権では4打数4安打の活躍で、優秀選手賞を獲得。ああいう大舞台には強いほうですか。

生海 いや、そういうのはないんですけど(笑)、あの試合は1試合だけやったじゃないですか。だから、全力でやろうとは思っていて。集中もできましたね。

一発勝負のファーム日本選手権[10月7日の巨人戦=宮崎]では、高い集中力を発揮して4安打と固め打ち


――頼もしい限りです。

生海 ただ、シーズンを通じてとなると、なかなか集中力も……(苦笑)。一軍だと143試合。試合への向き合い方というところは、考えていかないといけないなとは思っています。

――今季の一軍出場は7月下旬の初昇格で1試合。8月の終わりから9月にかけて12試合。どんな学びがありましたか。

生海 やっぱり守れないと試合に出られないなと思いました。

――守備面に関しての現状は?

生海 秋季キャンプでも練習を重ねて、ちょっとずつレベルアップしています、たぶん。別に苦手意識があるとかではないんです。というか、アマチュア時代は打てればいいと思っていたので。でも、プロに入って一軍で(試合に)出続けるとなると、守れないと話にならない。

一軍定着に向けて、守備力向上は必要不可欠。秋季キャンプでも連日の特守に励んだ


――外野は3ポジションありますが、自身、ここを極めたいと思うのは?

生海 レフト、ライトですね。どちらかで頑張りたい。センターは無理です、足が遅いので(笑)。ただ、レフトだと近藤(近藤健介)さん、ライトだとギーさん(柳田悠岐)がいるので(苦笑)。勝たないと! 頑張ります。

――生海選手が2度目に一軍に昇格したときは、シーズン終盤でクライマックスシリーズ(CS)争いも激しい時期でした。また、1年目からCSも経験。そういう緊張感ある中でプレーしてみて感じるものは何かありましたか。

生海 CSはすごく、いつもと雰囲気が違いました。楽しかったです(笑顔)。

――楽しかった、ですか!?

生海 自分、ああいうときのほうがいいのかもしれません。結果は代打で空振り三振しちゃったんですけど、一軍で22打席立った中でも一番良かったんじゃないのかなと思います。

――それはどうしてですか。

生海 (10月16日の第3戦、0対0の延長10回一死二塁の場面にも)なんか特別、緊張することもなく、ボール自体は落ち着いて見られたんですよね。初球から振りに行けたので、いろいろと踏まえても良かったんじゃないかな、と。

――生海選手自身は、将来的にはどんな選手になっていきたいと思っているのでしょうか。

生海 いっぱいホームランを打つ選手!

――やっぱり、求めるのはホームランなんですね。ホームランはどんなところが魅力ですか。

生海 気持ちいいんですよね。打って、打球が飛んでいくのを見る感じが。

――今、それを聞いて、以前、柳田選手がまったく同じことを言っていたのを思い出しました。

生海 そうなんですか!

――天性の素質が……。

生海 いやー、分からないですけど(笑)。感覚が、やっぱり気持ちいいですね。

――では、早く一軍で、という思いも。

生海 めっちゃ打ちたいですね。来年、たくさん打てるように頑張ります。

H担が推したい理由と描く未来予想図



素直さに漂う大物感

 インタビュー中も時折、笑顔を見せ、飾らない言葉で質問に答えていく。4打数無安打に終わったウエスタン・リーグのデビュー戦。悔しさをにじませながらも生海は、「村上(村上隆行、当時二軍打撃、現一軍打撃)コーチに『振れたんでOK』と言われたので、(まずは)自分もそれでいいかな」と振り返った。いいところは受け入れ、悪いところは修正する。素直にそれができるのが生海の良さだ。もちろん結果は求められるが、いい悪いを見極めて取り組まなければ、結果も変わってこない。

 デビュー戦後、小久保裕紀監督は生海を四番に据えた理由について、こう語っていた。「バッティング練習を見ても雰囲気がある。だから、どっしり構えて、レギュラーの道に進んでいってもらいたいと思う選手の一人」。生海の魅力を生かす――それが四番での起用。かつての柳田悠岐も、豪快な打撃はそのままにファームで育てられた。2人の共通点が、チームを背負って立つ生海の未来を照らしている。(R)

PROFILE
かい・いくみ●2000年7月11日生まれ。184cm95kg。右投左打。福岡県出身。九州国際大付高-東北福祉大-ソフトバンク23[3]=1年。

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