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シーズンが終わって始まっている“戦い”。編成部がいかに戦力を整えるか。優勝を果たすために責務は重大【伊原春樹の野球の真髄】

 

もし、バウアーがチームを去ればDeNAにとって大ダメージとなる[写真=佐藤真一]


 12月に入り、球界は完全なオフとなった。だが、来シーズンへ向けての“戦い”はすでに始まっている。その一つが、編成部がどれだけ戦力を整えられるかということだ。ドラフト、FA、トレード、新外国人など補強方法は多岐にわたる。優勝するために、どのようなチームをつくるか、編成部はシーズンが終わってから腐心しているところだろう。

 私には苦い思い出がある。2013年オフ、私が2度目の西武監督に就任したときだ。当時、西武は渡辺久信監督(現GM)の下、5年連続で優勝を逃し、13年は2位となったがクライマックスシリーズ・ファーストステージで敗退。チームを何とか頂点に導くために力を貸してほしいということだったが、問題点があった。涌井秀章(現中日)と片岡治大が国内FA権を取得していたのだ。

 涌井は13年、本調子ではなく、前年に続きリリーフへの配置転換を経験。45試合登板で5勝7敗7セーブ13ホールド、防御率3.90に終わったが、もちろんチームには欠かせない存在だった。片岡は左膝を痛めて約3カ月、戦線離脱するなど72試合の出場にとどまったが、打率.290をマーク。体調を万全にすれば、まだまだ上位を打ち、正二塁手として打線をけん引する力はあった。

 FAは選手が勝ち取った権利だが、私は球団編成部に「何としても引き留めてほしい」と強くお願いをした。しかし、願いはかなわず。2人はチームを去ることになってしまう。涌井はロッテ、片岡は巨人に活躍の場を求めることになった。

 さらに外国人選手、だ。12年オフ、広島を自由契約となったデニス・サファテは西武のユニフォームに袖を通してリリーフとしてフル回転。セットアッパー、クローザーを務め58試合に登板、9勝1敗10セーブ、16ホールド、防御率1.87と抜群の成績を残した。数字を見れば分かるとおり、リリーフの軸として必要不可欠な右腕だった。

 そして、エステバン・ヘルマンも攻撃の核となっていた。12年に来日したヘルマンは打率.270だったが41盗塁をマーク。13年は打率.319、40盗塁、さらに出塁率.418でタイトル獲得と進化した姿を見せていた。

 この2人の外国人選手の流出も避けるように願ったが、それは失敗に終わる。サファテはソフトバンク、ヘルマンはオリックスにさらわれ、西武は戦力ダウンを強いられた。代わりの新外国人も機能することなく、14年は苦しい戦いを強いられることになってしまった。

 やはり、優勝を果たすためには、それに見合う戦力をいかに編成部が集めるかに大きなウエートがかかる。今オフで言えばDeNAは今永昇太がポスティングシステムでメジャー移籍を目指し、石田健大も国内FA権を行使。保留者名簿から名前が外れたT.バウアーの去就も未定だ。もし、この3人が新天地に移籍することになると21勝の穴が空くことになる。それをどのようにして埋めていこうと考えているのか。26年ぶりの優勝へ編成部の腕の見せどころになる。

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