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2023年はどのような1年だったか? パ・リーグ編 5球団が戦力拮抗! “予想屋”泣かせの『一寸先は闇』【堀内恒夫の悪太郎の遺言状】

 

今季はオリックスが強さを見せて3連覇を飾ったパ・リーグだが、来季は実力伯仲のエキサイティングな展開が期待できるのではないか


26本塁打と87打点の数字でも“投高打低”の中では「天晴!」


 前号で予告したとおり、今回は今シーズンのパ・リーグを振り返ってみたいと思う。

 セ・リーグの阪神と同様にパの覇者・オリックスも、圧倒的な強さを見せつけた。9月20日に、2位のロッテに14.5ゲームの大差をつけてリーグ3連覇のゴールを駆け抜けた。クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージでは、ロッテ相手に4勝1敗(アドバンテージの1勝を含む)で勝ち上がり、3年連続日本シリーズ出場を決めた。

 パはDH制の野球だ。打撃が得意でない投手が打席に立たないから、“打高投低”だと誰もが想像してしまう。ところが、現実はまったく逆で“投高打低”の様相を呈していた。

 打撃部門でパの首位打者は、打率.307のオリックス・頓宮裕真だった。セの首位打者を獲得したDeNA宮崎敏郎が残した打率.326と比べたら、2分近く低い数字だ。

 最多本塁打は楽天浅村栄斗、昨季まで巨人に在籍していたロッテのグレゴリー・ポランコ日本ハムからソフトバンクにFA移籍した近藤健介の3人が、26本塁打でそれぞれ分け合っている。さらに近藤は87打点で最多打点も獲得した。

 セの最多本塁打を獲得した巨人の岡本和真の41本塁打と、最多打点に輝いたDeNA・牧秀悟の103打点と比べても、はるかに少ない数字だ。

 数字を見る限りでは、パの打者が「非力だ!」というように映るが、加えて投手力が上がっていることによる“投高打低”現象が、ここ数年間続いているというわけだよ。しかし、首位打者が打率.307、最多本塁打が26本塁打、最多打点が87打点という数字でも、タイトルはタイトルであることは紛れもない事実だ。

 タイトルとは相対的にもたらされる結果だから、少ない数字でも、獲得した選手たちは「立派なタイトルホルダー」であることは間違いない。それがプロ野球界の常識。だから、「天晴!」と一言、声を掛けてやりたくなる。

 今季のオリックスは86勝53敗4分け、勝率.619の戦績で、断トツのリーグ優勝を飾った。

 来季から3年連続最多勝利、勝率第一位、最優秀防御率、最多奪三振の投手4冠に沢村賞、リーグMVPを獲得したエースの山本由伸が、MLBへ移籍することが決まったとしても、投手陣は「それほどダメージを被(こうむ)らない」顔ぶれがそろっている。

 今季2ケタ勝利(10勝4敗)を挙げた宮城大弥は、これからも大きな伸びしろが期待できる。8月下旬に腰痛で戦列離脱してCSと日本シリーズには出場できなかったが、9勝(3敗)を挙げて最優秀新人を獲得した山下舜平大も、これからさらに大きな成長を期待できる投手だからね。

 今季2位のロッテは戦力的に首位のオリックスと比べても、それほど見劣りしないだろう。しかし、激しく首位を争うには「何かが足りない」。その「何か?」とは、佐々木朗希がシーズンとおして、中6日の登板間隔でマウンドへ上がれていないことだ。

 今季の佐々木朗は15試合に先発して7勝4敗、135奪三振、防御率1.78という素晴らしい投球内容を見せている。ところが、投球回はわずかに91。登板後に体の張りを訴えるなど、次回登板までに2週間近くかかったこともあったじゃないか。佐々木朗がこんな虚弱体質ではロッテのリーグ優勝は「夢のまた夢」で終わってしまうに違いない。

 あれだけの潜在能力を持ちながら、プロ4年目の今季も2ケタ勝利を挙げることができなかった。来季の佐々木朗はチームをリーグ優勝へ導くために、中6日でフル回転することが最低限のノルマだ。

 完全試合と無安打無得点を達成した「記憶に残る男」から、プロ初の2ケタ勝利を挙げることによって、「記録に残る男」として、新たに進化した姿を見せてもらいたいね。

看板投手の老巧化で4位の楽天 西武は抑え不在で5位に転落


 昨季はオリックスと最後まで激しくリーグ優勝を争ったソフトバンクは、今季リーグ3位に終わっている。

 投手陣はMLBのレンジャーズからFAとなっていた有原航平を獲得。攻撃陣は日本ハムからFA移籍で近藤を獲得しているけれど、大型補強を行ったわりには結果がついてきていない。「ボタンの掛け違え!」とでも言うのだろうか、チーム全体にチグハグした感じが目立ったね。

 今季4位の楽天は、もっと上位へ進出してくるかと思っていた。ところが、投手陣の衰えが想像以上だった。今年35歳の田中将大が、今季は7勝(11敗)、防御率4.91という不本意な成績だった。田中将は10月下旬に右肘のクリーニング手術を行っているし、全盛期の投球とはかけ離れた変化球投手に姿を変えている。

 エースの則本昂大も今季は2ケタ勝利には届かず、8勝(8敗)に終わっている。同じくエース格の岸孝之にしても9勝(5敗)を挙げているけれど、内容はいま一つだった。とにかく、実績と名前のある主力投手に衰えが目立った。

 来季は抑えの切り札・松井裕樹がMLBへ移籍することが決定的だから、苦しい戦いを強いられることは間違いないだろう。

 今季の楽天は、チーム防御率が3.52でリーグワーストだった。得点は513でリーグ2位。加えて、得点に結びつく盗塁は102でリーグトップなんだよ。それとは裏腹に、失点は得点を大きく上回る556でリーグワースト。いかに「投手力の立て直しが必要か!」ということがよく分かる。

 今季の西武は予想外の5位へ転落した。先発陣に目を向ければ自身初の2ケタ勝利(10勝5敗)を挙げている今井達也が、大きな成長を見せた。今季から先発に配置転換された平良海馬も、やはり初の2ケタ勝利(11勝7敗)をマーク。さらに高橋光成が3年連続2ケタ勝利(10勝8敗)を挙げている。

 2ケタ勝利を挙げた投手3人のほかにも、今季プロ2年目を迎えたサウスポーの隅田知一郎が、2ケタ勝利にあと1つ足りない9勝(10敗)を挙げ、成長の跡を見せてくれた。

 西武に残された課題は、今季から平良がリリーフから先発へ配置転換され、増田達至も不振に陥ったことで「穴の開いた抑えに誰を抜擢するか?」。その一点に尽きる。もちろん今季の低迷の大きな原因の一つに、攻撃の核だった山川穂高が不祥事によって、開幕直後から出場停止になったこともあるのは言うまでもない。

 2年連続最下位へ低迷した日本ハムは、巻き返しを図る主力組の秋季キャンプを本拠地・エスコンフィールドで行った。本来なら若手組が秋季キャンプを行い、一軍が春季キャンプを行う沖縄・国頭で徹底的に鍛えることがベストだったと思う。「11日間で、10万人を超える観客動員があった!」と大騒ぎしているが、秋季キャンプで「客寄せ興行」を行っているようでは、おそらく来季も期待できないだろう。

 とにかく、各球団の力が拮抗しているパの野球は「一寸先が闇」。どのチームにもチャンスがある。だから順位予想なんかできるわけがない。

 来季も俺たち“予想屋”泣かせのエキサイティングな野球を期待したいものだね。

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