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中国のチームと対戦して感じた驚き。初回にバスターエンドランを仕掛けてきた北京タイガース【伊原春樹の野球の真髄】

 

WBCでの中国代表[写真=Getty Images]


 11月27日、私がアドバイザーを務める茨城トヨペット硬式野球部が、中国野球リーグのチームである北京タイガースと練習試合を行った。11月に入ると、北京は寒さが厳しくなってくる。実技の練習もできないということで交流のあった取手市が龍ヶ崎市にある施設を紹介し、11月中旬から約2週間、キャンプを張っていたのだそうだ。

 チームからは今春に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の中国代表に5、6人が選ばれたという。どのような野球を行うか興味を持って見ていたが初回、北京タイガースの先頭打者が中前打で出塁。次打者は犠打で送ってくる可能性が高いと踏んだ投手は慎重に1球目を投げボール。そして2球目、ストライクを取りにいった球を打者はバントの構えからヒッティングに切り替えるバスターエンドラン。とらえた打球はレフト線にはずみ、無死二、三塁とチャンスを拡大した。

 三番は三振、四番は投ゴロ、五番は三振で無得点に終わったが、例えば“アメリカ式”なら、無死一塁からとにかく打ちにいく形になっていただろう。しかし、そこでバスターエンドラン。「細かい攻撃を仕掛けてくるんだ」と少し驚きを覚えた。

 とはいえ、実力差は如何ともしがたい。一番から五番までは何とか茨城トヨペットの投手に対応できるが、下位打線はきりきり舞いにさせられてしまう。投手も5人がマウンドに上がったが、だいたいストレートの球速は135キロから138キロ。マックスは140キロに届くか届かないかくらいだ。さらに、コントロールが悪い。5人で計11四球を与える苦しいピッチングに終始していた。

 スライダー、フォークといった変化球も投じていたが、ワンバウンドした際、キャッチャーがしっかりブロックできない。後逸するシーンが何度も見られた。

 結果は9対3で茨城トヨペットが勝利を飾った。実力的に言えば、北京タイガースは社会人のクラブチームくらいのレベルのように感じた。北京タイガースの選手は全員、国家公務員。国から給料をもらいながら欠かさず練習を行っている。シーズン中は週1、2試合を行い、それ以外では国際試合に向けて代表で活動しているそうだ。ただ、WBCの東京ラウンドで中国は日本に1対8、チェコに5対8、オーストラリアに2対12、韓国に2対22。4戦全敗で敗れ去っている。アジアの中でも取り残されているのが現状だろう。

 大谷翔平を中心としたWBCでの侍ジャパンの活躍に刺激を受け、中国でも徐々に野球は盛り上がってきているという。北京でも少年野球の大会が増えてきているそうだ。しかし、大きな問題点は指導者不足。野球をきちんと教えられる指導者が足りないことがレベルアップを阻害している。北京タイガースの監督は台湾人が務めていた。中国と台湾の関係には政治問題があるが、スポーツには関係ない。野球の底辺拡大のためにも中国に良質な指導者が増えることを望む。

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