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【インタビュー】北の大地を翔ける・山崎福也(オリックス→日本ハム) さらなる成長のために「もっと成長したいと思っている自分がいる。そのことをピンポイントで言ってもらえたのは大きかった」

 


成長の余地


ストーブリーグ、FA戦線の最大の目玉――。特集のスタートは6球団による大争奪戦の末、北の大地に新天地を求めた左腕の言葉からお届けしよう。FA権を手にしたという事実を自信に変え、日本ハムで「選手として完成する」ことを誓う。
取材・構成=杉浦多夢 写真=矢野寿明、BBM

 11勝をはじめとするキャリアハイの成績を残してリーグ3連覇に貢献した先発左腕がFA宣言をしたとなれば、大争奪戦に至るのは必然だった。愛着のある球団を飛び出し、北の大地での新たなチャレンジを決断したのは、「まだまだ伸びる。チームと一緒に、選手として完成していく」という思いが一致したから。31歳で迎えたプロ野球人生最大の転機を、さらなる成長のきっかけとする。

──12月6日に入団会見を行いました。日本ハムの一員になるという実感は湧いてきましたか。

山崎 入団会見でエスコンフィールドの施設もいろいろ見せていただき、契約もして。そして今日(取材は12月中旬)は鎌ケ谷にも来させていただいて。少しずつ実感は湧いてきているんですけど、まだ完全に、ではないですね。やっぱりユニフォームを着て、いろいろやっていく中でファイターズの一員になったという実感が湧いていくんだと思います。

──入団会見ではユニフォームにも袖を通し、似合っているように感じました。

山崎 ファイターズブルーの青の感じがすごく良かったですね。これからもいい感じでユニフォームを着ることができそうです(笑)。

──あらためて日本ハムへの移籍を決断した理由を聞かせてください。

山崎 父(山崎章弘氏、元日本ハムほか)が在籍していたという縁もありますし、北海道は僕自身、中学3年で脳腫瘍の手術をして命を救ってもらった場所でもあります。2022年オフにオリックスから移籍した寅威(伏見寅威)さんもいますし、尊敬している金子さん(金子千尋、ファーム投手コーチ)もいる。たくさんの縁があります。ただ、本当の最後の決定打というか、グサッと来たのは、吉村さん(吉村浩、チーム統括本部長)に「このチームと一緒に、僕(山崎)という選手を完成させていこう。まだまだ伸びるから、完成されていない投手だから」と言ってもらえたこと。本当にうれしかったです。

──23年はキャリアハイと言える成績でしたが、自分でもまだ完成されていない、成長の余地がある、と。

山崎 まだまだ満足していませんし、野球人生の中でもっと成長したいと思っている自分がいるので。そのことをピンポイントで言ってもらえた、というのは大きかったですね。

──23年の成績がFA宣言をするという決断のきっかけになったのでしょうか。

山崎 一つの大きな自信にはなりました。それもあって、ほかの球団の自分に対する評価を聞いてみたいなと思いましたし、FA宣言をしたいなという気持ちになりました。

──自ら決断したこととはいえ、9年間を過ごしたオリックスを離れる寂しさもあったのでは。

山崎 もちろん、その気持ちもありますし、ファンを含めて球団にはすごく感謝しています。

──背番号は「18」になります。「11」への思い入れはあったと思いますが、交渉で話が出たりはしたのでしょうか。

山崎 いやもう、ファイターズにとって「11」が永久欠番的な背番号なのは僕も分かっていたので、こちらからも何も言いませんでした。でも、本当に素晴らしい番号を準備していただいたので、感謝しかないです。これからは自分自身で「18」のイメージをつくっていけるように、「18番の山崎」と言ってもらえるようになっていけたらなと思います。

──外から見ていた日本ハムにはどんなイメージを持っていましたか。

山崎 確かに23年シーズンは最下位のチームだったんですけど、敵としては何か不気味というか、若い選手も多くてこれから強くなっていくんだろうな、というのはひしひしと感じていました。投げていても怖い選手がたくさんいますし、2、3年後にはどうなっているんだろう、どれだけ強くなるんだろうと思っていたので、そういうチームに入ることができたのはうれしいですね。

──一方でオリックスとはライバルとして戦うことになります。

山崎 どこが相手であっても変わりはないんですけど、やっぱり楽しみは大きいです。首位打者を獲った頓宮(頓宮裕真)とか、ラオウさん(杉本裕太郎)とか、いいバッターがたくさんいるので。本当に、みんなに放りたいですね。

──あらためて日本ハムのファンに見てもらいたい自分の武器、特長は何でしょうか。

山崎 テンポの良さだったり、緩急だったり、そのための変化球だったり。そういったところをファンの方には見てもらって、僕自身のピッチングを楽しんでもらえたらなと思っています。

緩急を使ったテンポの良い投球で北海道のファンも魅了するつもりだ


──その上で、吉村本部長の言葉にもあった「成長の余地」はどんなところにあると感じていますか。

山崎 体の強さだったり、体の使い方やバランスも含めて弱点はたくさんありますし、もっと伸ばせるなというイメージを持っているので、そういう点でもっと成長できるのかなというふうに思っています。それが真っすぐだけでなく、変化球の切れを含めてすべてにつながっていくと思います。

FA移籍のプレッシャー


 契約額の大きさもあってFA移籍には大きな注目が集まる。プレッシャーもリスクもある。だが、自身はその事実を前向きに捉えようとしている。そして新天地の指揮官は、そのことを踏まえた上で「野球、楽しもうね」と声を掛け、左腕の心を解きほぐした。北の大地のファンのためにも、さらに向上した姿で24年シーズンへ向けてスタートを切る。

──23年シーズンにキャリアハイの成績を残せた一番の要因は何でしょうか。

山崎 変化球のパターンというか、自分自身も意識した部分がありますし、キャッチャーの若月(若月健矢、オリックス)といろいろ話しながら、配球面でも今までになかった感じの手応えがありましたね。もちろんトレーニングも重ねてきましたし、僕自身もレベルアップしている実感はあるので、そうしたことが重なった結果かなと思います。

──一方、対左打者の被打率.202に対し対右打者は.290でした。

山崎 対右のほうが打たれている、ということですか? そういうデータとして悪いところは良くしていきたいですし、いいところは伸ばしていきたいですね。

──今の口ぶりだと、右打者に対して苦手意識があったりするわけではないのですね。

山崎 今までは右打者のほうが投げやすさがあったので、そこは気にしていなかったですね。23年シーズンは結果的に打たれてしまっていた、という感じです。

──その上で24年シーズン、さらにレベルアップさせたい部分は。

山崎 やっぱり、しっかりと真っすぐを投げ込んでいくことですね。コースを突ける制球力もそうですけど、変化球にはある程度の自信があるので、真っすぐが良くなれば良くなるほど、変化球が生きてきますから。

──24年の目標のひとつに規定投球回という言葉がありました。やはり長いイニングは意識しますか。

山崎 長いイニング、投げたいですよね。そこを一番の目標にして今後はやっていきたいと思います。

──23年はキャリアハイの130回1/3でした。

山崎 全然、足りない。恥ずかしいですね(苦笑)。ちゃんと投げ続けて、規定投球回を投げられるようになりたいです。

──入団会見以外で新庄剛志監督とは何かお話をされましたか。

山崎 入団会見が終わったあとに食事へ一緒に行かせていただいて、いろいろとお話をさせていただきました。その中でも「野球、楽しもうね」と言っていただいて。「FAという立場で入ってきて、いろいろプレッシャーがあるかもしれないけど、全然いいから。気負わなくていいよ」と言ってもらって、そこは本当にちょっとすっきりしましたね。そういう言葉を掛けていただいたことで、ファイターズというチームでやっていくイメージも湧いてきましたし、うれしかったです。

新庄監督[右]から掛けられた言葉はFA移籍のプレッシャーをやわらげるものだった


──FA移籍というのは契約額の大きさもあって注目度が高まります。やはりプレッシャーを感じていたのでしょうか。

山崎 これまでにFA権を獲得した選手は、ましてやFA宣言をして移籍した選手は、誰もがそういうプレッシャーがあったと思います。でもFA権は誰でも獲れるものではないので、逆にFA権を獲れたんだということに自信を持って、これからプレーしていきたいです。移籍することでいろいろ環境も変わりますし、何かルーキーのような気持ちで入っていけているので、それはそれでいいですね。

──ご家族との生活も含めた環境も大きく変わります。

山崎 移籍するということはいろいろなリスクがありますし、不安はやっぱりゼロではないですけど、そこにしっかり向き合って過ごしていけたらいいなと思っています。

──新庄監督からはエスコンF開幕戦(4月2日、楽天戦)の先発に指名されました。意気に感じたのでは。

山崎 本当に聞いていなくて、自分にとってもサプライズだったんですよ。でも、すごくうれしいですね。寅威さんとのバッテリーだということなので安心感もあります。やっぱり移籍して、チームに知っている人がいるというのは心強いです。


──最後に24年シーズンへ向けた意気込みを聞かせてください。

山崎 もちろんチームとしては優勝。そこを目指してやっていくしかないです。その中で個人としても、もっと向上していきたいし、規定投球回や防御率といった自分の力で操作できるところをもっと良くしていきたい。勝ち星は欲しいですけど運に左右される部分もありますし、そこばかり意識するとダメになってしまうので。いずれにしても移籍1年目ということで、ファイターズのファンの方たちにしっかり覚えてもらって、応援していただけるように、いい成績を残せるよう頑張っていきます。

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