週刊ベースボールONLINE

ストーブリーグで投手を大量補強し主役に躍り出た巨人。現役ドラフトで獲得した馬場皐輔は最大の掘り出し物だ!【堀内恒夫の悪太郎の遺言状】

 

巨人が現役ドラフトで阪神から獲得した馬場は最大の掘り出し物かもしれない


3日間で2件のトレードが成立。阪神の背番号18には大きな魅力


 2023年シーズンのオフも、ストーブリーグの火が燃え盛った。

 その中でも、特に23年シーズンはリーグ優勝を逃して、Bクラスの5位へ転落したヤクルトが、ストーブリーグを熱く燃え上がらせて、戦力補強に余念がない。

 楽天から23年限りで戦力外となった通算332盗塁をマークする西川遥輝と、ソフトバンクから同じく戦力外通告を受けた中継ぎサウスポーの嘉弥真新也を獲得している。

 さらに同じくソフトバンクから、23年限りで戦力外通告を受けている若手有望株の増田珠を獲得する早業を見せてもいる。増田は24歳。強い手首から放たれる長打が売り物だから、まだまだ伸びしろの十分ある好素材だと思うけれどね。

 報道によると、新外国人投手の獲得にも「積極的に参戦している!」と伝えられている。23年オフのヤクルトはV奪回へ向けた意気込みを感じさせてくれるね。

 順位はヤクルトより1つ上だが、23年は2年連続Bクラスの4位へ低迷した巨人も、ようやく重い腰を上げて、必要不可欠なピッチャーの補強を行うようになった。

 23年10月26日に行われたドラフト会議では、1位と2位に即戦力として期待できそうな中大の本格派・西舘勇陽と、ホンダ鈴鹿のサウスポー・森田駿哉を続けて指名している。5位には日本生命のサウスポー・又木鉄平を指名。支配下で指名した5選手の中で3人が投手だからね。チーム全体の危機感が伝わってくる指名選手の内訳だった。

 ドラフト後の11月6日には外野手のアダム・ウォーカーと、ソフトバンクのアンダースロー・高橋礼泉圭輔の1対2のトレードを成立させている。

 さらに返す刀で、同8日にはオリックスから150キロを超えるリリーフ投手の近藤大亮を獲得した。巨人からの交換選手はなく、近藤は金銭トレードでの移籍だと推測されている。

 わずか3日間で2件のトレードが成立。しかも、3人の投手を獲得できたわけだからね。23年オフの巨人はヤクルトを押しのけてストーブリーグの主役の座に躍り出たというわけだよ。

 極めつきは、23年12月8日に行われた現役ドラフトで、阪神から中継ぎ投手の馬場皐輔を獲得したこと。

 馬場は18年に仙台大からドラフト1位で入団した阪神のエース候補だったからね。背番号18を着けて、プロ6年間で106試合に登板、7勝4敗22ホールド、防御率3.49の通算成績を残している。

 23年は18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一に輝いた「阪神投手王国」の陰に隠れて19試合登板、2勝1敗3ホールドの成績で終わっている。だが、150キロを超える真っすぐには威力があるし、フォークボールも見事に使い分けることができる。中継ぎには打ってつけの人材だが、緩急の使い分けもうまいから、抑えとしても期待することができるだろう。23年の現役ドラフトで指名されたピッチャーの中では、馬場が超大物の掘り出し物ではないかと思う。

 馬場が「阪神投手王国」の中で仕事にあぶれていたといっても、「何か問題でも起こしたのではないか?」と穿った見方をしてみたくなる。それほど、阪神の背番号18は魅力にあふれているということだよ。

 その阪神は現役ドラフトで、オリックスからプロ5年目になる真っすぐとフォークが武器の漆原大晟を指名した。1年前にソフトバンクから獲得してチーム最多となる12勝(2敗)を挙げた大竹耕太郎に続く“二匹目のドジョウ”を狙っていることは間違いない。だが、今回に関して言えば、漆原よりも巨人が獲得した馬場のほうが潜在能力では上をいくのではないかな。

 23年の現役ドラフトでは、馬場のほかにもオリックスが鈴木博志中日から獲得。さらにDeNAが、ロッテでは故障もあって伸び悩んでいた佐々木千隼を獲得している。

 12球団の指名選手の中で3人が過去にドラフトで1位に指名されたピッチャーだからね。22年オフから行われている現役ドラフトは、大竹やDeNAから中日へ移籍して24本塁打を放ち、外野の定位置を獲得した細川成也の23年の活躍が示すとおりに、いまや“掘り出し物”を発掘する“見本市”の様相を呈している。

鍛錬に勝る勝利の方程式はなし! 日本一の岡田阪神の貪欲さを学べ!


 話題を巨人へ戻したい。先発投手で24年も確実に2ケタ勝利を期待できるのは、わずかに戸郷翔征1人だけ。23年のシーズン最終戦でプロ初の2ケタ勝利(10勝5敗)を挙げた山崎伊織にしても、2年続けて2ケタ勝利を挙げることができて初めて、「計算できる先発ローテーションの一角」として認められることになる。だから、24年の山崎伊には真価が問われているということになる。

 23年は6勝(5敗)を挙げた外国人サウスポーのフォスター・グリフィンと、5勝(5敗)のヨアンデル・メンデスは、24年も「フタを開けてみなければ分からない!」。先発ローテーションの一角として、確実に計算できるピッチャーではないからね。

 23年シーズンに5勝(5敗)を挙げた赤星優志も、コントロールはいいんだから、あとは「投げ込んで力をつける!」ことに取り組んでもらいたい。だから赤星は23年11月に開催された侍ジャパンのアジアプロ野球チャンピオンシップに出場している場合ではなかったんだよ。宮崎で行われていた秋季キャンプに最初から最後まで参加して、とことん走り込みと投げ込みに取り組んでもらいたかったと思う。山崎伊に至っては秋季キャンプに参加すらしていないからね。

 日本一に輝いた阪神の岡田彰布監督がアジアプロ野球チャンピオンシップに出場していたルーキーの森下翔太を見て、いみじくも語っていたじゃないか。「一番練習して鍛えなきゃいけない選手が試合に出ている!」とね。そのくらいテーマを絞ってチームづくりに取り組んでいかなくてはいけないということ。

 悔しいけれど、「アレ」の次に「アレンパ(アレ連覇)!」を目指すチームの指揮官が語る言葉には、やはり説得力があると感服させられた。

 巨人は、新たにチームをつくり直さなくてはならない。1979年に長嶋茂雄監督が行った「地獄の伊東キャンプをやれ!」とまでは言わないけれど、現状維持のままではチームを再生することはできないからね。

 赤星をはじめ、23年シーズンは4試合に先発して0勝(1敗)と結果を残せなかったサウスポーの井上温大に、16試合に先発登板したものの4勝8敗と負け数が上回ってしまったやはりサウスポーの横川凱なども、もっと鍛えなくてはいけない素材なんだけれどね。

 巨人はここ数年間、「良ければすぐに一軍へ上げて、ダメなら即二軍へ落とす!」という、まるで選手を使い捨てに扱うような原辰徳前監督が残してしまった「負の遺産」を、まず払拭しなければならない。

「鍛錬に勝る勝利の方程式はなし!」

 巨人は、この言葉を念頭に意識改革に取り組んでもらいたいと思う。日本一を勝ち取っても、なお貪欲に勝ちにいこうとする岡田監督の危機意識を、もっと学んでもらいたいね。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング