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【インタビュー】ソフトバンク・近藤健介 新たな自分、新たな土台「ある意味、野球人として“変わった”1年」

 

求めたのは長打率


WBCから始まった長いシーズン、一度も離脱することなく、中心となって打線を引っ張った


2022年オフのストーブリーグを賑わせた話題の男は、新天地に移籍すると、1年目から度肝を抜いた。持ち味を生かしながら、新境地も開拓。“ソフトバンク近藤健介”は、どれほどの選手なのか――残した成績の数々が、それを示している。
取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、BBM

 環境の変化を苦にする様子はなかった。それどころか、これまで以上の力を発揮。気がつけば、試合数、本塁打数、打点、長打率など、主要打撃部門でキャリアハイを更新。惜しくも三冠王には届かなかったものの、自身3年ぶり3度目となる最高出塁率(.431)に加え、本塁打王(26本)と打点王(87打点)は自身初。ベストナイン(外野手部門で3年ぶり2度目、ほかに指名打者部門で2度受賞)に、ゴールデン・グラブ賞(初受賞)にも輝いた。周囲だけでなく、近藤健介自らも「数字、タイトルを見たら出来過ぎかな、と」と素直な感想をこぼすが、日々の積み重ね、努力の証しであることは間違いない。

――移籍1年目は、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)から始まる長いシーズンでした。

近藤 終わってみたら、あっという間ですね。WBC、もう9カ月前ですか。そんな感じがしない。本当に春から、一瞬だった気がします。

――2023年は、近藤選手にとってはどんな1年でしたか。

近藤 ある意味、野球人として変わった1年だったと思います。プロの世界に入ってきてチームが変わって、それに伴っていろいろと。そして、これからまた一つひとつの目標だったり、自分の土台というのは新たにつくっていくことになる。自分の思い描いている目標というのを設定しながら、一歩ずついけたらなと思っています。

――レギュラーシーズンでは、目標にも掲げていた全143試合に出場して、本塁打王、打点王、最高出塁率のタイトルを獲得しました。

近藤 打撃面において、まだまだ改善点はありますけど、こういう賞を獲ることができて、1年間、ケガなくやってこられて良かったなと思います。

――3つのタイトルの中で、一番うれしいのはどのタイトルですか。

近藤 やっぱり最高出塁率じゃないですか。そこはもう本当に、毎年狙っているところでもありますし。『打率3割、出塁率4割』というところは、必ず求められると思うので。そういう中で、しっかりやってきた結果、ホームランや打点もついてきている、と僕は思っています。本塁打が何本とか、何打点とか、そこにこだわったり、執着はしてなかったので。それも良かったところかなと思いますね。

――22年12月の入団会見のときには「11年間やってきた自分のスタイルを全うしたい」と話していました。実際はいかがでしたか。

近藤 やっぱり11年間、積み重ねて、ファイターズでやってきたことは、もちろん土台になっています。でも、移籍して新しくホークスというチームの一員として試合に出続ける中で、また新たな自分としては長打率だったりというところを、より求めるようになりました。

――長打率自体は、ここ数年、意識してきたところでもあります。それが23年シーズン、こうやって大きな成果として現れた要因は何だと思いますか。

近藤 一番はやっぱり、(ホームランテラスのある)PayPayドームになったところだと思いますね(笑)。正直、そこはすごく感じています。とはいえ、それだけではなくて、やっぱり継続してきたからこそ。長打率を求めるといっても1年やってすぐにできる、結果が出ることでもないと思うので。3年前、東京オリンピックのころぐらいから、自分が思って取り組んできたことが今、ちょっとずつ形になっているのかなと思います。

――5月終了時点で打率.247、5本塁打、25打点。三振は39と、選球眼に長けた近藤選手にしては多さが目につきました。しかし、6月は月間打率.342、6本塁打、17打点。出塁率.474に長打率.697と、見事なまでの修正能力です。

近藤 5月ぐらいまでは、打球の角度を高くというイメージを持っていたんです。それを、もう少しライナー性のイメージをするようになってから、いい方向にいった。一概に弾道を上げるとかじゃないんだ、というのも分かりました。やっぱり、強い打球を打っていくというのがヒットにつながる。その延長線でホームランにもつながったのかな、と。

――レギュラーシーズンの最後は『三冠王』というところも、注目を集めました。自身、意識はしましたか。

近藤 もう本当に、全然ないですね。

――それでも、10月9日の最終戦(オリックス戦=京セラドーム)、首位打者の可能性が消えたときには、試合中にもかかわらず、みんなからは見えないところでかなり悔しがっていたそうですね。

近藤 本当に最後、ですね。なんて言うのか、1年やってきて最後の最後に狙えるところまで来たら、もちろん狙いたいという思いがありました。ただ、シーズンを通じて常にタイトルを意識しているのかと言われたら、そうではないです。

リーグトップの26本塁打に並んだ一発は、10月9日の最終戦[オリックス戦=京セラドーム]の9回、レギュラーシーズン最後の打席で。0対4という劣勢の中、集中力を切らさなかった


――狙ってはいなかったにしろ、逃して悔しさが出るということは、24年以降の原動力にはなるのではないかと。

近藤 もちろん。タイトルは獲りましたけど、数字的にはまだまだ満足はしてないところもありますし、そこは自分の求めるところに、より近づけるように、というところです。

より良い形を突き詰めて


――ホークスに来て約1年がたちましたが、自分自身に関して何か新しい発見があったりしましたか。

近藤 発見というか、やっぱりこれだけホームランが増えて、打点を稼いでということになると、これが今後に向けての“土台”として見られると思います。『ソフトバンクの近藤健介は、これぐらいの成績は残してくれるんだな』と。そこに関するプレッシャーは、これまで感じたことがないものになると思いますね。

――見る人の目が変わる、と。

近藤 ホークスファンにとっては、まだ1年目ですからね。まあ、土台というものは、プロ野球選手である以上、常についてくるもの。日々、試行錯誤しながら、より高いものを、とは思っています。

――本塁打に関しては、24年シーズンは「30本」が期待されています。

近藤 ホームランにしても、より高いものを。ただ、本数というよりも、やっぱり長打率だったりを、もっともっと上げていきたい。そのためにどうしていきたいかは、これからしっかり、24年に向けてやっていかないといけないところかなとは思っています。それで30本いければいいのかな、と。

――小久保裕紀新監督は「50本ぐらい、いくかもしれない」と期待を寄せていました。

近藤 50本は無理かなと思いますけど(笑)。本当に数字というよりは、チームが勝つ1本を。その点、ホームランは1人で点が取れるので。多いに越したことはないですが、まずはしっかり、チームの勝ちにつながる打撃が大事ですね。

――本塁打に限らず、あらゆる面で23年を上回って、ということですね。

近藤 もちろん。それは毎年、思っていることですし、23年が正解とも思っていないので。今後、より良い形を突き詰めていきたいなと思います。

――小久保新監督の下で、チームは新しく生まれ変わります。注目ポイントはどこになりますか。

近藤 正直まだ小久保さんの野球というのは分からないんですけど、野球に対して体現するのが僕ら選手。早く監督の考えを理解して、監督が思い描いている野球に近づけるようになればいいのかなと思います。

――近藤選手自身、楽しみなところはあったりしますか。

近藤 監督が変わると、チームが変わる。“どうなっていくのか”は僕自身、楽しみですね。未知数というか、無限の可能性がある。

――その中で、24年シーズンの個人の目標としては?

近藤 どうですかね。やっぱり『打率3割、出塁率4割』じゃないですか。

――そこは変わらないわけですね。

近藤 そうですね。その上で、全試合出場というところも。そこも土台になっていますし。

――23年シーズンにクリアできたことで、手応えも感じているのでは?

近藤 ある程度、この時期に疲れがきて、コンディション的にこんな感じなんだなと分かる部分もあるので。そこはケアとかも大事にしながら、143試合出たいなと思います。

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