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野球教室での風景を見て感じたこと。懇切丁寧に指導する館山昌平監督の資質は十分あり【伊原春樹の野球の真髄】

 

現役時代の館山。さまざまな経験が今に生かされているように感じた[写真=BBM]


 12月3日、東京・東伏見にある早大野球部の安部球場で西東京市、小平市、東久留米市で活動する小学5、6年生を対象にした野球教室が行われた。主催は西東京市にあるタクトホーム株式会社。同社の小寺一裕社長と面識があり、私も当日、顔を出すことになっていた。

 小寺社長は日大藤沢高出身。今回の野球教室をプロデュースしたのは、小寺社長の高校の後輩にあたる元ヤクルト館山昌平だと聞いていた。安部球場のそばに同社があり、朝9時に会議室に集合ということで私も行き、部屋に入った。すると、そこには楽天今江敏晃監督、浅村栄斗清宮虎多朗、ブルペン捕手の横山徹也、そしてヤクルトなどでプレーした坂口智隆の顔があった。

 館山は2019年限りでユニフォームを脱いだが20、21年と楽天で二軍投手コーチを務めていた。その縁で今江監督らに声を掛けたのだろう。さらに本当は清宮ではなく、岸孝之が参加する予定だったと聞いた。岸がプライベートで都合が悪くなり、どうしても駆けつけることができなくなって、代わりに若手のホープが参加することになったのだそうだ。

 しかし、「館山さんのためなら」とこれだけの人材が顔をそろえたことは、館山の人望を物語る。大したもんだと思っていたが、館山は教えるのも非常に上手だった。投手を担当していたが、例えば野球少年のピッチングを見て「君の素晴らしい点はここ」とまず褒める。その後、「もっといい投手になるには、ここをこうしてみたほうがいい」とアドバイスを送る。

 さらに、しっかりと自分で手本を示す。野球少年はまだ変なクセがないから、館山のアドバイスを素直に受け入れ、すぐに修正してしまう。見違えるほどいいボールを投げるようになると、すかさず館山は「みんな拍手!」と言って選手のやる気を促していく。一人ひとりに対して懇切丁寧に教える指導力は私もうなるほどだった。

 館山は2009年に16勝を挙げて最多勝を獲得するなど、現役通算85勝をマーク。サイドスローからスライダー、シュートなど多彩な変化球を投げ込み、打者を抑え込んでいくピッチングは絶品だった。私は07年から10年まで巨人ヘッドコーチを務めていたが、対策困難なピッチャーの一人であった。

 その一方でたび重なるケガに苦しんだ。右肘じん帯の再建手術3度をはじめ、手術を受けたのは計9度。体には175針の縫い跡が残ったという。だが、何度でも這(は)い上がる不屈の精神や知識を蓄えてトレーニングやリハビリと向き合ってきたからこそ、指導する側に回ったとき、それが大いに生かされているのだろう。

 野球教室も始まりから終わりまで、滞りなく進んでいった。これも館山の手腕だろう。先に述べたとおり、今江監督が駆け付けるなど人間力も十分にある。私は何人もの監督やコーチを見てきたが、館山も監督の資質を十分に備えていると感じた。もっともっと勉強していくことも必要だろうが、いつの日か監督としてチームを率いる姿を見てみたい。

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