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選手は必要とされる場所で輝きたい。ソフトバンク移籍の山川穂高。2024年は必ず打棒が爆発する【伊原春樹の野球の真髄】

 

12月19日、ソフトバンク入団会見を行った山川[写真=湯浅芳昭]


 最後まで神妙な顔つきは変わらなかった。12月19日、ソフトバンクが国内FA権を行使した西武山川穂高の獲得を発表。同日、入団会見が行われたが、山川は冒頭から「一連の不祥事で西武ファン、球団に多大なる迷惑を掛けました。お詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪し、晴れ舞台を祝う華やかな雰囲気は一切なかった。

 23年5月に自身の不祥事が発覚。8月に不起訴処分となったが、9月4日に西武から無期限の一、二軍公式試合出場停止処分を科されていた。23年は17試合の出場に終わり、チームも5位と低迷。リーグワーストの435得点と攻撃力が乏しかったことが、浮上できない要因だったが、山川不在が痛かったのは間違いない。

 西武は山川に対して2023年の推定年俸2億7000万円から減額制限を超える40%以上のダウン提示をしたと報じられたが、おそらく山川もこれは納得済みだと思う。それは成績を考えれば一目瞭然だ。なにせ、まったく戦力として働いていないのだから、大幅ダウンとなるのは当然のことだろう。

 山川の心中を慮ると、迷惑を掛けた西武にまず残留したい気持ちもあったのだろうと考えられる。あらためて1年、しっかりと四番として結果を残して、チームに恩返しをする。それで、例えば優勝に貢献するような活躍を見せれば、ファンもまた納得しただろう。そして、また自身の去就を熟考する。それがベストシナリオだ。

 だが、不祥事があった年に移籍。山川は口に出すことはないだろうが、その決断に至ったのは、やはり西武球団から「残留してほしい」という熱意が感じられなかったことが大きかったのだろうと思う。

 プロ野球選手は繊細だ。交渉を重ねることで、そういったことは敏感に感じ取るものだ。例えば私が2度目の西武監督に就任した13年オフ、涌井秀章(現中日)と片岡治大(現保幸)がFA権を行使して、最終的に移籍の道を選んだ。監督としては大きな戦力ダウンで痛かったが、のちのち聞くと交渉の中で「出て行ってもらっても構わない」というようなニュアンスを感じたというのだ。そうなると、選手は「本当に必要とされているのか」と疑心暗鬼に陥って、チームを去ることに心が傾いてしまう。

 山川は会見の中で「三笠(三笠杉彦)GMとお話しした中で、『絶対に優勝したい』『一緒に頑張りたい』『戦力になってください』と強く言っていただいたのが一番の決断理由になります。それが大きな理由でございます」と語ったが、それは本音だろう。やはり、選手は必要とされる場所で輝きたいものだ。

 バッシングを承知の上で移籍を決断した山川。「野球で結果を出して許してほしいとは思っていない」とも語ったが、成績不振に終わればさらに冷たい視線にさらされてしまう。もともと野球に対しては真摯(しんし)な強打者だ。その覚悟は相当なものだろう。私は24年、山川がソフトバンクのV奪回へ爆発的なバッティングを見せてくれると思う。

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