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2024年は巨人・岡本和真に新たな覚醒を期待する! 球界の顔にふさわしい言動と態度を見せてもらいたい!【堀内恒夫の悪太郎の遺言状】

 

岡本には巨人だけでなく日本球界を代表する選手としてさらなる覚醒を期待したい


世界一に輝き「最高です!」連呼。小バカにされたことが許せん!


 2024年シーズンに巨人はV奪回へ向けてどのような化学反応を起こすのか。阿部慎之助新監督は、2年連続Bクラスの4位へ沈んだチームをどう立て直すのか。

 その中で俺が最も気になるのが、主砲・岡本和真の存在だ。

 23年シーズンは41本塁打、93打点、打率.278の好成績を残した。自己最多となる41本塁打と6年連続30本塁打を放ち、自身3度目の最多本塁打のタイトルを獲得している。巨人で6年連続30本塁打をマークしたのは、世界のホームランキング・王貞治さんと松井秀喜以来だからね。しかし、王さんは40本塁打以上を13度、そのうち50本塁打以上を3度も記録している。松井もMLBに行くまでに40本塁打以上を3度、そのうち1度は50本塁打だ。

 だから、岡本が王さんや松井の域に到達するためには、まだ多くのハードルをクリアしなければならないことは確かだ。とはいえ、いまの岡本が日本プロ野球を代表するバッターであることは間違いない。

 だが、俺はそんな岡本に大いに不満を持っている。だから、新たな覚醒を求めて、あえて言わせてもらいたい。

 まずは、「君は巨人の顔なんだから、それにふさわしい言動と態度を見せなさい!」ということ。

 俺が一番ガッカリしたのは、23年3月に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準々決勝のイタリア戦(東京ドーム)に、9対3で勝利を収めたあとのヒーローインタビューだった。3回に貴重な追加点となる3ランを放った岡本が、アナウンサーからマイクを向けられると、“バカの一つ覚え”みたいに何を聞かれても「最高です!」「最高です!」と連呼したこと。

 以前にも、俺はこのコラムで書いたけれど、本当に暗澹たる思いに駆られたよ。

「最高です!」は、阿部監督が現役時代に使っていたフレーズだからね。とはいえ、阿部は「最高です!」と言って球場内を盛り上げたあとで、必ず心に刺さるセリフを残していた。

 それに引き換え、岡本は「いったい何を考えているんだ!」と誹謗中傷されても不思議ではない。野球世界一を決める大舞台でも、子どもじみた言葉しか残していないではないか。

 さらに侍ジャパンが世界一に輝き、凱旋帰国したときに空港で行われた記者会見は、俺の暗澹たる思いにさらに追い打ちをかけたことは間違いない。

 司会のアナウンサーが、「岡本さんにも一言!」とマイクを向けたときに質問を聞き返し、金屏風の代わりに後方に座っていた日本代表のコーチたちから「クスクス」とバカにしたようなせせら笑いが聞こえてきたではないか。「こいつら、いったい何を考えているんだ? バカにするのもいい加減にしろ!」と言いたくなった半面、岡本には、世界一という偉業にふさわしい厳かなムードを醸し出してもらいたかったと思うね。

 いくら何でも「日本プロ野球の顔」なんだからさ。話し始める前から、「何か面白いことでも言うのではないか?」と笑いを誘っているようでは情けない限りだ。

 24年シーズンから指揮を執る阿部監督には、いつまでたっても「球界の顔」にふさわしい自覚と品格が伴わない岡本を、しっかりと教育し直してもらいたいね。

 さらに俺は「岡本よ、たとえ打てなくても落胆するな!」と苦言を呈したいと思う。

「凡打しても、ガックリと肩を落としながらベンチへ帰ってくるな!」。岡本が意気消沈していたら、「いったい誰が相手投手を攻略するんだ!」と言ってやりたくなる。

 俺の現役時代に長嶋茂雄さんが、甲子園球場で行われた試合で、「いやあ、今日の江夏(江夏豊)は打てないよ!」と言いながらベンチへ帰ってきたことがあった。

 そうしたら、監督の川上哲治さんにこっぴどく叱られてね。

「何を言うか! お前には日本一の給料と日本一の待遇を与えているんだ。それなのにお前が『お手上げだ!』と言うのなら、誰も打てないだろ! そんな言い方をしてしまっては、士気に影響する!」と、ものすごい剣幕で怒鳴られている。

 そうしたら、さすが長嶋さんだよ。次の打席で、江夏から見事なホームランを放った。指揮官の一喝で、アドレナリンが脳内を駆け巡り、逆襲を果たしたというわけだよ。

 だから、俺は岡本にも「お前がガックリと肩を落として帰ってきたら、ほかの選手も打てなくなるぞ!」と喝を入れてやりたくなる。

座禅を組んで俗世の垢を落とせ! 山の空気を吸って心身を清めよ!


 23年シーズン後半から、岡本はサードではなくファーストを守るようになった。そして、24年シーズンから本格的にファーストへコンバートされることが決まっている。

 この決定に俺は反旗を翻したい。その理由は、数年後に岡本にはMLBへ挑戦してもらいたいからだよ。日本で自分を安売りすることはない。先の見えているベテランにサードのポジションを譲る必要はないからね。

 22年シーズンまで三塁手部門で2年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得した岡本の守備力なら、MLBでもサードの定位置を獲得できるはずだよ。MLBのファーストには身長2メートル、体重100キロ級の長距離砲がひしめき合っているからね。

 岡本は、24年シーズンからドジャースへ移籍が決まった大谷翔平のように「10年間で1000億円」の大型契約とまではいかなくとも、MLBで大金を稼ぐことも可能だ。

 23年から岡本は巨人の第20代キャプテンを襲名している。「地位が人をつくる!」と言うではないか。それにふさわしい態度と発言力を身につけてほしいね。

 あらためて岡本は日本プロ野球を代表するサードベースマンだ。たとえ阿部監督から「ファーストをやれ!」と言われても、「いや、僕はサードで自分の野球人生をつくり上げます!」と反論してほしかったね。また、反論できる立場にいることを自覚してもらいたかったと思う。

 だからこそ、岡本にはもっと野球道を追求してもらいたいね。

 いっそのこと、山へ籠って座禅でも組んできたらどうだろうか。山へ行くと空気が違うからね。野球界という雑踏の中で生きてきた人間は、山の澄んだ空気によって心が洗われることは間違いない。

 俺もプロ5年目のシーズンが終わり、それなりの成績は残していたけど、まだ目標とするシーズン20勝を達成したことがなかった。だから、翌1971年1月に、俗世の垢を落とすために故郷・山梨の身延山にある日宗の寺へ籠ることにした。朝5時からご住職の松本学昭さんの読経に付き合いながら、「少欲知足」という言葉を学んでいる。

 欲少なくて足ることを知る──。

 この言葉は俺の座右の銘だよ。身延山へ籠るようになって2年目の72年シーズンに、キャリアハイの26勝(9敗)の好成績を挙げることができた。

 24年に岡本は、節目のプロ10年目を迎える。プロ野球という雑踏を生きてきた岡本は俗世の垢を落とすために、俺の故郷・山梨の寺へ籠ってみてはどうか。よかったら俺が紹介状を書いてやってもいいからさ。

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