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【インタビュー】ソフトバンク・柳田悠岐 高いパフォーマンスを求めて「年齢を理由に自らのノルマを下げることはない」

 

また自分を見直して


タイトルはもちろん、9年ぶりの全143試合にも柳田のすごさを感じる


 就任2年目も、キャプテンは頼もしかった。新加入した近藤健介とともに全143試合に出場して、打線をけん引。ヒットを重ね、35歳という年齢を感じさせない活躍ぶりだった。それでも、柳田悠岐自身には悔しさが残る
取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、BBM

35歳を迎えても、周囲はその打棒に大きな期待を抱く。その期待を力に、球界屈指の強打者は進化を続ける。2023年シーズンはリーグで最も快音を響かせた。ただ、今の自分に、決して満足はしていない。

――3年ぶりに最多安打のタイトルを獲得しました。

柳田 タイトルを獲れたのはうれしいですが、チームは優勝を逃しましたし、個人的には納得のいかないシーズンが続いている。頑張らないといけないですね。

――具体的にどこが足りないと感じているのでしょうか。

柳田 どれも、ですね。やっぱり若いころに比べたら……全然打ててないという感覚なので。年齢のせいなのか、それは分からないですけど、いい成績を残したときもあるので、それが基準になっていると思うんですよ。僕もそうだし、球団の方も、ファンの方も、もちろんそうだと思います。

――自分に求められる基準が高くなっていると感じている、と。

柳田 それはもう、ずっと。

――明確に意識するようになったのは、いつごろからですか。

柳田 トリプルスリーを達成したとき(2015年)から、ですかね。

――重圧とも戦っているわけですね。

柳田 いや、それは、そんな大して戦ってないですよ。より良いパフォーマンスを出せるように、準備はしているつもりなんですけどね。それでも、こんなもんで終わってしまう。また自分を見直して、やっていきます。

――まだまだ、過去の自分を超えていきたい、と。

柳田 年齢を理由に自らのノルマを下げることはない。もっといい数字を残したいですね。それでダメだったら試合にも出られないと思いますし、クビになる世界なので。もちろん、それに打ち勝てるように準備したいなと思います。

――「納得のいかないシーズンが続いている」とのことですが、23年シーズンは全143試合に出場。柳田選手にとっては、実に9年ぶりのことです。このこともタイトル獲得につながった要因の一つではないかと思います。

柳田 充実はしています。その分、疲れますけど。まあ、23年の場合はDHもたくさんありましたしね。そこはすごく自分に気を使ってくださった首脳陣の方々のおかげだと思っています。24年は、そうやって気を使われないように。若い選手に負けずに動けるような体をつくっていきたいなと思います。

――143試合のうち67試合が指名打者での出場でした。

柳田 (24年シーズンは巨人から)ウォーカーも来るので、守備も増えると思う。それは分かっているので、守れるように考えて、今はトレーニングをしています。

野球をゼロにしない


――シーズン通じてコンスタントに安打が出ていたように思いますが、好不調の波はありましたか。

柳田 ありましたよ。やっぱり、いいときもあれば、悪いときも。

――月間成績で見ると、一番打率が低かった6月でも89打数23安打で打率.258。調子の悪さが数字上に表れないというのは、やはり経験、対応力の高さからではないかと。

柳田 いや、そこは分からないですけど(笑)。いいときもあれば、悪いときも、もちろんあったので。そのいいときを、より長く、よりたくさん続けられるように、というのは、ずっと思っています。

――23年シーズンより、近藤健介選手が加わりました。1年間、前後を打ち、近藤選手も打撃タイトルを獲得(本塁打王、打点王、最高出塁率)。近藤選手が入ったことによる変化というところは、柳田選手は何か感じたりしましたか。

柳田 特に技術的な部分ではないんですけど、野球に取り組む姿勢がとにかくすごい。いろいろな練習方法など、そういうところは普段から見てすごく勉強になりましたね。

――35歳になってもタイトルが獲れるということは、柳田選手自身が年齢を重ねる中でも進化しているからこそだと思います。進化し続けられる理由は?

柳田 どうですかね、進化しているかどうかは分かんないんですけど。でもやっぱり、ずっと野球のことは考えるようにしています。

――それはシーズン中は、ということですか。

柳田 いや、シーズンオフでも、です。野球以外のことに使う時間も多いんですけど、それでもやっぱり、少しの時間は野球に使って。基本的に、野球をゼロにすることはないです。

――それは以前から?

柳田 いやいや、30代になってから、ですかね。20代のときはオフは野球から離れて、自分の時間、休むことを大事にしていましたが、変わりました。

――何か変化があったのでしょうか。やはり、現役生活を長く続けるために、というところも影響しているのでしょうか。

柳田 どうですかね。長くしたいとも思ってなかったんですけど。でも、高いパフォーマンスを出したいという気持ちから、なのかな。やっぱり、ある程度“継続”していたほうが、いいパフォーマンスが出るのかなとは思いますね。

――チームは3年連続でリーグ優勝を逃しています。V奪還のために、柳田選手は何が必要だと考えますか。

柳田 何が必要か……やっぱり若い選手の台頭と言いますか、えげつない成績を残す若手が出てきてほしいですよね。今回(11月に行われたアジアチャンピオンシップ)の侍(ジャパン)に選ばれる選手もいませんでしたし、そういう元気のある若い選手が、どんどんとチームを引っ張っていったら、また一つひとつ順位が上になるんじゃないかなと思います。

――新生ホークスには不可欠な要素ですね。ファンも待ち望んでいます。

柳田 24年はファンの方に優勝を届けられるように。僕自身、若い選手に、自分に負けないように。キャプテンじゃないので、めちゃくちゃしたろうかなと思っています。背中で引っ張っていけるようにいいプレーをして、優勝できるチームに貢献したいです。

2024年は「キャプテンではないので、めちゃくちゃしたろうかな、と」。柳田の“めちゃくちゃ”が頂点に導く


――柳田選手自身は小久保裕紀新監督の下で変わっていくチームに、どのような楽しみを持っていますか。

柳田 楽しみというのは正直、分からないですね。シーズンが始まったら、毎日、野球がある。戦いだと思うので。そこに楽しみはないのかもしれません。また戦わないといけない。

――個人的な目標というところは、いかがですか。

柳田 やっぱり『試合に全部出て、優勝する』、それだけです。

――そうすれば、タイトルというところもまた、ついてくる、と。

柳田 獲れればいいですけど、一番はやっぱり全部、試合に出たいですね。これからもあと数年は、全試合というところを目標に頑張ります。

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