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漆原大晟、長谷川威展、馬場皐輔に高い期待。心動かされる現役ドラフトで移籍した選手たちの飛躍【伊原春樹の野球の真髄】

 

現役ドラフトでオリックスから阪神に移籍した漆原[写真=太田裕史]


 2024年はいきなり災難に見舞われる年明けとなった。1月1日の夕方、石川県能登半島を最大震度7の大地震が襲った。私は能登半島に縁がある。ここ何年か、石川県羽咋郡志賀町富来にある「湖月館」という旅館へ7、8人の仲間と泊まりに行っているのだ。ご主人の息子さんが東洋大で野球部に所属していた縁。地震が起こるたびに連絡し、「私たちは大丈夫です。でも、義援金だけは受け付けます(笑)」と冗談を言っていたが、今回はそんなわけにはいかない。家族で避難所生活を送っているそうだ。そのほかにも大変な目に遭っている方は大勢いるだろう。被災された方々には心からお見舞いを申し上げたい。

 このようなときに、スポーツは何ができるのか。やはり、一生懸命なプレーを見せて、人々に感動を届けることだろう。

 例えば昨年12月末に行われた全国高校女子駅伝。仙台育英のアンカーが2位・神村学園と1分20秒差でタスキを受け取った。しかし、神村学園のアンカーが猛追。ゴールがある陸上競技場に入った時点で60メートル差くらいだったが、そこからさらにグングン追い上げ、ラスト100メートルを切ったところで並び、最後は1秒差で逆転V。あきらめずに最後まで走り切った神村学園のアンカーは見事だった。

 1月2、3日の箱根駅伝でも断トツの強さを誇っていた駒大に対して青学大が強さを見せ、王座を奪回。青学大のランナーの走りには、ワクワクさせられっぱなしだった。

 シーズンインはまだ先だが、野球界も負けてはいられない。熱い戦いを見せなければいけないだろう。例えば現役ドラフトで移籍した選手だ。昨年はソフトバンクから阪神の大竹耕太郎が12勝、DeNAから中日細川成也が24本塁打。不遇をかこっていた選手が飛躍する姿は、人々の心を動かすだろう。

 昨年12月にも現役ドラフトが行われたが、今回も羽ばたくことが期待できる選手は何人かいる。まずはオリックスから阪神の漆原大晟だ。一時はクローザーとして期待された右腕。150キロ超の直球にフォーク、カーブ、スライダーなど変化球もキレがある。昨年は16試合の登板に終わったが、それはオリックス救援陣のレベルが高過ぎるからでもあるだろう。十分に一軍で力を発揮できる能力は兼ね備えている。

 日本ハムからソフトバンクの長谷川威展も面白い。昨年は一軍では9試合の登板で防御率1.08。イースタンでは8勝を挙げて最多勝を獲得している。スリークオーターから変則気味に投じる左腕。ほぼ直球、スライダーで相手を抑える。ソフトバンクは嘉弥真新也(現ヤクルト)を戦力外としたが、彼に代わる左腕リリーバーとして戦力になるだろう。

 そして、阪神から巨人馬場皐輔。2018年入団のドラフト1位右腕だが、馬場も漆原と同じく強力な投手陣の中で出番が減っていた。躍動感あふれるフォームから150キロ超の直球、スライダー、カットボール、フォークを操るが、リリーフ陣に泣いた巨人では貴重な戦力となるだろう。

 彼らの“逆転野球人生”が、プロ野球を熱くしてくれるはずだ。

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