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頼れる先輩と、その背中「比嘉さんはお母さん、平野さんはお父さん。優しいジャンルが違いますが、見習う部分は同じなんです」【宮城大弥の一生百錬 僕が僕であるために】

 

比嘉さん[写真右]と平野さん[左]のお二人のスゴさの一つにメンタルの強さがある。連投もある中継ぎというポジションで、仮に打たれても絶対に下を向かない。そんな姿も見習うべき点だと思っているんです


笑顔になるオーラ


 年末年始は沖縄に帰省しましたが、気持ちはシーズンへ。コラム3回目(2023年9月11日号)で書いたように、今年の自主トレも一人で日々鍛錬を積んでいきます。

 ごあいさつが遅れました。皆さん、あけましておめでとうございます。今年も優勝できるよう、そして日本一になれるよう頑張りますので、応援していただけるように腕を振っていきます。

 オリックスに入団して今年で5年目。本当にいろんな方に支えられてきました。僕一人の力では一軍で結果を残すことができなかったと思うのは、チームの雰囲気が良いと感じるから。やりやすい環境を監督、コーチ、そして先輩たちがつくってくださったんです。『オリックスに入団して良かった』と思うことが、『このチームで勝ちたい』という思いを生んでいる。僕の座右の銘『一生百錬』も、自分一人のためでは決してないんです。

 やりやすい環境をつくってくれる先輩方。チーム最年長(今年12月で42歳)の比嘉(比嘉幹貴)さんもめちゃくちゃ優しい先輩で。同じ沖縄出身ということを知っていたので、「興南高校から入団しました宮城大弥です」とあいさつに行かせていただいたときから優しくて。「分からんことがあったら何でも聞いてね」と。文字では表現できませんが、イントネーションも、沖縄の独特な感じで、初対面からすごく優しく、親しみもある感じを出していただけて。そんな『沖縄』を感じさせてくれるのが、僕にとっては親しみやすく、心地よさも覚えるんです。

 比嘉さんは15年目で大阪に長く住んでおられるのに、全然イントネーションが変わらない。今では僕も関西弁にも慣れましたが、入団して大阪に来た当初は、関西弁や大阪弁の口調を少し強く感じていたんです。

 そんなとき、沖縄特有の口調を聞くと、やっぱり落ち着いて。沖縄にいるときは普通に聞いて、自分も話していたのに、関西弁の生活の中で、あらためて沖縄特有の口調を耳にすると、『温かいな』と思うことも多かったんですよね。

 シーズンを過ごす中で比嘉さんと一緒に過ごす時間も長くなり、良いピッチングをした日は「ナイスピッチ!」と絶対に声をかけてくれる。寄り添ってくれる先輩で、たとえ登板の結果が悪くても「大丈夫」と。僕だけではなく、誰に対しても優しい比嘉さんが怒っているのを本当に見たことがないんです。まあ、イジられているのは見ますけど(笑)。でも僕は、絶対にイジりません!!

 比嘉さんはとにかく『雰囲気が優しい』。なんと言うのか『優しいオーラ』がすごく出ているんですよ。皆さんも分かりますよね? だから、一緒にいると自然と笑顔が出る。しんどい練習をして、1日疲れても、比嘉さんと話をすると、自然と頬が緩む。優しいオーラを浴びるから僕も優しい気持ちになる。鍛錬を積む中で安らぎを与えてくれる先輩がいるのは、本当にありがたいことなんです。

冗談とカレーパン


 比嘉さんに限らず、先輩たちは皆、本当に優しい。でも、優しさのジャンルが皆、違うんですよね。比嘉さんの優しさは、お母さん的な感じで。ちなみに、お父さん的な優しさなのが、平野(平野佳寿)さんです。包み込んでくれる比嘉さんに対し、平野さんは『守ってくれる、どっしり構えている優しさ』。時には優しい冗談を交えてくれるから、平野さんの言葉の裏にはいつも『思いやり』を感じるんです。直接的な表現はしないというか……こんなこともありました。

 昨年の6月のロッテ戦(27日=京セラドーム)でのこと。僕が先発して8回無失点で1点リードのまま降板し、9回表に平野さんが同点打を浴びてしまいました。9回裏に森(森友哉)さんのサヨナラ本塁打で勝つことができましたが、僕個人の勝利がなくなってしまったことに対し、平野さんが僕にこう言ったんです。

「今までいくつもセーブしてるからな」

“借りはあるぞ”的な感じの言葉は、平野さんの思いやりの声かけなのは分かっています。平野さんだからこそジョークを交えてくれる。もちろん、僕も自分の勝ちが消えたことを気にしていませんでしたが、その後にロッカールームで平野さんに会うと「これ食えよ」と言われたんです。手に持っているものを見ると、カレーパンでした(笑)。「これで許して」と冗談交じりの言動が、やっぱり平野さんらしいなって。そういうところが、何かお父さん的な優しさなんですよ。

『比嘉さんはお母さん』『平野さんはお父さん』と表現すると、お二人に怒られるでしょうか(笑)。でも、僕の中でもイメージはそんな感じなんです。

 もちろんピッチャーとしても学ぶ部分は多くある。比嘉さんが今年で42歳、平野さんが40歳。僕も40歳になってもバリバリ一軍で投げていたい。お二人の姿が理想なんです。年齢を重ねても活躍できる理由は何なのか。そういう目でお二人を見ることもありますが、共通しているのが準備の入念さ。お二人ともアップが始まる前から柔軟などを念入りにされている。実は僕も、昨年から「準備を大切にする」という意識で取り組んでいて。時間をかけてストレッチをしたりしています。きっと、お二人も若いころから続けてこられたこと。だから40歳になってもバリバリで投げているんだろうなって。僕も今のうちから、しっかりと準備を大切にしていきたいと、あらためて思わせてくれたのが、お二人なんです。

 40代まで一軍で活躍できるのは、いろんな積み重ねがあるからこそ。だから僕は『一生百錬』を座右の銘にしているんです。先輩の姿から学ぶことは多くある。ピッチャーの先輩だけでなく、野手の方も……と、誌面が尽きましたので、次回に先輩野手2人のお話を。皆さん、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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