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新人合同自主トレがスタート。一番期待する新人は西武・武内夏暉 プロで成功する左腕の鉄則を持つ【伊原春樹の野球の真髄】

 

新人合同自主トレで汗を流す武内[中央。写真=川口洋邦]


 張り切っている表情を見ると、こちらの表情も自然と緩んでくる。と同時に、老婆心ながら「無理をし過ぎるなよ」と心配な思いも浮かび上がってくる。12球団の新人合同自主トレがスタート。ルーキーたちはキャンプに向けて、厳しい練習に打ち込んでいる。ただ、どうしても気を付けてほしいのはケガ。アマ時代とは違い多くの報道陣、ファンの視線の前でトレーニングを行うが、知らず知らずのうちに力が入ってしまう。

 新人合同自主トレ初日を視察した西武松井稼頭央監督は「プロの世界でまだユニフォームを着ていませんけど、練習の中でしっかりと慣れてほしい。リズムであったり、空気感であったり、しっかり慣れていくことが大事という話はさせてもらいました」と口にしていたが、そのとおりだ。まずは、プロのペースに慣れるということが重要だ。

 だから、練習を見守るトレーニング担当などが、オーバーワークさせないように、しっかりと抑えながらルーキーたちを導いていくことが大切になってくるだろう。以前も書いたことがあるが、私は新人時代の合同自主トレで大ケガを負ってしまった。ポール間走で、走路の途中に3、4人のコーチがいて、走ってきた選手に対してボールをトス。選手はそれをキャッチして、また走っていくというメニューがあった。私は「アピールしてやろう」と思ったのだろう、コーチが投げ損ねたボールに飛び込んで捕球を試みた。しかし、その際に左肩をひねって脱臼。キャンプを離脱し、二軍で実戦復帰したのは5月、一軍デビューは7月上旬と大幅に出遅れてしまった。悔やんでも、悔やみきれないプロでのスタートになってしまった。

 それにしても、今のルーキーたちは物おじせずに堂々としている。われわれの時代は記者の質問に対しても答えるのがしどろもどろになっていたものだ。度会隆輝(DeNA)は明るい性格で、報道陣に対しても堂々と応対している。度会はスイングスピードが速く、バッティングが魅力。1年目からプロに対応できるのではないかと期待している。

 ドラフト1位で8人の大卒投手が指名されたが、その中ではやはり3球団が競合した武内夏暉が抜群の成績を残すのではないかと思う。国学院大時代のピッチングを何度も目にしたが、やはりコントロールに優れているのが素晴らしい。最速153キロを誇る伸びのあるストレートも暴れない。狙ったところにしっかりと投げられる。それは変化球も同様だ。このコントロールを持っていれば自滅せずに、試合をつくるピッチングに終始できるだろう。

 さらに左打者の内角にも投げ切ることができるのが大きい。ツーシームやチェンジアップで懐をえぐる。左投手がプロで成功するためには、左打者の内角で勝負できることが大きな条件になると私は考えている。それを満たしているだけに、武内への期待は膨らんでいくのだ。

 果たして、1年目から一軍でどれだけ勝利を重ねるのか――。ただ、それもケガをしてしまったらおしまいだ。とにかく、元気な体でキャンプを過ごし、開幕を迎えてもらいたい。

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