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まずは個人成績を伸ばす!「個人成績を伸ばしつつ、チームプレーの回数を増やすことで、チームの勝ちにつながっていく」【近本光司の認知を超える】

 

自分の可能性はまだある


沖永良部島での自主トレで、いい感じで体を仕上げてキャンプインしました[写真=BBM]


いよいよキャンプイン。阪神は連覇を目指すシーズンとなる。虎の中心選手である斬り込み隊長には、気負いがない。まずは自分のことをやり抜く。新しい打撃フォームにも取り組みながら、シーズンを迎える。それが連覇につながると信じて。
写真=BBM

 コラムを読んでもらっているときは、すでにキャンプインしているときでしょうか(笑)。発売が1月31日ですよね。明日キャンプインだ、と思いながら読んでもらっている方も多いかなと思います。

 個人的には鹿児島・沖永良部島での自主トレの序盤で、すでに2024年用の体は仕上がっていました。それをどうキープしてキャンプインするのか、もしくはキャンプで一度落としてから、開幕まで上げるのか……そのあたりは考えながら調整をしていきます。

ウエート・トレもしっかりを負荷をかけて、思いどおりの体に仕上がってキャンプインとなりました


 昨年は18年ぶりのリーグ優勝に38年ぶりの日本一まで達成しました。チームとしての仕事は、優勝したことで果たせたと思っているんです。だからこそ、今年は個人成績をしっかり伸ばしにいこうかな、それでもいいのかな、と考えています。

 周囲からは「連覇」とよく言われます。でも、まず「優勝」を目指すことのほうが大事かなと。日本一直後にこのコラムでも書きましたが、もう一度優勝を目指し、それが達成できたときに「連覇」になるんですよね。個人的には「チームのために」というプレーをするのではなくて、個人成績を伸ばすことでチームを引っ張っていきたい、という気持ちが非常に強いです。その意味では、自分がシーズン中にやることが少し変わるだろうし「自分の可能性」にかけて、やりたいと思うことをやっていきます。もし、個人成績を追いかけた結果、成績が悪くなっても仕方ないかな、と(苦笑)。

 自分の可能性はいくつかあるな、とは感じています。現状ここでお話できるのは、成績の部分ですね。もう少し「長打」を増やしたいな、と。そこはただ単に本塁打を打ちにいく、長打を狙いにいく、というような、一般的にイメージする、飛距離を伸ばす、ということではないんです。

 打撃パフォーマンスの再現性を高めていけば、飛距離は伸びていくのかな、と考えてオフにさまざまな取り組みをしています。

打撃では新しいことに挑戦していこうと思っています。まずは再現性を高めることで長打を打ちたいですね[写真=BBM]


 例えば、日本シリーズ第6戦の4回二死一、三塁の場面です。由伸(山本由伸)くんからライトへ飛球を打ちました。結果は、森(森友哉)くんにフェンス際でキャッチされました。あれは打った瞬間から、僕の中ではライトフライ、アウトだと思って走っていました。

 由伸くんの速い真っすぐ(157キロ)でしたが、バットの上をかすったんです。その打感だと甲子園では平凡なライトフライ。その感覚が身に付いているので、アウトかなと思いながら京セラドームではあそこまで飛んでいきました。今年はあの打球が、甲子園以外の球場でホームランになってくれたらいいな、という思いでいます。

 そのためにはパワーが必要だ、と思うかもしれません。そこは違うんですよ。体のちょっとした使い方のほうが大事になってくる。「ちょっと」を今までもやろうとは考えていましたが、試してしまうと体への負担も大きいのでこれまではできなかったんです。個人トレーナーの方々と話し合いをしながら「あっ、これだったらうまく使いやすいし、体に対する負担も少ないな」と感じる打撃を試行し始めました。キャンプイン直前の段階ではこの打撃を使っていこうと思っています。

トレーニングもしっかりとこなせた自主トレでした[写真=BBM]


 実戦が始まり、実際に強いボールを投げられたときに、どういう負担が体にかかるのかは分かりません。でも今の段階ではこの打撃はつかめているな、と感じています。どういう打撃なのかを説明しにくいですが、イメージでは、自分の中で1本のバッティングの軸がある中で、そこから違う枝が生えて、その部分を試行していく、という打撃となります。

 ただ、この先これがどうなるか分からない。今は、枝だと思っている打撃がシーズンに入り、軸になる(幹になる)可能性もあるので、そこを試しながら、打席に立っていこう、試していこうと考えています。

レギュラーの意味


 実は、そう思えるようになったのは話が前に戻りますが「優勝」したからです。どこかで「もう優勝したからいいかな。自分の打撃を求めようかな」と思えるからなんです(笑)。そういうメンタルでシーズンを迎えます。

 まず僕自身は、自分の打撃を思考し、試合で試して個人成績を伸ばしていく。チームのみんなも同じように個人成績を上げていけば、優勝にも近づいていくと思いますし、連覇となる。冒頭で書いたことに戻りましたが、そこにつながるのかなと思っています。

 何より、僕らは1度しか優勝していません。優勝に向けてのシーズンの流れ、ここは優勝するには大事な試合だ、というようなことはまだまだ経験しないと分からない部分もあります。プロ4〜6年目の若い選手が多いので、未知数な分、これから経験を積んでいくことで、もっと強いチームになっていけるかな、と思いますね。

 一方で、「優勝」「連覇」ということを考えるのは、僕ら選手ではないという思いもあります。そこを考えていくのは監督であり、フロントの方々。プレーヤーは、いかに自分の成績を伸ばしていくかのみを考えていけばいい。試合の中では、監督が勝つために場面、場面で進塁打、送りバント、盗塁などのサインを出す。それを僕らが勝つために個人プレーからチームプレーに切り替え、しっかり遂行していく。当然ですが、その監督の意図をくんで、試合を読み、プレーしていくことでレギュラーを勝ち取ることができますし、レギュラーとはそういうものなのかなと感じていますね。

 自分の成績というのはつまり、監督からの信頼の成績だと思うんです。あくまでも野球はチームスポーツなので、そこが大事になってくる。もう一度繰り返すと、個人の成績を伸ばすことはチームの勝利に貢献できます。その中で、勝つために監督のサインをしっかりと遂行する。個人成績を伸ばしつつ、チームプレーの回数を増やすことで、信頼を勝ち取る。その回数を増やすことで、チームの勝ちにつながっていく、という考えなんです。

 だから、今年はまず、自分が今やりたいと思っているバッティングを実戦で試しながら、個人成績を伸ばすのが目標になります。そして、チームの勝利のためにやるべきことをやっていけば「連覇」に向かっていけると思っています。

感謝の沖永良部島



 その気持ちを整え、体の仕上がりも手助けしてもらえるのが、今年で4年目になった沖永良部島での自主トレでした。なかなかシーズン中ではできないことがここではできるんです。島の人、子どもたちと触れ合うことで、心がリラックスできます。子どもたちと一緒に練習してみたり……今回は中学生の体育の授業に飛び入りで参加して、みんなと一緒にソフトボールをやりました(笑)。そうやって普段、大阪などでシーズン中できないことがここではできるので、僕のほうが力をもらうことができるんです。

沖永良部島でリラックスした時間を過ごすのも、またシーズンへの大きな活力になっています


 こんなことを言ってしまうと語弊があるのかもしれませんが、この自主トレの時期は、野球だけをやっていればいいのか? と思っているんです。成績を残すにはいかにシーズン中、自分と向き合うかにかかっています。その意味でこの自主トレ期間は野球以外のいろいろな経験をする時期だろうと。そして、多くの島の人と触れ合うことで、応援してくれるというパワーを僕自身がもらえているんです。

 沖永良部島に来て皆さんに「優勝おめでとう」と言われましたが、僕からしたら「(皆さんから毎年パワーをもらえて)ありがとうございます」という気持ちしかないんです。それでまた、僕自身が力をもらえる。今回もまた、頑張ろうと思いましたから。

島の方々とは、自主トレの合間に交流させてもらい、大きな力になっています


 そしてこれは阪神ファンに対してもそうなんですが、優勝したことで、周りが喜ぶ姿を見て、今まで以上に「何のために野球をしているのか」「何のために頑張れるのか」を強く感じたので、それをもっと形としてつくっていきたい。そして、皆さんが喜ぶ姿を、グラウンドの中から見られることを楽しみにしたいと思います。さあ、24年シーズンが始まります。

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