週刊ベースボールONLINE

【インタビュー】巨人・門脇誠 1ケタ番号の重み「1ケタ番号を着けたいという思いはあったけど、まさか1年でというのは考えていなかった」

 


驚きの背番号変更


それぞれに大きな期待を受け、その重みを感じながら、新たなナンバーを背に今季へ挑む男たちがいる。まずは2年目にして伝統球団の1ケタ番号を背負い、偉大な先輩からポジションを受け継いだ、ジャイアンツの遊撃の声をお届けしよう。
取材・構成=杉浦多夢 写真=桜井ひとし、BBM

 春季キャンプでひと際、ファンの目を引いている新たな背番号『5』。わずか1年で新人年に背負った『35』に別れを告げ、大出世を果たした。門脇誠自身にとっても大きな驚きとなった背番号変更。「ジャイアンツの1ケタ番号」の重みをかみ締めながら日々、汗を流している。

──背番号が『5』になったことで周囲の反響も大きかったと思います。

門脇 さすがにすごかったですね。いろいろな人に声を掛けていただきましたし、あらためて「5番なんだな」というのを感じました。やっぱり5番というのはそうそうたる方々が着けていらしたし、巨人の1ケタ番号というのは重みが違うので「2年目の選手が着けていいのかな」「普通に考えたらあり得ない話だな」とも思いながらキャンプを迎えましたね。

春季キャンプではスター軍団にあっても新背番号『5』がトップクラスの注目を集めている


──背番号の変更はいつ、どのような形で知らされたのでしょうか。

門脇 アジアチャンピオンシップの前に侍ジャパンが巨人と練習試合(2023年11月10日、SOKKEN)を行ったんですけど、その試合前に(吉村禎章)編成本部長に「5番を」という話をしていただきました。想像もしていなかったので「何かな」と最初は思ったんですけど、素直にうれしかったです。『35』を着け続けて、番号に自分のイメージを持たせるのもありかなと思っていたんですけど、やっぱり巨人の1ケタ番号というのはそんな簡単に背負えるものではないので。ぜひ経験したいと思って、ありがたくいただきました。

──驚きと喜び、最初はどちらが大きかったですか。

門脇 驚きのほうが大きかったですね。5番に限らずいずれ1ケタ番号を着けたいという思いはあったんですけど、まさか1年で、というのは考えていなかったので、驚きでした。

──背番号にこだわりというのはあったのでしょうか。

門脇 いや、なかったです。何番でもいい、と言うとちょっと言葉が違うのかもしれないですけど、それでもやっぱり「1ケタはカッコいいな」というのは心のどこかにありましたね。

──巨人の1ケタ番号を背負うことへのプレッシャーはありませんか。

門脇 やっぱり12月、1月の過ごし方は、いい意味で「やらなければいけない」というふうになれました。もちろん毎日、不安でしたけど、それをプラスにできたかなと思います。

──ジャイアンツの背番号『5』というとどんなイメージがありますか。

門脇 強打者のイメージですよね。すごいホームランバッターの方たちばかりなので、タイプは違うなと思います。ここから自分の色というか、将来は5番と言えば自分のような選手だというイメージをつけられるように。そんな選手になりたいなと思います。

近年の5番は清原をはじめ助っ人を含めた大砲たちの背中にあった


──球団の歴史をさかのぼると、生え抜きの背番号『5』は1996年まで着けていた岡崎郁さん以来となります。

門脇 自分で言うのもあれですけど、生え抜きで2年目から着けるとなるとカッコいいですよね。自分でつかみ取った番号なので、手放したくないです。

生え抜きで『5』を背負うのは1996年の岡崎以来となる


──1年目に着けた『35』に愛着は湧いていましたか。

門脇 割といい数字だなと思っていましたけど、1ケタには勝てないです。ジャイアンツの1ケタ番号には勝てない。

──今季から新人の泉口友汰選手が『35』を背負います。門脇選手のようになってほしいという球団の願いだと思います。

門脇 自分が1年前に35番を着けて新人合同自主トレをやっていたことを思うと不思議な感覚ですね。5番になって、1月にジャイアンツ球場へ来たときに、同じ『35』のゼッケンが見えて、不思議な気分というか、「今年もあるんだ」みたいな。でも学年で1つ上の先輩ですし、たくさん経験をされている方なので、学べることもたくさんあると思います。ライバル心もないわけではないですけど、自分がうまくなるために、そうしたことを糧にして前に進めたらなと思います。

自慢の守備もまだ向上の余地あり。自らの『35』を引き継いだルーキーの泉口[右]とも切磋琢磨していく


受け継ぐもの


 昨季、史上初の遊撃での2000試合出場を果たした坂本勇人が、9月上旬に三塁コンバートとなった。コンバートが実現したのは、圧倒的な守備力を備えた新人が遊撃のポジションを受け継ぐに値したからにほかならない。遊撃の座だけではない。いずれは「C」マークも継承するに足る選手になるために、周囲から信頼される選手を目指していく。

──高校時代、大学時代は何番を着けることが多かったのでしょうか。

門脇 高校時代はショートだったので、だいたい『6』を着けていましたね。大学では最初は『2』で、そこから『6』。最後はキャプテン番号の『1』でした。

──やはり『6』には愛着が。

門脇 いや、特になかったです。『2』は割と好きだな、と思っていたくらいで。数字にジンクスとかを感じるタイプではないんですよ。小さいころは地元が奈良だったので阪神の試合をよく見ていて、鳥谷(鳥谷敬)さんとかは見ていたんですけど、だからといって『1』にあこがれていたということもなかったですし。

──それでも高校、大学とキャプテンを務めてきて、「将来はジャイアンツでもキャプテンに」という言葉がありました。

門脇 そういう思いはあります。ずっとキャプテンをやってきて、なりたくてやっていたわけではないんですけど、一方で周りから信頼されるような選手になることができれば、必然的にそうしたチャンスがあると思います。だからプレーはもちろん、普段の生活や態度といったことも常に意識していきたいです。

──前キャプテンの坂本勇人選手から、キャプテンの前にまず遊撃のポジションを受け継ぐことになりました。

門脇 小さいころからテレビで見ていた方ですし、今でも一緒に野球ができているということが不思議な感じというか。正直、昨年からそんな思いがありました。でも、そんなことを言っている場合じゃないですし、「安心して任せられる」と言ってもらえるような、そんな1年にしていきたいです。

──あらためてルーキーイヤーを振り返ると、いかがでしたか。

門脇 最初は思うようにいかないことが多かったですけど、しっかり自分で考えて一つひとつ課題をつぶしていくことができた結果が後半戦の形だったと思うので、そこは自分でも非常に良かったかなと思っています。

──主に打撃面だと思うのですが、何かつかむきっかけがあったのでしょうか。

門脇 逆方向の意識ですね。そこから変わることができました。6月から7月のころだったんですけど、逆方向を意識することで自分のポイントが分かるようになってきて、そこが一番大きかったです。

──オフには先ほどもお話にあった侍ジャパンでの経験もありました。

門脇 同世代ですごい人たちが多い中で、やっぱりバッティング練習での飛距離とかも全然違いましたし、刺激になりました。でも、その中で自分の長所というのもしっかり出すことができたので、そこは崩さなくてもいいんだと思えましたし、逆にもっとレベルアップしていこうと思えた期間でした。

──今年の11月にはプレミア12が開催されます。意識はしますか。

門脇 いや、しないです。結果として出場できればいいですけど、今はまずジャイアンツで優勝したいということしか考えていないです。

──また侍ジャパンに選ばれたら、やはり『5』を着けたいですか。

門脇 そのときはお願いをしてみて、背負うことができればいいですけど。

『5』のイメージを変える


 阿部慎之助監督は早々と遊撃のレギュラーの座を明言した。だがそれでも、やるべきことに変わりはない。背番号『5』に見合う選手になるために、4年ぶりのV奪回を目指すチームの力になるために、ひたすらに努力を重ねていくだけだ。

──昨季を踏まえ、このオフからキャンプにかけてのテーマは何でしょうか。

門脇 トレーニング重視です。オフはバッティングにつながるようなトレーニングをいろいろやってきました。守備はしっかり体を動かす準備をしているので、バッティングのレベルアップというところが一番ですね。

遊撃の座を不動のものとするために打撃のさらなる進化は必要不可欠だ


──打撃で足りない部分というのは。

門脇 昨年は後半戦にレフトへのヒットが増えたんですけど、データを見ると長打が少なかった。しっかり振れるようにするということも忘れずにやっていかないといけません。そこを少しでも改善して、引っ張って強い打球を打つことができれば、また外のボールが増えて逆方向へヒットを打つことができる。広角に打てるように、というところです。

──打撃において技術的なポイントはどんなところでしょうか。

門脇 バットの出し方ですね。いろいろなバットの出し方を練習してきました。1年間、ずっと同じ打ち方で結果を出し続けるというのは簡単ではありません。いろいろな種類を持っておくことができれば、調子が悪いときでもバッティングの引き出しが多くなりますから。

──守備面については昨季に得た手応えと自信があるのでは。

門脇 不安がないわけではありません。逆シングルはちょっと多めに練習してきましたし、グラブもどの角度がいいかというのは自分なりに考えてやっています。握り替えも得意ではないですし、捕球の形もまだまだあまり良くない。昨年の侍ジャパンのときに井端(井端弘和)監督にいろいろお聞きして、イメージしながらやってきました。

──井端監督のアドバイスで心に残っていることは。

門脇 ボールを捕るときに背中がめちゃくちゃ伸びてしまうんですよね。だから、「ちょっと力を抜くくらいでいい」というのはすごく意識しています。井端監督がよくおっしゃっている「脱力」ですね。

──遊撃を1年間守るにあたって、やはり坂本選手はお手本になる存在ですね。

門脇 もちろんです。試合中でも練習中でも、ずっと見ておかないといけない方だと思いますし、見ているだけで得るものがある。そこは貪欲に吸収していきたいです。打球の予測もそうですし、やっぱりグラブさばきが全然違う。あれくらい試合中でも力を抜いてプレーできたらいいなと思います。

──阿部監督は門脇選手が遊撃のレギュラーだということを明言しています。どう受け止めていますか。

門脇 最初は「うれしいな」と思っていたんですけど、途中から「あんまり関係ないな」と思うようになってきて。レギュラーだと言っても、もし1カ月打てないのに試合に出続けることができるかと言ったら、もちろんそうじゃない。まだ2年目ですし、レギュラーということは意識せずにやっていこうと思っています。

──結果を出し続けていかなければならない立場ということですね。

門脇 結果だけにフォーカスすることはあまりしないようにしているんですけど、自分のやってきたことをどれだけ試合で出せるかということですね。アウトになっても、自分の納得できるバッティングでのアウトだったら、それでいい。そんな感じで入っていきたいです。

──全試合出場が目標の一つですが、体力面での手応えはいかがですか。

門脇 昨年は移動などで疲労がたまってしまっていました。ただ、自分がどうコンディションを整えていけばいいのかというのは後半戦から少しずつ分かってきたので、今年はそれを1年間、どれだけ自分に厳しくできるかというのが勝負だと思います。

──あらためてジャイアンツの背番号『5』に見合う選手というのは、どんなイメージでしょうか。

門脇 先ほども言いましたが、やっぱりファンの皆さんにあるのは強打者のイメージだと思います。一方で自分は何でもやらなければいけない、何でもできるタイプです。すべての試合で存在感があるとか、目立たなくてもいいんですけど、一方で絶対に必要だと言われるような存在であるべきだと思います。いろいろな球団で、同じ背番号でもいろいろなタイプの選手がいます。ただ、確かに『5』で自分みたいなタイプは少ない。だから、強打者のイメージを変えるくらいの、「5番と言えば門脇」と言われるようなプレーができたらと思っています。

──最後に個人として、チームとしての今季の目標を聞かせてください。

門脇 個人としては数字を求めてプレーしたくはないんですけど、数字を言うのであれば打率3割、フォアボールをチームで一番取って出塁率4割です。その上でゴールデン・グラブ賞を獲ることができればなと思います。チームとしてはもちろん優勝、日本一。今年こそは優勝しないとファンの皆さんも楽しくないと思います。選手たちだけじゃなくて、裏方さんを含めたチームのみんなで努力していきたいと思います。

■巨人の背番号『5』の変遷 ※選手名は着用最終年


PROFILE
かどわき・まこと●2001年1月24日生まれ。右投左打。171cm76kg。奈良県出身。創価高-創価大-巨人23[4]=2年。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング