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【インタビュー】ソフトバンク・大関友久 自分の心と向き合って「自分の気持ちに素直になってみて。前向きな、シンプルな思い」

 


2024年のテーマ


ホークスの左腕にとって『47』は特別な番号だ。ここから始まる新しいエース伝説を期待せずにはいられない。新しい背番号とともに、新しい自分も見つけつつある。楽しみなシーズンに向け、準備を進めていく。
取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、BBM

 4年ぶりのリーグ優勝、日本一に向けて、先発陣の奮起はなくてはならない。大関友久も、もちろんその一人だ。新シーズンに向けては、大関の中に変わることを求めている自分がいた。だから、左腕の背中には『47』。新背番号とともに、エースと呼ばれるような投手に──。気持ちも新たに、歩み出す。

──大関投手にとって、背番号が変わるのは2度目になります。1度目と何か違うことはありますか。

大関 自分で選んだという部分が強いかなと思います。

──背番号を変えたいというのは以前から思っていたのでしょうか。

大関 変えようかなと迷った時期はありましたね。でも、そのときは特に何かアクションを起こすわけでもなく、そのまま変えなかったんですけど、今年は変えることにしました。

──どうして今年は変えようと?

大関 何か特別なことがあったわけじゃないんです。今年でプロに入って5年目になりますが、ここでもう一度、気持ちを切り替えるというか。自分の気持ちに素直になってみて、少し気分を変えてみてもいいのかなと思いました。

──それで、今回は変えるという決断に至ったわけですね。

大関 どこかで「変えたほうがいい」と言っている自分がいたんですよ。だったら、「変えてみようかな」という、前向きな、シンプルな思いです。『42』は支配下になったときに着けさせてもらった番号なので、やっぱり愛着みたいなものもありましたしね。

──『47』を選んだ理由としては?

大関 左(投げ)でエースと呼ばれるようなピッチャーの方々が背負ってきた番号だったので。自分もそういう投手になれるようにと思って選びました。

──過去には工藤公康元監督や杉内俊哉さん(現巨人投手チーフコーチ)らが背負って、チームをけん引してきました。

大関 本当に小さいころでしたが、お二人のピッチングというのは記憶にはあります。子どもながらにすごいピッチャーなんだなというのは伝わってきました。工藤さんは年齢を重ねてもあれだけのパフォーマンスを見せられるというのは本当にすごいことだと父親がよく言っていましたし、杉内さんのほうは見ていてなめらかですごくキレイなフォームだなと思っていましたね。

ホークスの左腕エースとしての代表格である工藤公康[写真右]と杉内俊哉。ともに圧巻の投球で強いホークスを支えた


──『47』を背負うことで大関投手にもエースとしての期待が高まります。自身、どんな投手がエースと呼ばれる投手だと思いますか。

大関 投げたら勝ちそうで、実際に勝つピッチャーかなと思います。勝利に導くピッチングをするのがエース。なので、現時点での僕はまだまだです。

──エースになるためにどんなところが足りないと思いますか。

大関 単純に勝負強さだったり、足りない部分は一つではないと思いますね。シンプルなところでは、能力ももちろん足りていませんし。大事なところはいろいろとあります。

──どうやって補っていこうと?

大関 それも一つではありませんが、結局は自分が力をつける以外に方法はないかなと思っています。なので、力をつけることに集中してますね。

──力をつけるとは具体的には?

大関 本当に全部、必要だと思っているんですが、個人的な考え方で言うと、心技体ってあるじゃないですか。3つの中で何を一番大切にしているか、何をポイントに置いているかというところは、人それぞれ違っていたりする。僕自身もこれまで技術を磨いたり、体を磨いたりしてきましたが、自分の天性というか、自信があるところを究極に極めていくという作業をしないといけないなと思ったんです。そう思ったときに、僕の中では『心』の部分かなと。だから今、いろいろな知識を身につけた上で自分のメンタルをコントロールしたり、向上させていったり、考え方を変えていったりと、そういうアプローチをしてみようと思って、実際にやってみています。

──また新しいチャレンジが始まっているのですね。すでに手応えを感じていたりもするのでしょうか。

大関 感じていますね。今年のテーマは『心』。心に重きを置いてやっていきます。これまで一番に考えてきたことはなかったので。

自分のスタイルと方向性


 開幕投手から始まった2023年シーズンは、17試合に登板して5勝7敗に終わった。先発ローテーションを守って1年間戦い抜く難しさも味わった。昨季の経験、そしてオフシーズンの経験も生かして挑む新シーズン。自分の進むべき道は開けている。

自身初の開幕投手からスタートした2023年シーズンは悔しい1年に。今季、巻き返しを期す


──昨季については、悔しいシーズンだったと振り返っていました。どこが一番悔しかったですか。

大関 力不足というところですね。

──どのようなところで力不足を感じたのでしょうか。

大関 シーズン途中で思うようにいかなくなってしまう弱さ、です。自分の投球がしっかりしていないときがありました。

──その原因は? 何か気づいたことはありましたか。

大関 心がブレていたなと思います。

──そこで『心』につながってくるわけですね。

大関 そうですね。

──新シーズンに向けては、肉体的なところでも変化を求めました。オフシーズンはかなりハードなトレーニングで増量にも取り組んでいましたが、そこはどういう意図を持っていたのでしょうか。

大関 昨季が終わって何でダメだったのかと考えてみたときに、自分のパフォーマンスが1年間を通じてできなかったところが一番だなと。だから、まず体を強くしようと思ったんです。24年に向けて、何から始めたらいいかが自分の中でもはっきりしているわけではなかったので、体を鍛えてみるしかないな、と。その中で、気づいたこともたくさんありました。極めるべき一番大きいことが心だなというのも、実はその一つなんですよね。

──体を鍛えたことで違う視点、別の発見もあった、と。

大関 本気で鍛えようと思って、この冬、相当やりました。いろいろ考えて知識をつけてベストを尽くした。その結果、筋肉はしっかり、過去最高値までは戻ってきました。体重のコントロールの仕方を覚えたり、いろいろな収穫があった中で、新しい方向性も見えてきた感じです。

──やってみたからこそ見えてきたわけですね。

大関 そうなんですよね。今、プロに入ってから一番、楽しく過ごせているかなと思います。本当にやり始めて少ししか経っていないんですけど、自分のスタイルが見えてきて、手応えも感じている。方向性も明確に見えてきたなと感じていて、何かが足りないと思いながらやってきた今までとはちょっと違う感じです。

──また新しい大関投手が見られそうです。シーズンに向けては、まずは開幕先発ローテーションを目指していくわけですが、有原航平投手、和田毅投手が内定して残りは4枠。勝ち残るために必要なこと、重視していることはありますか。

大関 あまりそこは考えないほうがいいのかなと思っています。勝ち残るという考え方も持たなくていいのかなと。単純にいいピッチャーが順番に選ばれるというだけ。自分のベストを尽くして選ばれればよし、ですし、選ばれなくても受け入れるしかないという状況なので。

──ほかの選手は気にならないですか。

大関 気にしても仕方がない、という感じです。気にしてもプラスはないですね。自分のやるべきことをやるというのが、今は一番かなと思います。

──今、一番やるべきことはなんですか。

大関 それも一つではなくて。でも、自分がこういうピッチャーになりたい、このくらいの成績を残したいと思ったら、開幕ローテーションに入っていかないといけません。そのために、オープン戦でアピールしてくれと言われているので、オープン戦からしっかりアピールできるように調整するのが大事なことです。

大関にとって新シーズンに向けての本格的なアピールはオープン戦から。ブルペンで状態を確かめながら上げていく


──シーズンの目標としては、「規定投球回」と「2ケタ勝利」を挙げました。

大関 クリアできるように頑張ります。

──クリアするために必要なことは?

大関 それも一つではないと思いますね。いろいろとやることはたくさんあると思います。その中で、「ブレないこと」が一番かなと。

──その「ブレないもの」は、もう自分の中にあるのでしょうか。

大関 もう変えないと思っているところはあります。あとは、シーズンが始まってからどうなっていくか。ブレないように意識するのは初めてなので。しっかり1年間やっていきたいと思います。いいシーズンにしたいですね。

■ホークスの背番号『47』の変遷 ※選手名は着用最終年


PROFILE
おおぜき・ともひさ●1997年12月14日生まれ。左投左打。184cm94kg。茨城県出身。土浦湖北高-仙台大-ソフトバンク20育[2]、21途=4年。

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