
日米でファンを魅了する大谷。WBCを含め、今年はどのような活躍を見せてくれるのか[写真=Getty Images]
3連覇は1つの偉業
2023年がスタートした。プロ野球の“お正月”は2月のキャンプインとなるが、もうあと1カ月もない。選手たちもそうそうのんびりとはできず、体を動かし始めているころだろう。束の間のオフだったとは思うが、それがプロ野球選手の宿命だ。のんびりとするのはユニフォームを脱いでからでいい。時間はたっぷりとある。現役のうちは野球中心の生活を過ごすべきだ。
新年の一発目ということで、今回は今季のセとパの優勝チームを占ってみよう。開幕前には優勝から最下位まで順位をつけて予想したいと思うが、今回は優勝候補だけだ。
パ・リーグは
オリックスの3連覇と言いたいところだが、やはり
吉田正尚(レッドソックス)の抜けた穴は非常に大きい。打線の大きな柱が抜けたわけだから、吉田の穴だけではなく、打線全体にも影響が出るのは間違いない。これが強力打線が看板のチームだったら何とかカバーできるが、オリックスは言うまでもなく投手力を中心とした守りのチーム。吉田の不在、それによる得点力の低下は投手陣にも少なからず不安を与えることになる。
そのために
西武から
森友哉を獲得したのだという声が聞こえてきそうだが、吉田と森でプラスマイナスゼロというわけにはいかない。小柄で左打ちは同じだが、安定感で言えば吉田のほうが一枚も二枚も上。もちろん森も首位打者を獲ったことからも分かるように好打者だが、吉田と比べるとやや落ちる。さらに移籍1年目だ。同じパ・リーグとはいえ、新しい環境でどこまで馴染めるか。森もあまり吉田の穴をと意識せず、周囲も吉田のような役割を求めないことだ。
吉田が残っての森加入ならオリックスの3連覇は確実と言ってもよかったが、とはいえ優勝候補の1つであることは間違いない。そして私が考えるもう1つの優勝候補は
ソフトバンクだ。昨年はマジックを点灯させながら、最終戦に敗れて優勝を逃した。その悔しさは必ず残っているはずだ。ソフトバンクも
千賀滉大(メッツ)が退団となったが、もともと他球団がうらやむほどの選手層の厚さ。だからここはとにかく故障者を最小限に抑えることに尽きる。1勝の重みを知った
藤本博史監督も2年目に入り、非情な采配に徹してくるだろう。私の予想ではオリックスとソフトバンク、この両チームが現時点でのパの優勝候補だ。
次にセ・リーグだが、優勝に最も近いのは
ヤクルトだろう。投打のバランスが一番いいし、日本シリーズに敗れたことで、さらにモチベーションが高まったと思う。
本当は3年ぶりに
巨人と言いたいところだが、ヤクルトに比べると不安定な要素が多い。打線はともかく、投手陣も数はいるのだが、若手が多くて計算が立たない。以前は計算できたエースの
菅野智之も下り坂。いくら打線がよくても、やはり野球は投手力がものを言う。
私が気になるのは主砲の
岡本和真だ。三冠王を獲得した
村上宗隆(ヤクルト)に差をつけられてしまった感は否めないが、岡本にも村上に負けないだけの力はある。今季は50本塁打以上をノルマにしてもらいたい。そして本塁打王、打点王のタイトルを村上から奪還するくらいの強い気持ちを持つべきだ。巨人が優勝するには岡本をはじめ打線が爆発することが条件。よく打線が投手を育てると言うが、まさにそれだ。
昨年2位だった
DeNAの期待値は高そうだが、私の中ではだから今季も期待できるとは言い難い。それよりも楽しみなのは岡田
阪神だ。ヤクルト、巨人、阪神までをセの優勝候補と考える。
今年は久しぶりに宮崎の春季キャンプを訪れようと考えている。ここ数年は新型コロナ禍もあって現場に行くことは控えていた。やはり実際に行くことで感じることも多いし、関係者と話もできる。そこでまたあらためて開幕前に順位予想をしたいと思う。
過度な期待は禁物だ
日本人メジャーでは吉田、千賀が海を渡り、今季どれだけ活躍ができるか見物だが、
大谷翔平(エンゼルス)はどうか。一昨年は46本で本塁打王を争い、昨年は2ケタ勝利&本塁打(15勝&34本塁打)を記録。今季の活躍にも期待してしまうが、私はそうは簡単にはいかないと思う。二刀流の疲れも溜まってきているだろうし、今年で29歳を迎える。いつまでこの活躍を続けられるか分からない。もちろんそれなりの数字は残すとは思うが、過度な期待は禁物と言うことだ。
「三歩進んで二歩下がる」という歌があったが、つまりは常に前進し続け、いつもいつも順調にはいかないということだ。今年の大谷はそんな目で見ていきたい。もちろんこちらの期待をいい意味で裏切ってくれるのが一番だ。
そして3月になればWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が始まるメジャーで活躍中の大谷、
ダルビッシュ有(パドレス)、
鈴木誠也(カブス)らも参加を表明しているから、日本中が大いに盛り上がることは間違いない。
私は以前にこのコラムでも書いたようにWBC開催には反対しているが、出るからにはもちろん応援している。日本のプロ野球で育ち、お世話になった人間として、それは当然のことだ。張本のことだから、開幕直前の大事な時期にWBCに出るような選手には「喝だ!」と怒っていると思われている方も多いようだが、とんでもない。ОBとして「頑張れよ」と選手に声を掛けたいぐらいだ。
大谷も出る、ダルビッシュも出るということで、
栗山英樹監督も喜んでいることだろう。サッカーのワールドカップがあれほど盛り上がったのだから、今度は野球でと選手も意気込んでいるはずだ。しかしこれだけの豪華なメンバーがそろうとなると栗山監督も打順、ポジション、継投など起用に頭を悩ませそうだ。これぞ日本のベストメンバーを考えてもらいたい。もっとも、ベストメンバーをそろえたからと言って、必ず勝てるとは限らない。チームが一つにまとまって機能することができるかどうか。OBとして日本の世界一を応援したいと思う。
PROFILE 張本勲/はりもと・いさお●1940年6月19日生まれ。
広島県出身。左投左打。広島・松本商高から大阪・浪華商高を経て59年に東映(のち日拓、
日本ハム)へ入団して新人王に。61年に首位打者に輝き、以降も広角に打ち分けるスプレー打法で安打を量産。長打力と俊足を兼ね備えた安打製造機として7度の首位打者に輝く。76年に巨人へ移籍して
長嶋茂雄監督の初優勝に貢献。80年に
ロッテへ移籍し、翌81年限りで引退。通算3085安打をはじめ数々の史上最多記録を打ち立てた。90年野球殿堂入り。現役時代の通算成績は2752試合、3085安打、504本塁打、1676打点、319盗塁、打率.319。