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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「蓄積した材料を絶好のタイミングで」

 

4月13日の中日阪神[バンテリン]で同点の押し出し死球を受ける中島宏之。翌日、“死球談義”を交えた中日スポーツ・渋谷真記者のコラムは、蓄積取材が成せる芸当だった[写真=牛島寿人]


“どぐされ記者”と“激ペン”の番記者


 これまでに影響を受けたスポーツ新聞の番記者が2人いる。

 中学生のときに出会ったのは、“どぐされ記者”と呼ばれた、毎朝スポーツの宇賀神攻造(うがじんこうぞう)だ。新聞の名前からも分かるとおり、彼は実在の人物ではない。野球漫画『どぐされ球団』(竜崎遼児著、集英社刊)に登場する“仏のジンさん”――彼はプロ野球界きっての最古参記者だと紹介されていた。

 ある日の試合前、後楽園球場でバッティング練習をする王貞治に歩み寄ったジンさんは「よう、ワンちゃん、昨日はうまい酒をのめたかね」と語りかける。王はジンさんに「4の4でしたから、久しぶりにうまい酒がのめました」と応じた。すかさず「ご相伴にあやかりたかったもんじゃのう」と調子に乗ったジンさんの言葉を、王は「ジンさんと一緒にのんだ日には二日酔いで打てやしませんからねえ」と笑い飛ばしてみせる。

 すると、そこへ割って入った監督の長嶋茂雄が「ここんとこ姿を見せていなかったけれど、のみすぎて寝こんでたんでしょう」とジンさんを揶揄(からか)う。「わしが酒で寝こむとでも思ってたの? チョーさん」と拗(す)ねてみせるジンさんに、王が「じゃあ、どこかで老いらくの恋でも……」と畳み掛ける。「ひでえこと言うのお、ワンちゃんも」とジンさんは苦笑いを浮かべた。(『どぐされ球団』第4巻「どぐされ記者の巻」より)

 このやりとりを読んだ中学生は・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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