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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「熱い戦いの幕開け 無数にある夏の物語」

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甲子園[写真=BBM]を目指す夏の高校野球、地方大会が各地で開幕。“最後の夏”となる3年生たちは、それぞれの想いを胸にグラウンドに立つ


高校生にとっての“ひと冬”の重さ


 この夏も甲子園を目指す戦いが全国で始まっている。「負けたら終わり」の戦いが続く中、高校3年生の想いを感じられる夏の地方大会を観るのが好きだ。今はネットで初戦から観ることができるのがうれしい。甲子園には縁がない母校の試合を観たり、かつて取材に行った高校の試合を観たり、ドラフト候補がいる選手の試合を観たりと、楽しみは尽きない。

 そんな中、今年は2つの高校の試合を地方大会の初戦から追っている。北北海道の旭川東高と沖縄の宮古高──昨年の秋から冬にかけてイチローが指導に訪れた2校である。イチローの高校指導はこれまですべて取材しており、指導した高校についても事前から事後を追っている。旭川東高も宮古高も、昨夏を終えてどんな新チームになったのか、課題はどこにあって、どの選手の成長に期待しているのかといったことをつぶさに見てきた。

 だからこの夏、初戦のスターティングラインアップを見ただけでワクワクしたのだ。打順とポジション、選手たちの背番号を確かめて、そうか、あの子がレギュラーになったのか、あの子はショートじゃなくサードで背番号をもらったのか、あの子はトップバッターを任されるようになったのか……そんな想いがあふれてくる。イチローにスクワットを指導された旭川東高の選手たちはひと冬越えてずいぶん体が分厚くなったなあ、イチローに投げ方のアドバイスをもらった宮古高のエースは安定感を増したなあと、いちいち感心させられる。高校生にとっての“ひと冬”の重さが垣間見えるのである。

 宮古高の初戦は6月22日、相手は北谷高だった。イチローに右腕の使い方を指導された2年生のエース・砂川結貴(ユイキ)が6回を1安打ピッチング。そのヒットは三遊間のゴロが内野安打になった1本だけという完璧な内容だった。注目したのは二番手としてマウンドへ上がった左腕、仲宗根生真(イルマ)のピッチングだ・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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