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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「イチローが高校生に見せた頭の中の“吹き出し”」

 

今秋の明治神宮大会を制した九州国際大付高のプロ注目外野手・牟禮翔は、イチローからキャッチボールでの意識を学んだ。写真は準々決勝の山梨学院高戦でのバックスクリーン弾[写真=田中慎一郎]


「全力の中で形を作る」浅野が胸に刻んだ言葉


 野球マンガでは、選手たちの考えていることがダダ漏れだ。それは試合中の選手たちが言葉にせず、心の中で思っていることを“吹き出し”として描き込んでいるからだ。ピッチャーが、バッターが、言葉にすることのない言葉を“吹き出し”の中で発している。

 このマンガでいうところの“吹き出し”が実際に聞こえるとしたら、野球好きにとってこんなに興味深いことはない。そう感じたのは、高校生を指導するイチローの姿を見ていたときのことだ。たとえば2021年12月、イチローが高松商高へ指導に出掛けた。当時、高松商高の2年生だったジャイアンツの浅野翔吾の前で、イチローがバッティング練習を披露した。

 ただし、この日は現役時代とは明らかに違うことがあった。それは打ちながらイチローが喋っていることだった。たとえばこうだ。

「そりゃ、疲れるよ。全力で振っていい形を目指してるんだから、練習でも疲れます。ああ、バテてきてるな……けど、ここからが大事。形を崩さずに振る練習が大事。疲れたからといって楽な形にならない。すごく大事なこと」

 打ちながら、独り言のように喋る。本人が頭の中で考えていたことを自ら言葉にして、解説しながらバッティング練習をするなんて、これまで見たことのない光景だった。まさに野球マンガの“吹き出し”である。イチローは浅野をはじめとする高松商高の選手たちの前で、惜しげもなく技術の粋をさらけ出したのだ。それは・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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