ロッテのルーキーで開幕投手も担った左腕だ。デビューから11イニング連続無失点を続けた若き新星に迫った。 取材・構成=落合修一 写真=戸加里真司、菅原淳 開幕投手を務めたルーキー
ロッテの開幕投手をルーキーが務めたのは、毎日オリオンズ時代の1950年の榎原好以来、76年ぶり。50年は球団創立1年目で、他球団から移籍した選手以外は全員「ルーキー」だったことを考えると事実上、球団史上初の快挙と言っても過言ではないだろう。3月27日の西武戦(ZOZOマリン)、先発した毛利は期待に見事に応えた。5回を4安打無失点に抑える好投で、勝利投手に。ルーキーは開幕戦で初勝利を挙げ、プロ生活の最高のスタートを切った。 ――開幕戦の先発を告げられたときは、どういう状況だったのですか。
毛利「開幕はお前で行くから」とサブさん(
サブロー監督)に言われました。思わず、鳥肌が立ちましたね。そう言われたということは、自分が開幕マウンドに最初に立つのが決まったということ。そうなったらもう、行くしかないっていう感じです。やるしかなかったですよね。
――オープン戦の後半は金曜日に先発していました。中6日の投球間隔を考えると、このまま行けば自分が開幕戦だという予感はありましたか。
毛利 いえいえ、自分はまったくそういうことは思っていなかったです。まずは先発ローテに残りたい。そこを目標に考えていたので。
――その時点で、自分が開幕投手に選ばれたい、と思いながらやっていませんでしたか。
毛利 そういうのも、なかったです。だからびっくりという感じです。
――それでも開幕投手だぞと言われたら、その後はどういう気持ちの変化があったのですか。
毛利 そう言われたからにはそのための準備をするだけだと思いました。ある意味で、開き直りというか……。しっかり準備した上で自分のベストなパフォーマンスを出そう、という気持ちでずっと準備していました。
――開幕と決まってからの1週間というのは、どういう気持ちで過ごしていたのですか。
毛利 どこまで通用するのかなっていう、自分の力に対する思いと不安が五分くらいでした。
――開幕投手と決まって、例えば周りのチームメートだったりとか周囲の人々の反応は。
毛利「本当に開幕で行くの?」みたいな感じで言われましたけど、「新聞記事になっていることは本当です。本当に開幕に行きますよ」っていう感じです。
――開幕の前の夜は緊張して眠れなかったとかありませんでしたか。
毛利 いや、眠れましたね。そこはリ
ラックスしていつもどおりというか、どうせ投げる前になれば緊張するので、今から緊張してもしょうがない。ある意味で、開き直りみたいなものです。
――特に開幕戦だと独特の緊張感とか、セレモニー的なものがあったりとか、独特の雰囲気があると思うのですが、その中で試合開始の時間が近づいてくるというのはどうでしたか。
毛利 自分はセレモニーとか出ていないので、これから投げることへの準備にあてていました。開幕ということは何も意識せず、自分にとってのプロ初登板というところだったので、まずは自分のできることをしっかりやろうっていう、そのことだけ考えてマウンドに上がりました。
――確かに開幕投手じゃなかったとしても初登板はいつかは来るもので、それがたまたま開幕戦と重なったという感覚でしょうか。
毛利 そうですね。これは開幕戦だと思ったらもっと緊張してしまうので、それを考えずにできたのは良かったかなと思います。
――実際にマウンドに上がって、これから投げるというとき、自分にとってのプロとしての第1球というのはどういう気持ちで投げましたか。
毛利 どういう気持ちでしたかね……。バッター(最初の打者は西武・
桑原将志で結果は二飛)に集中していたのであまり覚えていないのですが、とりあえず一人ひとりをしっかり抑えようっていうことしか考えていなかったと思います。
――結果的に、5イニングを無失点に抑えました。
毛利 計算どおりというわけではなく、計算もしていませんでした。プロの舞台は初めてだったので、本当に抑えられたことが何より良かったかなというのはあります。安心しました。チームが勝っていたので、開幕戦で1勝できたのはすごく大きな1勝目だったのかなと思っています。

「開幕戦は意識せず、勝つことだけを考えていた」
記念のボールは実家に
昨年最下位に終わったチームはサブロー新監督が就任し、再出発を図っているところ。本来のエースである種市篤暉投手がWBC明けで調整中という事情があったにせよ、ルーキーをその記念すべき開幕戦の先発に起用する大胆な起用は「これから新しいチームに変わります」というメッセージに見える。そして、その期待を裏切らない投球を見せた毛利の冷静な投球術には、いい意味でルーキーらしからぬクレバーさを感じた。 ――開幕前の練習試合やオープン戦と比べて、公式戦での相手バッターの違いは感じましたか。
毛利 特にそんな感じはなかったですね。ただ、球場の雰囲気がガラッと変わって、お客さんがたくさん入っているというのは感じました。相手バッターはオープン戦でも結果を出すためにやっていたと思うので、本気度は同じだったと思います。そういう意味では、オープン戦でも公式戦でも変わらない真剣勝負だったと思います。
――オープン戦で少し打たれた試合もありましたが、開幕に向けて何か変えたことはありましたか。
毛利 いや、変えていないですね。普通に自分の投球をしようと思ってそのまま臨みました。
――開幕戦は3対1で勝利。試合が終わったときの気持ちは?
毛利 チームが勝ったことが一番なので、それが一番良かったなと思いました。
――開幕戦は143分の1という考え方もありますが、サブロー新監督の初戦でもありました。
毛利 特に何も考えずに、自分にとっての1試合目でもあったので、とにかくチームを勝たせることを最優先で投げていました。その結果サブさんにも初勝利をプレゼントできたので、そこは良かったかなと思っています。

左から開幕戦スタメンマスクで先制適時打も放った松川虎生、追加点の1号ソロを放ったポランコ、毛利
――サブロー監督からウイニングボールは渡されたのですか。
毛利 はい、もらいました。
――監督にとっても初勝利で記念のボールでもあります。
毛利 自分はサブさんが持っていってもいいと思っていたのですが、「一緒に勝ったのだから、あげるよ」ということで、そのままいただきました。
――大事に飾っていますか。
毛利 いや、親に渡したので、実家に飾ってあるんじゃないですかね。

3月27日の西武戦[ZOZOマリン]、開幕勝利のウイニングボールは、サブロー監督から毛利に手渡された
――そして2試合目(4月3日、
ソフトバンク戦=ZOZOマリン)ですが、こちらも6回までは無失点。初登板から11イニング連続無失点が続きました。
毛利 野手の方に助けられながら、野手の皆さんのおかげでそこまで無失点でいけたかなと思っています。
――7回に
栗原陵矢選手に2ランを浴びて、初失点がありました。
毛利 失投ですし、0対0で試合が進んでいる場面で「浴びてはいけない一発」だったと思っています。
――失投ということは、コントロールのミスですか。
毛利 そうですね。高くいってしまって、疲れもあった中でコントロールできなかったというのが反省です。
――それでも、7回を2失点だったわけですから、好投ですよ。
毛利 悪くはないと思いますけど、あの一発だけは悔やまれます。
――7回限りで降板後、ベンチではどんな心境でしたか?
毛利 逆転してくださいという気持ちで見ていました。
――結果、
高部瑛斗選手の適時打、
藤原恭大選手の2点適時二塁打で逆転サヨナラ勝利。
毛利 すごくうれしかったです。
――勝利投手にはなりませんでしたが、そこはしょうがないですね。
毛利 チームは勝ったので、それが一番良かったです。
――2試合の先発を終えて、ここまで12イニングを2失点という成績ですが、今後の数字的な目標はありますか。
毛利 特にはないです。任された場面で投げて結果を出していけば、それが数字にも反映されてくると思うので、一試合一試合を大事にしていきたいです。
――プロに入って、投球スタイルなど大学時代から変えたところはありますか。
毛利 変えていないです。大学時代のピッチングを見て評価してもらったと思うので、自分のスタイルを崩すつもりはありません。スタイルを崩さずに、プロのレベルにアップさせていきたいです。

クールに淡々と投げているようで、要所では激しく雄叫びを上げる一面もある
――その計画は順調ですか。
毛利 全然そうではないですね。打たれているので、反省するところばかりです。
――これから始まる長いプロ生活の第一歩を踏み出しましたが、将来はこういう選手になりたいという理想像は持っていますか。
毛利 長くこの世界で投げられる、息の長い選手になりたいです。
――いずれはエースと呼ばれたり、日本代表に選ばれたりしたいという思いはありますか。
毛利 WBCを見ていて、ああいうトップレベルの打者がそろうチームに対して投げたいと思いましたね。いつかは選ばれるようになりたいですし、大事な試合を任されるピッチャーになりたいです。勝てるピッチャーになりたい。チームが勝てればそれでいいので、「毛利が投げれば大丈夫」と思ってもらえる投手になりたいです。
――最後に、マリーンズのファンに向けて。
毛利 マリンスタジアムの応援は本当にすごいですし、12球団の中でも一番の声量だと思います。その声を肌で感じて投げさせてもらっているので、本当に力になっています。いつもありがとうございます。

「任された試合を大事に投げて結果を出せば、それが数字に反映されてくる」
PROFILE もうり・かいと●2003年9月14日生まれ。福岡県出身。177cm77kg。左投左打。福岡大大濠高から明大を経てドラフト2位で2026年にロッテに入団。最速151キロの直球と鋭いスライダーを武器にする本格派左腕で、大学時代はエースとして安定した成績を残し、日本代表にも選出された実績を持つ。完成度の高い投球が持ち味で、プロ入り後は即戦力として先発ローテーション入りを期待され、今季の開幕投手に抜てきされると、3月27日の西武戦(ZOZOマリン)で初登板初勝利を挙げた。将来のエースとしての階段を駆け上がっている。
インタビュー後記
取材当日、毛利投手は登録抹消に。ケガなどではなく、サブロー監督は「一番キツいところを任せたので、次の登板に備えて調整してもらう。1回(先発ローテーションを)飛ばすだけです」と意図を説明しました。ところで、プロ初勝利の記念グッズが完成したのでこちらも持ってもらいました。マリーンズオンラインストアで4月12日23時59分まで受注販売中だそうです。「自分が投げるときはそのタオルを掲げてもらえたらうれしいです」と毛利投手は元気に語りました。(お)