今季のチーム最多勝だが、先発は1試合もない。「ツイているだけ」と本人は笑うが、その裏には5年目でたどり着いた確かな変化があった。球速を追い求める投球から、打者を見て打たせて取る投球への転換。飛躍のシーズンを支える投球哲学に迫った。 取材・構成=落合修一 写真=戸加里真司、BBM ※成績・情報は7月17日時点 8勝0敗の理由を探る
今季、ブルペンを支える存在として大きな飛躍を遂げた八木彬投手。ここまで8勝0敗。登板すればチームが勝つという印象さえ与えている。しかし本人は、その数字を「不思議」と表現する。好調の理由は球速アップではなく、意識改革だった。スピードを追い求めたこれまでの投球から一転、コントロールと打たせて取る投球へ。力を抜くことで初めて見えてきたものがあったという。好成績の裏側には、5年目でたどり着いた新たな投球哲学があった。 ――現在の8勝0敗という数字は、ご自身ではどう捉えていますか。
八木 不思議です。でも野手がしっかり僕のときに打ってくれているので勝っているという感じなんですけど、シンプルにちょっと「ツイているな」っていう感じはあります。
――確かに運もあるかもしれませんけど、抑えないと勝てません。防御率もかなり良くなっています。昨年までと比べて技術的に変わったところはありますか。
八木 去年まではスピードを意識していました。球速が上がれば抑えられるという考えがあったんです。でも昨季が終わったときに、自分の課題はコントロールだなと思いました。今年は真っすぐだけじゃなくツーシームを使って、ゾーンの中で打たせて取ることを意識しています。そのほうがテンポ良く、長いイニングも投げられるので、コントロールを磨いてきました。
――去年までは、とにかく速いボールを投げようという意識が強かった。
八木 そうですね。真っすぐで力んでしまって、ボール先行になって、甘く入って打たれることが多かったのです。今年はストライク先行でいけていますし、まず力を抜いてゾーン内で勝負することを意識しています。それが一番変わったところだと思います。
――力を抜くことで、投球そのものも変わりましたか。
八木 変わりましたね。打者の反応を見られるようになりました。タイミングを外せているかどうかも分かるようになりましたし、自分と勝負している感覚じゃなくて、相手と勝負できているという感じがあります。
――そういう意識の変化は、自分で気付いたものなんですか。それともコーチに言われて変わったのでしょうか。
八木 コーチにも「相手の反応を見ろ」とは去年から言われていました。でも、そのときは「どうやって見るんやろう」と思っていました。力んで投げていると顔もぶれてしまうし、「エイヤー」で投げてしまうので、相手なんて見えていないんですよね。力を抜いて投げられるようになったら、打者の反応を見る余裕ができて「ああ、こういう反応をしているんやな」と分かるようになりました。たまにフォークを使ってタイミングを外したりとか、そのへんは意識しています。
――三振を狙うというより、打たせて取るイメージですか。
八木 追い込んだら三振を狙ってもいいと思いますけど、最初から三振を狙いにいくとどうしてもボール球が増えてしまうので。そこは変えて・・・
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