
イラスト=イワヰマサタカ
野球用語には和製英語が多い。ナイター(Night Game)、ランニングホームラン(Inside-the park homerun)、フォアボール(Walk)、ホームベース(Home plate)などなど……。これは挙げ出したらきりがない。
そして以前の私はペナントレース(Pennant Race)も、その類の言葉だと思っていた。アメリカの野球中継などで、聞いたことがなかったからだ。あちらでは日本でペナントレースと呼ぶリーグ戦は「レギュラーシーズン」と言うのが一般的だ。そしてリーグ優勝決定のプレーオフの戦いは「ポストシーズン」だ。
しかしMLBの歴史を調べていくうちに、いくつかの昔の書籍に、ペナントレースという言葉が使われていることに気がついた。だいたい1960年代までは、アメリカでもペナントレースという言葉は普通に使われていたようなのだ。
ペナントは横長の二等辺三角形や横長燕尾型の旗で、中世の騎士が槍につけていた三角の旗「ペノン」と、吊り上げるためのロープを意味する「ペンダント」が合体した名称と言われている。海戦で勝利した軍艦が掲げる三角旗が由来で、アメリカのスポーツ界では、勝利の記念旗として19世紀後半からカレッジフットボールで普及した。野球では20世紀の1920年代あたりから優勝の記念旗として使われるようになる。その結果、優勝ペナントを掲げる権利を競う戦いということで、ペナントレースという言葉が生まれた。
20世紀の開幕とともに成立したナショナル・リーグ8球団、アメリカン・リーグ8球団の計16球団体制から、MLBがチーム増設を開始したのは1961年。そして69年には2つのリーグは12球団ずつ、合計24球団制になる。
で、この年から両リーグとも、東と西の2地区に分かれ、ペナントを掲げることのできるリーグ優勝は、東西それぞれの地区優勝チームが競うプレーオフで決められることになった。今でいうところのポストシーズンの始まりだ。
このときからリーグ優勝はリーグ戦の結果だけでなく、プレーオフでワンクッション置いて決まるようになった。つまりシーズンのリーグ戦は優勝ペナントを掲げる権利獲得と直結した戦いではなくなってしまったのだ。その結果、ペナントレースという言葉はアメリカではあまり使われない用語、一種の死語になっていったようなのだ。
一方、日本はどうかというと、アメリカのポストシーズンにあたるクライマックスシリーズは、あくまで日本シリーズへの出場権を争う戦いで、リーグ優勝はそれとは関係なくリーグ戦の勝敗だけで決まっている。つまり意味合いとして、きちっと、日本のプロ野球ではペナントレースは健在なのだ。(文=綱島理友)