2023年、プロ野球開幕を前に日本中が沸き上がった。栗山英樹監督率いる侍ジャパンが悲願の世界一を奪還。マイアミの地で野球の母国を力でねじ伏せ、14年ぶりの夢を結実させた。 
写真=Getty Images
最高のフィナーレ
クラブハウスで
大谷翔平がチームメートへ檄を飛ばした。「あこがれるのはやめましょう――」。野球の母国で、史上最強と目されたアメリカを相手にWBCの決勝を戦う。第1回、2回大会を連覇した先人たちを見て、誰もがあこがれを抱いた夢の舞台。だが、今は「あこがれ」はいらない。
「アメリカの野球に対してリスペクトの気持ちを持っているし、尊敬のまなざしが逆に弱気の気持ちに変わってしまうことがある。今日一日だけはそういう気持ちを忘れて、対等な立場で、『必ず勝つんだ』という気持ちを出したかった」
イタリアとの準々決勝を含めた東京ラウンドでの5戦を全勝で駆け抜けると、準決勝のメキシコ戦は4対5と追い込まれた9回裏に大谷の二塁打を足掛かりとして無死一、二塁のチャンスをつくり、今大会で不振を極めていた
村上宗隆が劇的なサヨナラ打。逆境をはねのけてアメリカとの決勝の舞台へたどり着いた。
「そもそも『アメリカをやっつけたい』と思ってやっている。あのメンバーのアメリカを、アメリカに行ってやっつけたい――」
栗山英樹監督は大会前からそう繰り返していた。そのためのメンバーはそろっていた。NPBが誇る猛者たちに大谷、
ダルビッシュ有、
吉田正尚、
ラーズ・ヌートバーというMLB勢を加えた強力な布陣。すべては指揮官と大谷が声をそろえた「勝ち切る」ため。「勝ち切る」ことで日本野球は前進することができ、本当の意味でファンと思いを共有することができる。「日本野球」を継承していくことができる。その最後を締めくくったのは、やはり大谷翔平だった。
3対2とリードして迎えた9回・・・
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