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【MLB】出さないと言っても過熱する一方 大谷トレード騒動

 

トレードの可能性は低いとされているが、現地では大谷のトレードの噂が絶えない。MLBでもスーパースターとしての地位が確立されているということだ


 メジャー・リーガー、大谷翔平は6年のキャリアの中で、しばしば今まで見たことも聞いたこともない事態を引き起こしてきたが、7月末のトレード騒動も前代未聞だ。

 エンゼルスのアート・モレノオーナーは大谷をトレードしてしまうと、FA市場で彼と再契約するチャンスがなくなると危惧し、トレードに消極的。出さないだろうと言われている。にもかかわらず多くの現地アメリカメディアが連日、熱心に報道。7月19日、MLB公式サイトは「大谷を最も必要としている10球団」を特集し、レイズ、フィリーズ、ヤンキース、ブレーブスの順で言及した。

 スポーツ専門局「ESPN」電子版は「仮想の大型トレード」と題し、レイズ、ヤンキース、メッツ、オリオールズなど9球団の担当記者たちに交換要員を列挙させ、それをジェフ・パッサン記者がエンゼルスのGM役になって吟味した。

 スポーツイラストレイテッド誌は「ウィンウィンになれる5つのトレード提案」としてモレノオーナーも気に入るであろうドジャース、ヤンキース、オリオールズなどのトレード案を創作。スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」はジム・ボーデン元レッズGMに、獲得の噂がある10球団を分析させ、その内4球団は実現の可能性があると結論付けた。

 FOX電子版は大谷マニアで知られるベン・バーランダー記者に2024年に大谷がユニフォームを着る可能性の高い4球団について言及させている。大手メディアが競ってこんな報道をするのは、今季も大活躍の大谷が球界の至宝であり、6年目もポストシーズンでプレーせずに終わるのではなく、10月はワールド・シリーズに向けて桧(ひのき)舞台で戦ってほしいと真に願うからだろう。

 ボストングローブ紙も、元レッドソックスのスター、デビッド・オルティスが、レッドソックスが大谷のトレードをまとめることを願っていると報じている。「大谷を要らないチームなんてない。何てすごい選手なんだ。打てて、投げれて正気じゃない。ああいう選手は勝てるチームでプレーする必要がある。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で見たように、優れた選手であるだけでなく素晴らしいリーダーでもある。あのリーダーシップをレッドソックスにもたらしてくれれば」と語っている。

 一方でエンゼルスは大谷のみならずもう一人の至宝、マイク・トラウトもいながら、宝の持ち腐れで15年以降は毎年負け越し。それはモレノオーナーの度重なるまずい球団運営ゆえだ。そして今回、もし大谷をトレードせず、オフにFAで契約できなければ、補償で得るのは全体で75番目から80番目(3巡相当)のドラフト指名権1つだけ。一方で今、トレードすれば、MLBネットワークのジョン・ポール・モロシ記者いわく、若手有望株4選手と交換できるくらいの価値がある。

 エンゼルスの将来にとっても、MLBにとってもトレードが一番良いことではないかというわけだ。もちろんエンゼルスが怒涛の快進撃で、ヤンキース、レッドソックス、アストロズといった強豪を打ち負かし、プレーオフに出られればいい。だがケガ人続出の現状と不安定な投手陣を考えると、そういうふうには考えられないのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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