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【MLB】まとまりの良さが持ち味のオリオールズ 40年ぶりのワールド・シリーズを目指す

 

若手捕手ながらチームをけん引しているラッチマン[左]。そのほかマイナーで育成されてきた若手が活躍しているオリオールズ


 藤浪晋太郎が加入したオリオールズは8月10日終了時点でチームOPS(出塁率+長打率).745は30球団中10位、チーム防御率4.09も14位と決してトップレベルではない。しかしながら接戦に強く、ここまで71勝44敗とア・リーグ最高勝率である。今季のサラリー総額は7037万ドルでメジャー27番目、メジャー経験の少ない若手が多いのになぜこれだけ勝てるのか。

 理由はまとまりの良さだ。2018年オフ、当時36歳のマイク・エリアスGMが就任。アストロズでジェフ・ルーノーGMの部下だったこともあり、アストロズのチーム作りを参考にした。つまりドラフトでトップ指名権を得て、若い才能ある選手をファームで時間をかけてゆっくり育成する、正攻法のやり方である。

 その期間メジャーでは勝たなくて良い。というよりも、勝たないことで毎年トップ指名権を得られる。いわゆるタンキングで、わざと負けていたとの批判もあるが、エリアスGMは「タンキングではない。チームの状態がひどかったから、一度壊してしまう必要があった」と弁明している。

 47勝115敗のチームを引き継いだが、19年も54勝108敗、短縮シーズンの20年は25勝35敗、21年は52勝110敗だった。結果、毎年若手有望株をストックできた。19年の全体1位指名はアドリー・ラッチマン捕手。22年の5月にメジャー・デビューした。好守好打のスイッチヒッターで出塁率も高く(.373)、今は打順で一番を打つ。

 彼の昇格後、オリオールズは粘り強いチームになり、シリーズでスイープされたことは一度もない。同じ年の2巡目はガナー・ヘンダーソン遊撃手。昨年8月にデビュー、スピード、パワー、強肩が武器で、今季の新人王候補だ。4巡目のジョイ・オルティス内野手は今現在、メジャーでトップ100に入る若手有望株である。

 20年のドラフトでも、1巡目、全体2番目指名のヘストン・カースタッド外野手を筆頭にトップ100の有望株が3人。21年のドラフトでも3人がトップ100。そして22年の全体1位指名ジャクソン・ホリディ遊撃手は有望株ランキングでも全体1位である。加えて、エリアス就任前からの生え抜き選手もいて、ライアン・マウントキャッスル一塁手、セドリック・マリンズ外野手、オースティン・ヘイズ外野手、ルール5ドラフト指名のアンソニー・サンタンデール外野手らだ。

「同じメンバーでずっと野球をやってきた。互いに何ができるか知っている」とヘンダーソン。今季1年契約で移籍してきたカイル・ギブソン投手は「このチームは寄せ集めではない。同じシステムで育てられ、みんなが考え方を共有している。選手育成部門がうまくやっていて、無形の財産がある」と感心する。

 戦力的に欠けている部分は他球団にいたベテランで補っている。ジェームズ・マッキャン捕手、アダム・フレイジャー二塁手らだ。エリアスGMは「再建は終わった。野手はみんな複数のポジションを守れるし、左と右のバランスも良い。これからが勝負だ」と意気込む。1983年以来、40年ぶりのア・リーグ制覇&ワールド・シリーズ出場を目指している。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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