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【MLB】二刀流でなく、打者オンリーでもMVP候補となった、絶好調大谷

 

毎年経験を重ねるたびに成長し、ウイークポイントを消してきた大谷。6月に入り絶好調。打者としてのみでMVP候補になっている


 大谷翔平が絶好調だ。6月16日から26日まで10試合で16安打、8本塁打、17打点である。理由について「シンプルにストライクを振るのが一番のポイント。そこさえできていれば、ある程度は良いスイング、良い構えができている証拠じゃないかなと思います」と話している。

 この期間、ストライクゾーンの外に来た球は95球、その内振ったのは12球、チェイス率は12.63%だった。大谷と言えば以前はボール球によく手を出していた。2019年は30.4%、23年は29.7%であった。体も大きく手も長いため、ボール球でも強い打球が飛ばせる。

 23年はボール球を打ち、7本サク越えにした。しかしそれでは安定感に欠ける。加えてポストシーズンで勝つことを目標にするドジャースでは全員がつなぐ意識を持つことが重要だ。球団記録の10試合連続打点を挙げられていることについては「ノーヒットでも得点になるシチュエーションをチーム全体でつくれている。無死二塁から引っ張った昨日のジェイソン(ヘイワード)の打席もそうでしたけど、ああいう(進塁打の)打席が多いと得点を重ねることが多くなる」と本人。

 デーブ・ロバーツ監督は今季記者と話すときに頻繁に「Move the ball forward」という言い回しを使ってきた。直訳すれば「ボールを前に進める」だが、具体的には打者が打席で三振せずにボールを打ち返し、走者を前に進めることを指す。ドジャースが勝てないときは、打者は三振を積み重ねるだけだった。チャンスで確実に走者を前に進めよう。監督のメッセージを大谷も受け止め、みんなで実践しているのである。

 とはいえ今季は大谷が二刀流でなくても、一人の打者として、MVPに該当する特別な存在であると証明するシーズンにもなっている。5月からスタットキャストで発表しているバットトラッキングデータで分かったことは、傑出した攻撃力を持つ打者は2つの才能を併せ持つということだ。

「AveBatSpeed(平均のバット速度)」が速く、「Squared-up Rate(芯でとらえる確率)」も高い。大谷のバット速度は75.4マイルで全体15位、芯でとらえる率は28.9%で51位である。ちなみに一番バット速度が速いのはヤンキースのジャンカルロ・スタントンだが、空振りも多い。芯でとらえるのが一番うまいのはパドレスのルイス・アラエスだがパワーがない。両方で数値が上位の打者は大谷以外にヤンキースのフアン・ソト、オリオールズのガナー・ヘンダーソンなど限られた打者だけだ。

 加えて「Blasts/ブラスト」という指標では大谷は1位だ。ブラストは75マイル以上の速いバット速度で「Squared-up」した打球のことで、大谷はここまで103球。ちなみにすでに30本塁打を打っているヤンキースのアーロン・ジャッジは97球で3位。ジャッジのバット速度は76.8マイルで4位だが、芯でとらえる率は25.4%で106位と、そこはトップクラスではない。

 パワーに加え確実性も増してきた大谷。「毎年、経験を重ねバッターとしても成長できている。そこが良い成績に結びついていると思います」と手応えを口にしている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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