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【MLB】大型補強なしでチームを強くしたレッドソックス、次の動きは?

 

開幕当初は低迷したレッドソックス。地道な取り組みで個人セッションを行いそれぞれの調子を上げていき、シーズン前半戦で貯金11をつくり、後半戦の戦いが楽しみだ


 吉田正尚が所属するレッドソックスが前半戦を53勝42敗で折り返した。最初の2カ月は勝ったり負けたりと、ア・リーグ東地区首位チームに14ゲーム差をつけられていたが、首位オリオールズに4.5ゲーム差まで迫った。

 アレックス・コーラ監督は「シーズンの前半が良かっただけで満足するつもりはない。地区首位から4.5ゲーム差。これが私たちの目指している場所だ」と意気込んでいる。

 昨オフ、大型補強をしなかったため、地元メディアやファンは球団の姿勢に批判的だった。だが結果的にそれでよかった。目玉と言われたジョーダン・モンゴメリーはレンジャーズで13試合に登板し防御率6.44、ブレイク・スネルもジャイアンツで8試合で6.31と好成績を残せず。代わって抜擢された若手のタナー・ホークが8勝6敗、防御率2.54、カッター・クロフォードは6勝7敗、防御率3.04とローテーションをけん引した。投手陣の防御率は3.61で30球団中5位、先発ローテも3.58で同じく5位である。

 打撃陣もOPSは.748で6位だ。今年の打線は近年のチームとは異なり、スピードが特徴。ジャレン・デュラン、デービッド・ハミルトン、セダン・ラファエラがレギュラーになり、盗塁を含めた積極的なベースランニングで相手投手にプレッシャーをかける。

 打撃コーチのピート・ファッツはシーズン開始時から9人でつなぐ野球を提唱、最初は成果が出なかったが、徐々に噛み合ってきた。チーム打率.255はア・リーグ2位、二塁打が173本で2位、三塁打が24本で2位である。主砲のラファエル・デバースは23本塁打、61打点で3度目のオールスターに選ばれたが、彼のパワーと若手のスピードが結合、エキサイティングな攻撃を展開している。

 吉田正尚もケガなどで調子が出ていなかったが、前半戦最後の15試合は打率.304、出塁率.361、長打率.464で勝利に貢献した。興味深いのは試合前の打者全体ミーティングの時間を削り、4人の打撃コーチが、個々の選手と個別にセッションを行うように変更したこと。相手投手の攻略法と言っても、打者は同じではないから、ひとくくりには説明できない。

「家庭教師と一緒に学ぶようなもので、選手の必要に応じて何度もレビューしたり、繰り返したりする」とファッツコーチは地元記者に説明している。ほかに、エマヌエル・バルデス、ボーン・グリッソム、さらに吉田とメジャー経験の浅い打者が多いため、9人別々に伝えることで、個々の選手が自分の能力を生かしてどういう役割を果たせばいいのかより明確に理解できる。

 みんなの力を結集できる。新任のクレイグ・ブレスロー編成本部長は今年のトレードデッドラインで買い手になるのか売り手になるのか分からないと数週間前までは話していたが、これで買い手に回ることは確実。必要なのは右の大砲と先発投手といわれるが、オフもそうだったように、何がなんでもと大物を狙ったりはしないように思う。

 ドジャースやヤンキースとは違うアプローチを取る名門球団が何をするのか、7月30日のデッドラインまで注目だ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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