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【MLB】毎年巨額の金額が動くオフのFA契約 球団はもっと払えるのが実情

 

22年にアーロン・ジャッジ[右]と9年総額3億6000万ドルの契約を結び、握手をするキャッシュマンGM。ヤンキースは15年ぶりのワールド・シリーズに出場も1勝しかできず惨敗。来季こそ世界一になるために、今オフはより積極的な補強に動くはずだ


 毎年オフシーズンになると、メジャー・リーグの巨額なFA契約が話題になり、その金額がどこから出てくるのかと驚かされる。だがネットサイト「ザ・スコア」のトラビス・ソーチック記者によると、実際にはもっと余力があるそうだ。

 例えばヤンキースの2023年の収益は7億2000万ドルで、それに対し24年のサラリー総額は3億943万ドルだから、約4億ドルのギャップがある。使わないのはぜいたく税が高くなるためであって、ハル・スタインブレナーオーナーは給料総額で3億ドルをなるべく超えたくない。その結果、ヤンキースは毎年最も多くのお金が懐に残るチームとなっている。

 一方でメッツのスティーブ・コーエンオーナーは24年のサラリー総額3億1770万ドルは、23年の収益と大して変わりはなく、結果、赤字になっているという。それでもコーエンオーナーは、野球で利益を上げることよりも、勝利を追求する姿勢で、メッツファンを喜ばせ続けている。

 MLB全体で見ると、コーエンタイプのオーナーはほとんど存在しない。サラリー総額の球団平均は2億300万ドルで、その前年の収益とのギャップは1億9100万ドルに上る。スモールマーケットのオーナーの中には、勝利よりも収益分配金の受け取りに関心を持っている者もいると言われている。実際、経済誌「フォーブス」のデータによれば、ほとんどのMLBチームが収益で3億ドルを超えているにもかかわらず、24年のサラリー総額が1億ドルを下回ったチームは5チーム、1億ドルから1億1千万ドルが4チームである。

 とはいえ、ヤンキースはこのオフ、より積極的に資金を投入せざるを得ない。09年以来、15年ぶりにワールド・シリーズに出場も、ドジャースに1勝4敗と惨敗。テキサス州サンアントニオで開催されたGM会議で、ブライアン・キャッシュマンGMは、すぐに辣腕のスコット・ボラス代理人に会い、フアン・ソト外野手、メッツからFAのピート・アロンソ一塁手について話した。ソトの契約は6億ドルを超えると予想されている。また、アロンソは5年総額1億2500万ドル程度だ。ヤンキースには時間的余裕がない。チームの顔であるアーロン・ジャッジは来季33歳、ゲリット・コールは34歳となる。彼らのパフォーマンスが衰える前に、世界一を達成しなければならない。

 メッツの存在は脅威だ。コーエンオーナーは純資産200億ドルで、MLBで最も裕福なオーナー。ソトの獲得に加えアロンソの引き留めにも動いている。このオフ、ニューヨークの球団間で壮絶な争奪戦が繰り広げられる。

 これでは、スモールマーケットチームは取り残されると思うかもしれない。しかし24年もブリュワーズ、ガーディアンズ、ロイヤルズが勝ち進んだようにポストシーズンに12チーム(30球団中)も出られることは大きい。そして、そこに出場すれば、昨年のダイヤモンドバックスのようにワールド・シリーズまで勝ち進むチャンスがある。パドレスも、故ピーター・サイドラーオーナーの巨額の投資によって、マーケットが小さいにも関わらず、スター選手をそろえ強力チームに成長した。メジャー・リーグには、勝つことがすべてというオーナーがもっと増えてもらいたい。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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