
沖縄県出身と日本と縁があるドジャースのロバーツ監督。長いMLBの歴史の中で1000試合以上に指揮を執った監督で最も勝率が高い。ポストシーズンの通算勝利数の記録もいずれ歴代1位になる可能性をひめている
ドジャースのデーブ・ロバーツ監督がMLB史に残る監督に近づいている。2024年終了時点で通算成績851勝507敗、勝率.627。1000試合以上指揮を執った監督でこの勝率を超える者はいない。3月に、4年総額3240万ドルの好条件で契約延長、年俸はMLBの監督として記録となる810万ドル。少なくともあと4年指揮を執ることで、大記録も狙える。26年シーズン中には公式戦で1000勝に到達するだろう。
ポストシーズン通算56勝は歴代6位。1位はジョー・トーリの84勝、2位はトニー・ラルーサの71勝、3位はボビー・コックスの67勝、4位はダスティ・ベイカーとブルース・ボーチーの57勝だから、ひょっとしたらこの4年の間にトップに立つかもしれない。世界一の記録は7度の、
ジョー・マッカーシー、ケーシー・スティンゲルが持っていて、これには届かないが、仮にあと2回勝てば世界一4度の4位タイに浮上する。ウォルター・オルストン、2度のトミー・ラソーダに続き、ドジャース史上3人目の殿堂入り監督となる可能性は十分だ。
膨大なデータから作戦を決めるセイバーメトリクスの時代、ロバーツはラルーサのような戦略家ではないかもしれない。しかしながらチームをまとめる能力はピカ一だ。「シーズン中、特にケガ人が続出した時期は、チームの士気が下がる場面もあった。そんな中で、ドク(ロバーツの愛称)はチームの前に立ち、士気を高め、前向きなエネルギーを注ぎ込む素晴らしい仕事をしてくれた」と、アンドリュー・フリードマン編成本部長は高く評価する。
24年のドジャースではシーズン中、27人の選手が合計2361日間にわたって負傷者リスト(IL)入り。この数字はリーグ平均を38%も上回り、次に多かったレッドソックスを19%も引き離す異常事態だった。
それでも巧みにチームをまとめ、優勝に導いた。ドジャースには、毎年実績あるスター選手たちが新たに加入してくる。スターをチームに適応させるのも巧みだ。
フレディ・フリーマン一塁手は「選手たちは少なからずプライドを持っている。それをうまくコントロールして、みんなの意識を同じ方向に向かわせる。そして全力で戦える環境を作る。そこが素晴らしい」と称える。
昨年12月初旬、ロバーツは生まれ故郷である沖縄県那覇市を訪れ、市役所で「特別功労賞」を授与された。この賞は、那覇市の評価を高めることに貢献した人物に贈られる。父・ウェイモン・ロバーツは、テキサス州ヒューストン近郊出身、海兵隊に入隊し、日本語を話せないまま沖縄へ派遣された。母・栄子は沖縄出身で、英語はほとんど話せなかった。
2人は1972年に結婚、ロバーツがまだ赤ん坊のころに一家はアメリカへ移住している。「ドジャースの監督としてワールド・シリーズを制覇し、ロサンゼルスの街とともに祝うことができたのは素晴らしいこと。しかし私にとって最後のピースとなるのは、ここ那覇に来て、私のルーツである皆さんと一緒にこの喜びを分かち合うことです」と満面の笑みで語っている。
沖縄出身のロバーツ監督が、
大谷翔平、
山本由伸、
佐々木朗希らと偉大な歴史を積み上げていく。誇らしいし、とても楽しみである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images