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【MLB】ドジャースのホワイトハウス訪問が決定 2019年に欠席したベッツは今回参加するのか?

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2018年に世界一に輝いたレッドソックスはホワイトハウスに訪問。トランプ大統領の名前が入ったユニフォームをプレゼントしたが、主力のベッツを含む数名は訪問を見送りしていた。ベッツは、ドジャースの一員として4月に訪問する機会があるが、果たして訪れるのだろうか


 2014年4月1日、前年度王者のレッドソックスが、当時のバラク・オバマ大統領からホワイトハウスへ招かれた。当時の取材を思い出す。チーム宿泊先のボルティモアのホテルから、バス5台、1台はメディア用で、朝8時に出発。記者は40人ほどだった。ホワイトハウスにはメディア専用入口があり、ワシントンDCの常連の政治記者たちは、コーヒーを片手にいつものように出入りするが、普段は着用しないスーツにネクタイ姿の野球記者たちは緊張した面持ちでセキュリティーチェックを受けた。

 セレモニーは11時半から。見学を済ませた選手たちが中庭に出てくる。続いて球団オーナー&社長とともに、大統領が出てきて記念撮影に並んだ。大統領の真後ろに田澤純一、右後ろに上原浩治が立った。祝福のスピーチでユーモアを見せる。

「今日は、レッドソックスのメンバーを招待したはずだけど、間違いかな、綺麗にひげを剃ったこの連中は誰なんだい? おめでとうみんな、今年も頑張って。とはいえ、今年はもっと良いソックス(大統領はホワイトソックスファン)が勝つ番かもしれないけどね」

 チームを代表してデビッド・オルティーズが胸にボストン、背中にOBAMA 44と文字が入ったユニフォームを手渡した。約20分間のセレモニーだった。スポーツチームのホワイトハウス訪問は19世紀に起源があり、1980年代のロナルド・レーガン政権以降、恒例化された。

 しかしながらドナルド・トランプ大統領の前回の任期中(2017年から20年)にもめた。発端は、NFLの49ersのQBがアメリカの人種差別に抗議し、国歌斉唱中に起立を拒否したことにあった。この行動にトランプ大統領は「彼は自分に合った国を探すべき」と批判。さらに国歌斉唱中に膝をつく選手を解雇するよう、NFLの球団オーナーたちに圧力をかけた。その結果、200人以上のNFL選手が抗議のために膝をつく事態に発展した。この影響はNFLにとどまらず、NBAの優勝チームのメンバーもホワイトハウス訪問を拒否する意向を示し、トランプ大統領は招待を取り消して報復した。

 そんな状況の中、18年に優勝したMLBのレッドソックスも、ムーキー・ベッツを含む数人の選手が訪問を見送る決断をした。これらの選手の多くは黒人またはラテン系で、外国出身の選手たちは移民排斥的な発言が理由だと述べている。ベッツは社会問題に対しての意識が高い。20年、ドジャースに加入したときも、ミネソタ州で警察官に殺害されたジョージ・フロイド事件への抗議として、国歌斉唱で膝をついた。「私はただのアスリートではない」と当時語っている。

 ドジャースの共同オーナーである元アスリートの2人、NBAのマジック・ジョンソンと、女子テニス界のビリー・ジーン・キングも、以前からトランプ大統領に批判的。24年の大統領選はカマラ・ハリス支持で「アスリート・フォー・ハリス」の共同委員長を務めた。ドジャースは招待を受け、4月7日の訪問を決めたが、結束の固いドジャースも今回は一枚岩とはいかないのかもしれない。ベッツは家族と相談してから判断すると語っている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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