
メジャー2年目を迎えた山本由伸。今季4試合に先発し、防御率1.23と好スタートを切っている。ロバーツ監督は、今季の山本を野茂英雄に例えるほど、信頼が厚い。日本人で初めてのサイ・ヤング賞受賞なるか注目だ
山本由伸はナ・リーグのサイ・ヤング賞を獲得できるかもしれない。現地時間4月11日のカブス戦に登板すると、6回を投げ2安打1四球9奪三振の無失点ピッチングで圧倒した。試合後、サイ・ヤング賞について聞かれると「ここまで日本人選手が受賞したことがないと聞いているので、すごく興味ありますし、1試合1試合に集中してベストのパフォーマンスを出していくことがそういった素晴らしい賞につながると思うので、とにかく毎日を頑張ります」と話した。
佐々木朗希もサイ・ヤング賞が目標と言っていたが、2人で話すことはあるかという問いには「話し合ったことはないですけど、朗希君もすごい才能を持った選手なので、お互い高め合い、切磋琢磨しながらプレーできる関係性だったら良いかなと思います」と言う。
目を引くのはバレル率で、昨年は8.3%と大きな打球を飛ばされていたが、今年は4.2%。平均の打球角度も昨年の8.4度から1.3度となっている。三振率も昨年の28.5%から33.7%に上がり、22回を投げて28奪三振である。ときにマウンド上で打者を弄んでいるかのような余裕さえうかがえる。「真っすぐをしっかりコントロールできたし、変化球も良いゾーンに投げられたので、有利なカウントで勝負できた」と振り返っている。
デーブ・ロバーツ監督は、山本の投球を見てかつてチームメートだった野茂英雄を思い出したと言う。「打者に考えさせている。ストライクからボールに落ちるスプリットで空振りや三振を奪い、コマンドされた良い直球がある。それはヒデオに似ている。投球の質はあのころ(2002年と03年)のヒデオに近い」と評している。
日本人初の快挙に向け、問題になるのは強力なライバルの存在だろう。今のナ・リーグには特別な才能を持った2人の若手投手がいる。一人はポール・スキーンズ。ご存じ23年のドラフト全体1位指名で、翌24年の新人王。今季も4試合、24.1回に投げて、26奪三振、3四球、バレル率は1.6%、打球角度も2.9度である。100マイル超えの直球に加え、93~95マイルのスプリンクラー、スイーパー、チェンジアップなどで圧倒している。
17年高卒でドラフト全体2番目指名だったレッズのハンター・グリーンは、25歳となった今季、メジャーの頂点にたどり着きつつある。22年と23年は浮き沈みのあるシーズンだったが、24年にはオールスターに初選出。26先発で防御率2.75を記録し、サイ・ヤング賞投票で8位に入った。そして今シーズンは、4試合、27.2回を投げ、防御率は0.98、31奪三振、4四球、被打率.126という圧巻の数字を残している。
2人とも山本より若く、体も大きく、馬力もある。相当ハイレベルな戦いになるのは間違いない。ちなみにほかの日本人選手でもカブスの
今永昇太は5試合、28.1回を投げて、2勝1敗、防御率2.22。メッツの
千賀滉大は3試合、17回を投げて、2勝1敗、防御率1.06と好スタートを切っている。ひょっとしたら2人もサイ・ヤング賞争いに加わってくるのかもしれない。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images