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【MLB】盗塁数アップに対抗 捕手も重いボールを使い腕力強化

 

MLB屈指の強肩で知られているフィリーズの捕手、リアルミュート。今季34歳を迎えたが、二塁までの送球は1.86秒とMLBトップクラスだ。盗塁数が注目されがちだが、捕手の盗塁阻止にも注目してみてはどうだろうか


 今季、MLBでは過去30年近くで最も多くの盗塁が試みられている。1試合あたりの盗塁試行数は平均1.03回と、1999年以来初めて1.00を超えた。現地時間5月13日時点の盗塁王はパイレーツのオニール・クルーズで16回成功、失敗は1回しかない。カブスのピート・クロウ=アームストロングは13回成功で5位、大谷翔平は10回成功で10位タイだ。過去3シーズンは、MLB史上最も盗塁成功率が高く、約80%だ。

 2025年の1試合あたりの盗塁成功数は、盗塁が盛んだった1987年とほぼ同水準。23年からルール改正を行ったMLB機構の狙いどおりになっている。ホームランか三振かの二択で、塁上でのダイナミックな動きが失われていたMLBだが、スピードがよみがえってきた。

 レイズの24歳のチャンドラー・シンプソンも目の覚めるような走力で話題になっているが、ドジャースのキム・へソンなど、今後はスピードスターが増えていくのだろう。

 一方で守る側もやられてばかりではない。捕手の能力が進化している。「ポップタイム(捕手がミットで捕ってから塁に送球が届くまでの時間)が年々改善している。スタットキャストの記録が始まった15年のポップタイム平均は2.021秒。20年には初めて2.0秒を下回り、今季は1.96秒。

 強肩で知られるフィリーズのJ.T.リアルミュートは15年に1.91秒だったが、22年に1.82秒をマーク、今季も平均1.86秒で、MLBでトップタイだ。ジャイアンツのパトリック・ベイリーも1.86秒。今季の盗塁阻止率は41%で、3年連続でリーグ平均より7ポイント以上高い水準である。

 言うまでもないが、捕手にとって必要なのは素早いエクスチェンジ(握り替え)、正確な送球、強肩だ。スキルアップに努力を積み重ねている。例えば球速。捕手も球速を増すために重いボールを使ったトレーニングで腕力を強化している。これは投手が近年行っている加重トレーニングと同じだ。ブルージェイズのアレハンドロ・カークは22年に平均77.3マイルと肩が弱かったのに、25年は79.4マイルになっている。

 依然エリートレベルではないものの、もともとエクスチェンジが速く、送球が正確だったため、十分に戦えるレベルに成長している。カークはブロッキング能力に優れ、フレーミングもトップクラスだった。そこに盗塁阻止力の向上が加わったから、今の彼はア・リーグ最高の守備型捕手かもしれない。

 エクスチェンジについても改善が進んでいる。捕ってからボールを手放すまでの時間で、ジャイアンツのベイリーは「ダブルプレーの送球のようにミットからすぐ出す感覚で投げている」と説明している。ダイヤモンドバックスのガブリエル・モレノも、若手エリート捕手の一人で、動きがとても素早い。

 大谷は投手復帰の年で、あまり走らないのではと予想されていたが、積極的に走っている。出塁率が4割を超え、頻繁に塁に出るから、チャンスも多い。ナ・リーグ西地区はハイレベルなペナントレースが予想されている。接戦の試合の中で、ベイリーやモレノの肩と対決するシーンが何度も見られるかもしれない。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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