
時代遅れと言われているツーシームをうまく活用し、成績を残しているアストロズのブラウン。リーグ2位の防御率2.21と安定感が光っている。高めのフォーシームが主流となっている現代、ツーシームは数多くある球種の一つとして、再活用が進んでいる
アストロズがロサンゼルスでドジャースをスイープした。そのシリーズでは投げなかったが、今季同チームで左腕フランバー・バルデスとともに、エース格となっているのが右腕ハンター・ブラウンだ。6月はア・リーグの月間最優秀投手にも選ばれたが、前半戦18試合に先発し、9勝3敗、防御率2.21、110イニングを投げ、129三振を奪っている。
メジャー・デビューは2022年、最初の2シーズンはフォーシーム、
ナックルカーブ、カッターの3球種で94%を占めていた。転機は24年5月5日。ブラウンは、メジャーで初めてツーシームを投げた。平均球速は96.1マイルでフォーシームと少ししか違わない。これがエースへの階段を上るきっかけになった。昨季はツーシームを18.1%で投げたが、今季は23.9%である。
2つの動きが異なる速球を投げ込むことで、打者を幻惑。平均96.9マイルのフォーシームは特に効果的になり、今季の被打率は.122、空振り率33.8%である。ベストの変化球はナックルカーブで83.8マイル、被打率.164、空振り率38%である。チェンジアップは88.4マイル、被打率.186、空振り率24.7%。結果、強い打球を許さず、打球速度86.3マイル、ハードヒット率32.5%はともにトップレベルだ。
かつてツーシームはメジャーで主力の球種だった。低めのツーシームでボールを動かしてゴロを打たせる。10年ころはそのピークだった。しかしながら打者は低めをうまくすくい上げて長打を打つようになった。そこで投手は浮き上がるようなフォーシームで高めを攻めるようになった。ツーシームは打たれやすい、時代遅れの球種扱いで、投げる投手は減っていった。今季ツーシームの使用率は、ピッチトラッキングが始まった08年以降、最低水準で、全体の投球のわずか15%である。
しかしこういった変化には常にサイクルがある。打者は高めのフォーシームを攻略しようとスイングやアプローチを変えてくる。実は高めのフォーシームに対する空振り率は、24年は17年以来で最も低くなっていた。そうなると徐々にではあるが、再び、ツーシームが有効になる。あの剛腕
ポール・スキーンズも今年からツーシームを投げ始め、投球全体の7.9%だ。
とはいえ、以前とは使われ方が違う。ツーシーム一辺倒ではなく、追加の球種である。例えばブラウンはフォーシームが35.8%と最も多く、ツーシームはその次、全部で6つの球種を使い分けている。そして低めの沈む球というより、
シュートのような感じで、右投手ならば右打者の内角を攻め、スライダーやスイーパーと逆方向の変化で、踏み込ませないようにする。
ちなみにドジャースの
大谷翔平も、ツーシームを加えた。22年から投げ始めており、同年の使用率は3.7%、翌23年は6.5%、今季はここまで10.6%である。今季、一番使っている球種はフォーシームとスイーパーで、それぞれ38.5%、31.7%。アームアングル(腕の角度)も変化しており、21年には45度だったものが、段階的に下がり、今年は35度。腕の角度が下がれば、スイーパーやツーシームなど横の変化がより効果的になる。ピッチデザインの現在、ツーシームは数多くある球種の一つとして、再活用が進んでいる。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images