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【MLB】異例の30代での遊撃にコンバート 攻守で高いレベルのドジャース、ベッツ

 

ドジャースの長年の課題だった遊撃を務めているベッツ。外野手として6度ゴールドグラブを受賞した高い守備力を持ちながらも、毎日4〜5時間、試合前に基本的な守備練習を繰り返していた。異例のコンバート成功には、誰よりも練習をした裏側があった


 ドジャースのムーキー・ベッツは先日、こう語った。「ワールド・シリーズで勝つのは特別なこと。6年で3回も勝てたら、それはかなりうまくやっていると言える。僕の最終的なゴールは殿堂入りすること。そういう意味でも、確かに大きな助けになる」。さらに、ドジャースで王朝を築くことについて問われると、「そういう言葉を意識したことはない。でも毎年ポストシーズンに進んで、ワールド・シリーズを狙える位置にいるなら、それは一種の王朝と言えるのかもしれない」と続けた。

 ドジャースの王朝が後年振り返られるとき、最初に名前が挙がるのは、二刀流の大谷翔平だろう。だがベッツの名も2番目か3番目に登場する。レッドソックス時代も含めMVP獲得1度、MVP投票2位3度という実績もさることながら、外野手として6度ゴールドグラブを受賞した後、30代になってから遊撃に転向し、今年そのポジションで同賞のファイナリストに残ったという事実も、野球史に残る挑戦として高く評価されるはずだ。

 ナ・リーグ優勝決定シリーズ第3戦、33歳になったばかりのベッツは、偉大な遊撃と並の遊撃とを分けるようなプレーを見せた。3対1の9回表無死、先頭打者が出れば反撃を許す可能性のある緊迫した場面。ベッツはアンドリュー・ボーンの放ったゴロを三遊間の深い位置でさばき、ジャンプしながら体をひねって一塁へ正確なワンバウンド送球。結果はアウト。球場に大歓声が上がった。

 ここ数年のドジャースの弱点の一つは打てる遊撃の不在だった。その穴を埋めるべく、ベッツが自ら転向を申し出た。もともと彼の多才さと高い野球IQは知られていたが、30代で遊撃に挑むのは、歴史的に見ても前例のほとんどない試みだった。遊撃はチームで最も運動能力と守備力に優れた選手が担うポジションで、多くの選手はキャリアの後半にほかのポジションへ降格していく。その逆を行く者は稀有である。ヤンキースが1950年代にフィル・リズートの後継を見つけられなかった際、二塁・三塁手だったギル・マクドゥガルドが56〜57年に正遊撃を務めたことがあったが、当時の彼は28歳だった。

 ベッツの遊撃挑戦は昨年、31歳で始まった。筆者も球場で見ていたが、あれほどのスーパースターが試合開始の4〜5時間前に毎日フィールドへ出て、黙々と個人練習に励んでいた。助言役のミゲル・ロハスは語る。「ムーキーは1日も休まない。オフの日でもグラウンドに出て、どうすればもっとうまくなれるかを考えている。常に上を目指している。本当に感心しているよ」。ベッツは毎試合すべての守備を映像で確認し、改善点を探すという。今季、ベッツのOPSは.732と打撃成績は落ち込んだ。

 だが、注目すべきはそれが守備に一切悪影響を及ぼさなかった点だ。ロハスは言う。「遊撃はメンタルの集中力がすべて。常に全体を見ていなきゃいけない。シーズン中盤、彼は打撃でスランプに陥っていた。でも、守備での集中を切らしたことは一度もなかった」。異例のコンバート成功で王朝建築に貢献、ベッツは野球史に新たな章を書き加えた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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