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【MLB】開きは1300万ドル 年俸調停を巡る対決

 

24年から2年連続でサイ・ヤング賞を獲得したタイガースのスクーバル。年俸調停は過去の近い成績を残した選手と同じになるように設定されている。今回の件でどう判断されるのか、今後の若き選手の年俸に大きく関係してくる


 デトロイト・タイガースとエース左腕タリック・スクーバルの年俸調停を巡る対決に注目が集まっている。年俸調停は、MLBでのサービス・タイム(在籍年数)が3年以上6年未満の選手の年俸を決める制度で、調停権を得る前の最初の3年間は、年俸がほぼ最低保証額に近い水準だ。

 6年を超えるとFA資格を得る。FAまであと1年となったスクーバルについて、球団と選手側はこのオフに交渉を続けてきたが合意には至らず、規定に従って双方が希望額を申告。

 現地時間1月26日から2月13日の間に公聴会が行われる。3人の調停人が双方の主張を聞いたうえで、選手側か球団側のいずれかの申告額を採用する。制度はよく知られているとおり、年齢、サービス・タイム、成績が近い過去の選手との比較を基準に判断される。

 今回の注目点は、タイガースの提示額が1900万ドル、スクーバル側の要求額が3200万ドルと、史上最大となる1300万ドル差で公聴会に臨む点だ。

 なぜここまで差が開いたのか。タイガースの主張の軸は「調停は前例比較で決まる制度」という点にある。スクーバルは初調停となった2024年に265万ドルを受け取り、サイ・ヤング賞を初受賞して迎えた翌25年は1015万ドルへ大幅に昇給した。

 球団は、今回提示した1900万ドルが前年のほぼ倍であり、3年目の調停選手として史上最高額になる点を強調する。また、先発投手の最大昇給額は19年にジェイコブ・デグロムが記録した960万ドルで、それを大きく上回る昇給は前例がない。投手の調停最高年俸も、デビッド・プライスの1975万ドルが上限で、制度上妥当な提示だと訴える。

 一方、スクーバルとスコット・ボラス代理人は「前例そのものを更新すべき特別なケース」と位置づけている。3200万ドルは前年から約2200万ドル増となるが、それには明確な根拠がある。まず、サービス年数が5年以上の選手は、過去の調停選手に限らず、FA選手を含む全選手の年俸と比較できるという、調停に関する重要なルールがある。

 スクーバルのサービス年数は5.114年で、FA市場で高額契約を結んだザック・ウィーラー(年俸4200万ドル)やゲリット・コール(年俸3600万ドル)らを比較対象にできる。

 さらに調停制度は、記録や受賞歴を持つ選手が「特別な功績」を主張できる条項があり、スクーバルは2年連続サイ・ヤング賞を受賞した12人の投手の一人という希少な存在でもある。

 加えて、スター投手の年俸水準はインフレによって大きく上昇しており、プライスが記録をつくった15年の1965万ドルは、現在の価値では約2700万ドルに相当するとされる。

 1900万ドルでは、現在の投手年俸ランキングで31位タイに過ぎない。果たして中立な立場を取る調停人は、どちらの主張を採用するのか。仮に3200万ドルが採用されれば、調停史上最高額となり、24年のフアン・ソト(3100万ドル)、23年の大谷翔平(3000万ドル)を上回る。

 ちなみに、スクーバルとボラス代理人にとっては、制度の限界を試す意味合いが強く、仮に敗れても失うものは少ない。負けても年俸1900万ドルであり、26年もケガなく支配的な投球を続ければ、1年後にFAで総額4億ドル規模の大型契約を結ぶ可能性が十分なのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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