
若きスーパースターのカミネロ。昨季は、21歳で45本塁打を放ち、念願のWBCに出場し、自慢の打撃で存在感を示している。今後、どのような成績を残すのか、期待が大きい
スーパースターがずらりと並ぶWBCドミニカ共和国代表。その中で、五番または六番を任されている22歳がいる。
ジュニオール・カミネロだ。ニカラグアとの初戦。6回、スコアは3対3の緊迫した場面でカミネロは右中間スタンドの芝生席へ弾丸ライナーの本塁打をたたき込んだ。チームはその一発で勢いに乗り、12対3で勝利した。
2試合目のオランダ戦でもドミニカは12対1で大勝したが、カミネロが5回に放った3ラン本塁打が試合を決定づけた。
昨季、タンパベイ・レイズで45本塁打を放ったカミネロは、いま急成長中のスターである。かつて彼は「たとえ水汲み係でもいいからドミニカ代表に入りたい」と語っていた。だが今では、彼のWBCユニフォームはオンラインで売り切れるほどの人気だ。監督のアルバート・プホルスも笑いながら「水汲み係がチームにいてくれて本当にうれしいよ。彼はショーマンだからね」と称賛している。
カミネロは2019年、遊撃手としてクリーブランド・インディアンスと契約。21年にレイズへトレードされ、23年9月にメジャー・デビューを果たした。最初の2シーズンでメジャー50試合に出場し7本塁打。そして25年、初めてのフルシーズンで打率.264、出塁率.311、長打率.535、45本塁打という成績を残した。
最大の武器は圧倒的なバットスピードだ。平均スイングスピード78.5マイルは、パイレーツの
オニール・クルーズに次ぐMLB2位。どの方向にもスタンドまで運べるパワーを持つ。
21歳シーズン(誕生日は7月5日。ベースボールリファレンスなどアメリカの野球統計では7月1日時点の年齢を基準にする)で45本塁打という記録は、1953年に47本を放ったエディ・
マシューズ以来の快挙だ。マシューズは通算512本塁打を放ち、殿堂入りしている。カミネロのメジャー通算本塁打もすでに52本に達した。
これは、21歳シーズンまでに50本以上を放った歴史上18人のうちの1人である。その顔ぶれには、フランク・ロビンソン、ケン・グリフィー・ジュニア、ミッキー・マントル、テッド・ウィリアムズなどそうそうたる名前が並び、そのうち12人が殿堂入りしている。現役でも、
フアン・ソト、
ロナルド・アクーニャ・ジュニア、
マイク・トラウト、
ブライス・ハーパーといった将来の殿堂候補が含まれる。
当然、カミネロにも殿堂級のキャリアが期待される。ただし現時点では、総合力が完成されているとは言い難い。足はそれほど速くなく、守備も特別に優れているわけではない。そして打撃でも出塁率が低い。メジャー通算出塁率は.307、昨季も.311にとどまった。
最大の課題は振り過ぎることだ。75マイル以上のフルスイングの割合は81.1%でリーグ1位。思い切り振る代償としてバットコントロールは安定せず、強烈な打球がゴロになることも多い。その結果、併殺打は31本とリーグ最多クラスだった。さらに昨季の四球は41個。45本塁打を放ちながら四球数が本塁打数を下回った史上10人目の打者でもある。
果たしてカミネロは殿堂入りするような偉大な野手になっていくのか、それともそこまでには至らないのか。確かなのは、驚異的なバットスピードを武器に、誰もが驚くような本塁打を放つ才能を持っているということである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images