
ブルージェイズのデービッド・ポプキンスコーチ。選手それぞれの特徴を生かした打撃指導に定評がある。岡本のメジャーでのキーパーソンとなるはずだ
ブルージェイズのデービッド・ポプキンスは、MLBでも特に評価の高い打撃コーチだ。カリフォルニア大学
デービス校出身。ドラフト外フリーエージェントとしてカージナルスに入団したが、メジャーでのプレー経験はない。その一方で、打てない中で自らのスイングを徹底的に研究してきた。
最初は長年の打撃コーチでドジャースのコンサルタントでもあるクレイグ・ウォレンブロックや、現ドジャース打撃コーチのロバート・バン・スコヨックと取り組んだ。その後、ドライブラインでも働いた。彼の信念は、「すべての人に共通する理想のスイングなど存在しない」というものだ。打者はそれぞれ体がまったく異なるからである。「一人に合うパターンを全員に教えるやり方では、そのカテゴリーに当てはまるごく一部の人しか救えない。でも、本当の問題が何かを見極めて、さまざまな要素を少しずつ取り入れていけば、より多くの人を助けられる。スイングスタイルに合わないからといって、自分はおかしいと思う必要はない。まだ正しい情報に出合っていないだけなんだ」
ポプキンスはドジャースのマイナーで指導した後、ツインズで打撃コーチの職を得て、2025年にブルージェイズへ移った。24年に得点数23位だったブルージェイズの打線を、ほぼ同じメンバーのままで25年には4位に押し上げ、ベースボール・アメリカ誌から「メジャーリーグ最優秀コーチ」に選ばれている。
MLBの打撃は、10年前に起きたピッチング革命に似た現象が起き、近年急速に進化している。ツインズやブルージェイズはその点で後れを取っていたため、モーションキャプチャーや分析ツールに強いポプキンスを招いた。だが、本人にとって最も重要なのは、あくまで個別対応のアプローチだ。各選手がベストのスイングをしているときの身体的な共通点を分析し、ケースごとに具体的な診断を提示する。そして、その積み重ねによって「パズル」を解く。
さて、ブルージェイズに入団した
岡本和真は、22試合を終えた時点で打率.202、出塁率.280、長打率.333と苦しんでいる。だが、ポプキンスコーチは筆者にこう語った。
「彼がベストのスイングをしているときは、あらゆる方向に強い打球を飛ばします。しっかりボールの後ろに入って、下半身も使える。私はそれが好きなんです。このゲームでは、うまくいかないと手先だけで打ち、『とにかくボールに当てよう』という意識になりがちです。でも彼の場合は、あの危険なスイングをしていれば、いつでも誰からでも打てる」
岡本の2号本塁打は反対方向へ飛び、打球速度は110マイルを記録した。ああした打球を打てる選手は、メジャーでもそう多くはない。問題は空振りの多さだが、ポプキンスはこう続ける。「打席で恐れずに振り続けること。そして、どんな攻め方をされているのかを理解し、それに応じて調整することです。メジャーは駆け引きの繰り返しですから。空振りを恐れる必要はありません。むしろ最高のスイングをすれば、結果的に空振りは減ると思います」。
岡本はいま、さまざまなアジャストを続けている。だが突き詰めれば、恐れず振り続けた先にしか「答え」はない。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images