
現役時代は、完璧な選手として名を馳せていたジャイアンツの編成本部長であるバスター・ポージー氏。どんな未来図を描いて、チームをマネジメントしているのだろうか
現地時間5月22日から24日にかけて、サンフランシスコのオラクル・パークでジャイアンツ対ホワイトソックスの3連戦を取材した。あらためて感じたのは、この球場がMLB30球団の中でも屈指の美しさを誇り、ファンもまた熱狂的だということだ。
2001年から04年にかけてはバリー・ボンズが4年連続MVPを獲得し、10年から14年には5年間で3度のワールド・シリーズ制覇。当時、オラクル・パークを訪れることは特別な意味を持っていた。しかし、今のジャイアンツにその輝きはない。16年以降、21年の107勝55敗を除けば勝ち越しはなく、5月28日時点で22勝34敗とナ・リーグ西地区4位に沈んでいる。
現在最大の問題は、かつての看板選手であり、編成本部長を務めるバスター・ポージーが、どんなチームをつくろうとしているのかが見えにくいことだ。MLB球界は失敗を恐れ、リスクを避ける幹部が多い。その中で、ポージーの大胆さと決断力は際立っている。
24年12月には、オールスター出場経験もなく、ゴールドグラブ賞やシルバースラッガー賞も受賞していない遊撃手ウィリー・アダメスと、球団史上最大規模となる7年1億8200万ドルの契約を結んだ。さらに昨年6月には、契約が2億5500万ドルも残っていたラファエル・デバースを獲得。マット・チャプマンの契約延長も含めて、この3人に投じた総額は6億ドル近い。
だが、全員がすでにピークを過ぎている可能性もある。3人がけん引するはずの打線は深刻だ。28日時点でチーム得点204はリーグ30位、本塁打49本は23位、四球117は最下位、盗塁14も最下位。長打もない、四球も選ばない、走りもしない。ただ打席でやみくもに振っているだけに見える。
さらに驚かされたのは、オフに大学野球出身でMLB指導経験のないトニー・ビテロ監督を招聘したこと、そして5月に守備の名手として知られた捕手パトリック・
ベイリーを放出したことだった。
ポージーは現役時代、ほとんど失敗を知らない「完璧な選手」だった。しかし今、編成責任者として失敗の只中にいる。もっとも、ポージーに長期的な視点がないわけではない。3度の世界一を支えたのは、マット・
ケイン、マディソン・バムガーナー、ティム・リンスカム、
ブランドン・クロ
フォード、そしてポージー自身ら、ドラフトを中心に育て上げた自前の戦力だった。
彼は再び、その形をつくろうとしているのだろう。実際、ベイリー放出によってガーディアンズから全体29位の競争バランス指名権を獲得。さらに自軍でも全体4位指名権を持つ。長年ジャイアンツを取材してきた「ジ・アスレチック」のアンドリュー・バガリー記者はこう語った。
「もしファームシステムだけで進歩を判断するなら、かなり良い仕事をしていると言えます。ただ一方で、ボブ・メルビン監督は昨季勝率5割程度で解任された。それでは不十分だということです。新しい監督を起用するリスクも取りましたが、今のところ、それがうまくいっているとは言い難い。ポージーの経験不足、そして監督の経験不足によって、さまざまな疑問が出てきている」
栄光の記憶が色濃く残る球場で、ジャイアンツは今、新たな時代を模索している。問題は、その方向性がまだ見えてこないことだ。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images