
開幕直後に比べて結果を残し始めてきたドジャースの佐々木朗希。総合的なデータから見ても、佐々木の変貌はとても大きい。ロバーツ監督も信頼を寄せている
佐々木朗希はドジャース入団が決まったときから、「直球の威力を取り戻したい」と繰り返し言い続けていた。
ロッテで最盛期の佐々木は100マイル近い直球と落差の大きいフォークで打者を圧倒する投手だったからだ。
しかし、なかなか思うようにいかなかった。制球が安定せず、打者に見極められ、安定感を欠いた。ところが今季の5試合目くらいから投球内容が変わった。その要因は彼が求めてきた球速回復ではなく、球種構成の再設計だ。日本時代の佐々木は直球とフォークボールの投手だった。2025年もフォークの使用率が33.5%に達していた。
しかし26年は14.2%まで減少。その代わりに5試合目から増えたのが、平均速度90マイル前後のハードスプリットだ。11試合を終えた時点で、今季の使用率は20.9%、被打率.154、長打率.231、空振り率43.1%という圧倒的な数字である。さらに85マイル前後のフォークも14.2%と投げ続けている。速く鋭く落ちるスプリットと、タイミングを外すフォーク、2種類の落ちる球を使い分けることで打者の対応を難しくした。
それとともに直球も少し良くなった。今季のアームアングルは昨年の45度から50度へ上昇し、縦変化量が改善、わずかながらスライド成分が増えた。とはいえ、直球そのものは被打率.303、長打率.545と相変わらず打たれている。空振り率が昨年の11.1%から18.7%へ上昇したのは、スプリットのおかげだろう。
加えて制球も良くなってきてはいる。開幕当初はゾーン中央付近に集まりがちだったが、現在はコーナーへある程度投げ分けられるようになった。使用率43%の直球でストライクを取り、左右打者の両方に使える86.5マイルのスライダーを22%交え、ハードスプリットとフォークで打ち取る。4球種の役割分担が整理された。
結果は見事だ。ボール球を振らせる割合(チェース率)は去年の22.3%から今季は32.1%へ上昇、メジャー平均の28.5%を大きく上回る。空振り率も22.1%から29.4%へ上昇し、四球率は13.7%から8.5%へ下がった。三振を奪いながら四球を減らす。投手として理想的な成長を遂げている。
さらにゴロ率は38.9%から45.1%へ上昇し、長打が減った。ゾーン内コンタクト率も88.8%から81.7%へ低下し、ストライクゾーンに投げても打者が簡単にバットに当てられなくなった。
デーブ・ロバーツ監督はべた褒め。現地時間6月5日エンゼルス戦の7回2安打無失点の好投の後は、「これこそ、日本の映像で見ていた投手であり、われわれが手に入れたいと望んでいた投手だ。彼の立ち居振る舞いにはもう迷いや不確かさがない」と絶賛した。それにしても、今季の11試合での投球内容の変化はものすごい。
データサイト「ベースボール・サバント」に「Pitching Rolling Stats Line Charts/投球内容推移」という指標がある。運を排除して投球内容だけを評価する(反対に言うと、打者がどれだけ良い打球を打てたか)xwOBA(Expected Weighted On-Base Average)に基づくものだが、開幕直後は.400前後と平均以下の投手だったのに、5月中旬は.350前後とメジャー平均に近づき、今では.200前後とサイ・
ヤング賞クラスまで内容を上げてきた。
佐々木自身は今も「直球の威力をもっと取り戻したい」と考えているはずだ。しかし、少なくとも現在の成功はハードスプリットを軸に、フォーク、スライダー、直球の組み合わせで生まれている。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images