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【MLB】山本由伸を救った相棒の“眼力” ABS時代に問われる捕手の新たな技術

 

今季途中からドジャースに再加入したハンター・フェドゥシア[左]。相次ぐ捕手の離脱で回ってきた機会で存在感を示している。マイナーでの経験が、ABS時代での武器として、自身を支えている


 捕手の仕事に、新たな“眼力”が求められる時代になった。現地時間8月21日のドジャース対パイレーツ戦。ドジャースの山本由伸を救ったのは、ハンター・フェドゥシア捕手の3度にわたるABSチャレンジだった。

 カウント2-2の3回一死二塁。山本がブライアン・レイノルズに投じた内角へのシンカーは、球審の判定がボール、フェドゥシアはすぐさまチャレンジを要求した。判定は覆り、見逃し三振。続くニコラス・ゴンザレスへの初球カットボールもボールと判定されたが、再び迷わずチャレンジして成功した。山本はマウンド上で笑顔を浮かべ、グラブを叩いて相棒をたたえた。

 さらに5回一死、スペンサー・ホルウィッツへの内角高めのシンカーも、チャレンジによってボールからストライクへ。これも見逃し三振となった。3度のチャレンジをすべて成功させ、3球とも三振に変えたのだから、その価値は大きい。

 では、なぜあれほど自信を持って要求できたのか。フェドゥシアによれば、その“眼力”は経験と準備によって培われたものだった。

「ABSが導入されたころ、僕は3Aで2年間プレーしていた。今年もかなり経験している。イニングの合間にはダグアウトでiPadを見て、際どい球がどれくらい外れていたのかを確認しているんだ」

 あの日は球審のストライクゾーンが狭く、序盤にも際どい投球がボールと判定されていた。その傾向も頭に入っていた。「ヨシは素晴らしい投球をしていた。きちんと審判にストライクを取ってもらいたかった」と振り返った。判断の際、投手の反応には頼らないという。

「投手の感情や反応を見て決めないようにしています。投手が正しいとは限りませんから」

 判断材料にするのは、自分のミットの動きと捕球位置だ。捕球後にミットを大きく動かすことなく、体の正面でしっかり捕れたと感じたときは、チャレンジすべきだと判断する。一方で、ストライクゾーンの上下は難しい。打者によって身長も構えも異なるからだ。

 2ストライクや勝負どころでは感情に押されて要求したくなることもあるが、できる限り冷静に判断する。序盤に2度失敗すれば、終盤の重要な場面でチャレンジできなくなる。成功させる技術だけでなく、いつ使うかという戦略性も必要になる。

 フェドゥシアは今季、55回チャレンジして31回成功。成功率56.4%はリーグ屈指という数字ではない。成功率トップはフィリーズのJ.T.リアルミュートで、61回中48回成功の78.7%。最多成功はレッズのタイラー・スティーブンソンで、118回中82回、成功率69.5%を記録している。

 もっともフェドゥシアのこの日の3度には、数字だけでは測れない重みがあった。山本は「すごく信頼して投げていますし、ABSもすごい成功率で、本当に助けられています」と感謝した。その言葉を伝えると、フェドゥシアは表情をほころばせた。

「ヨシは今の球界で最高の投手の一人。彼の球を受け、一緒に仕事ができるのは幸運なこと。捕手が何より望むのは、投手からの信頼を勝ち取ることだから、本当にうれしい」

 フレーミング技術だけでなく、一瞬で機械の判定を求める決断力も問われるABS時代。山本を救った3度の成功は、捕手という仕事に加わった新たな奥深さを映し出していた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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